初めての場所
「ローザさん、もし良かったら私のかわりに孤児院に行ってきて欲しいの。お願いできるかしら」
午後のお茶の時間、一緒にお茶の飲んでいたフリーズが言った。
「フリーズ様のかわりにですか」
ローザからすれば部外者が王妃のかわりに何かをするというのが気がひける。
そんなことおかまいなしにフリーズは頰に手を当て続ける。
「フィンだけに任せるのは心配でしょう。あの子意地悪だから」
「人をからかうことは好きな方ですが」
「そう、だから度がすぎるようなら叱ってもらいたいのよ。それにせっかくだもの、ドットーレ王国の話を子供たちに聞かせてあげて欲しいの」
生まれ育った国の説明くらいならできるだろう。
せっかく自分に出来ることが回ってきたのだと考えてローザは引き受けることにする。
「うん。行くのは三日後だからよろしく頼むわね」
「はい、頑張ります」
「気負わなくていいのよ。ローザさんのペースでやってくれれば問題ないから」
「はい」
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三日後、フィン、レン、エリシャとともに馬車に揺られローザが孤児院に向かう。
孤児院に着くと、子供たちが出迎えてくれる。
年長の子供たちはフィンのもとへ行く。
走ったりはせず、自分たちに出来るマナーと子供らしさを乗せてニコニコしている。
久しぶりに会えたことに嬉しそうだ。
他の子供たちはレンの方にかけていった、
勢いがいい子供たちの体当たりに踏ん張りきれずレンは地面に倒れる。
レンが目当てというよりかは、レンの持っている手土産を狙っているようだ。
孤児院の院長に挨拶を済ませれば、ローザたちも子供たちに囲まれる。
年長の子供たちはローザをみてフィンを見ていると、フィンが手を振って否定をする。
「違う違う。彼女はドットーレ王国から遊びにきてるだけ」
首元のペンダントを手にしておちゃらけたようにフィンは笑う。
「これ、つけてもらいたいけどね」
「頑張れ」
「応援する!」
フィンのペンダントを見た子供たちは、フィンに応援の声をかける。
フィンが身につけているペンダントはアルレッキーノ王国の王族だけがつけられる仮面の絵が彫られているもので、 同じものを身につけられるのは夫婦だけだ。
ローザは年少に近い子供たちの話を聞いていて全くフィンの言葉を聞いておらず、エリシャは満足気である。
フィンに突っ込みをしそうなレンはというと、遊び盛りの子供たちに大層慕われているよう(なめられてるともいう)で、子供たちを追いかけ回している。
院長はその様子に朗らかに笑う。
「あの子たちはレン君の方が馴染みがあるものね」
「そうですね。サボっていなかったようで安心しました」
子供たちに乗っかられて悲惨なことになっているレンをフィンはさりげなく助けながら、ローザの方を確認する。
すると、ローザは新しいもの好きな子供たちに囲まれて、話をしていた。
「フィン様よりも打ち解けてますね」
立ち上がったレンがそう言って笑うので、フィンは誰にも見られないように後ろから小突いておく。
ローザは子供たちの質問に答えながら、自分のいた国との違いを説明していく。
それからはあっという間に、帰る時間になりエリシャから呼ばれて馬車に乗る。
走る馬車の中、フィンがローザに尋ねる。
「もし、また行く機会があったら来てくれる?」
ローザが少しだけ微笑んで返事をする。
「えぇ、ぜひ」
ドットーレ王国にいたら知ることのない距離感と大勢の子供たちの相手――。
初めてのことばかりで疲れたけれど、楽しいと思えたローザだった。
ありがとうございました。




