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家に帰れば

 卒業パーティから家に帰れば、すでに家族は婚約破棄のことを知っていて、温かくローザを迎える。


「ローザ、辛かったわね」

「城の人間は入れさせないから安心して休みなさい、ローザ」

「ローザ、よく頑張ったな」

「姉様、大丈夫ですか」


 家族はそれぞれに優しくローザに声をかける。


「心配ありがとうございます。お父様、お母様、お兄様、リッタ」


 ローザは微笑んでみせる。


「やっと自由の身になれたのですもの、精一杯楽しみますわ」


 握りこぶしを作って気合十分のローザに、家族は声を出して笑う。


「そうだな。思い切り楽しまないとな」

「ええ、せっかくの機会楽しみますわ!」


 これから話すには夜遅いと、今日はゆっくりと休むことになり、ローザは自分の部屋に向かった。


「思ったより元気そうで良かったわ」

「肩の荷が下りたということだろうな」

「ローザが幸せになるなら問題はないけどさ」


 ローザと妹のリッタを除く3人はリビングに残り話を続けていた。


「全く、バートンが何度も頭を下げた婚約だってのにあいつはわかってねぇのか」


 乱暴にティーカップを置いて、盛大なため息をつく父親のザックに同意をする兄のリアム。


「そう言えばよく家に来てましたね、陛下。クロード殿下もただじゃすまなそうだ」


 当時を思い出したリアムが言う。

 幼いながらに覚えているのは国王のバートンが毎日のように家に来ては父親に頭を下げる姿だ。


 あれを見ていた時は国王は暇なのかとリアムは思っていたほどだ。


「そうねぇ、勘違いで婚約者を追い出すんだもの。これはもう王太子は決まったも同然ね」

「そうだな。しかしなぁ……」


 困ったように息を吐くザック。


「クロードの奴にも腹は立つが、フィンの奴にも腹が立つ」

「さすがに想定外よ。いい話だとは思うけど、ちょっと相手がね」


 母親のオリビアも困った顔をしてため息をつく。


「食えない王子ですからね。アルバート殿下も何度か流されそうになりましたし」


 いつの間にかフィンのペースに巻き込まれ、危うくおかしな約束事をさせられそうになった、なんてことは意外と多い。


 幸いにも第一王子のアルバートは聡明で、ギリギリで気がつき、毎回フィンは悔しいと言いながらイタズラがバレた子供みたいに笑うのだ。


「まあけど、ローザは断ったみたいだし。先のことはローザ次第だわ」

「あの子が笑っていられるのが一番だから、望むのはそれだけですね」


 同意しながらリアムはため息をつく。


「でも、しばらくはローザに会えなくなるんですね……」

「寂しくなるわ……」

「あんのクソ王子がぁ!」


 ザックとオリビアにとって可愛い娘、リアムにとっては可愛い妹で、しぶしぶとは言え、家を離れることが昔から決まっていたから覚悟はあった。


 ただしそれは、頻繁に会うことができるからで、国外追放となれば話は違ってくる。


 帰ってこれるとしたら、それはクロードや取り巻きたちに処遇が決まってからになるだろう。


 出来るだけ事態の収束を早くさせるつもりではあるが、怒りがばかりが増して仕事にならなそうなザックとリアムだった。


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