我が国の名物です
今日からアルレッキーノ王国での生活が始まる――。
ノックがされ、エリシャが対応する。
エリシャは部屋にその人を入れるとローザの前に連れてくる。
「初めまして、ローザ・ローゼン様」
侍女服を着た、赤茶色の髪をした女性だ。
「私、ローザ様付きの侍女を任されましたヘレン・ブライトと申します。昨日、ご挨拶に伺う予定でしたがお疲れだと思い控えさせて頂きました」
淡々と喋り、使用人の礼をするヘレン。
「よろしく頼むわね、ヘレン」
「はい」
ヘレンは出しゃばらず、ローザの身の回りの世話はエリシャやマシューに任せ、自分はエリシャやマシューではわからないだろうことを主にやっている。
初対面だというのにしっかりと連携が取れている。
午前中は部屋で過ごし、落ち着いたころにヘレンがローザに声をかける。
「お手すきなら城内を案内したいのですが」
ヘレンはチラリと時計を見て、言葉を続ける。
「この時間でしたらスムーズに案内が出きるのでよろしければ」
「お願いするわ」
ヘレンなりに気を使ってくれてるのだろう。
おそらく昨日の騒がしい彼らになるべく会わないようにと。
動きやすい簡素なワンピースに手早く着替え、ヘレン、エリシャと共に城内を歩く。
「こちらは会議場になります」
目的地の途中で、会議中ではないのでとヘレンが説明してくれる。
使い込まれた机が置かれている質素は部屋で、中では数人の初老の男たちが集まって何かをしていた。
「ローザ様、あれは我が国名物です」
見ても大丈夫なのかというローザとエリシャの不安をよそに淡々とヘレンが言う。
男たちは二十センチほどの棒を一本ずつ手にして、安堵したり落胆したりしている。
落胆している人たちの棒の先端は赤く、安堵していたら喜んでいる人たちの先端は何も色がついていない。
「役割が決まらない場合、ああやって決めています。そうそう、あれは大臣たちですのでお会いしたことはあるかもしれませんね」
「そう、ね」
くじ引きばかりに目がいっていたが、よく見れば知っている顔もある。
それにしても、何を決めていたのか知らないが随分と適当な決め方である。
それからヘレンは色々な場所を案内する。
大浴場、書庫、使用人たちの居住区、調理場、天文台など城の中を一通り回る。
ローザの部屋に戻る途中、立ち止まったヘレンが窓の外を指差す。
「間近で見るのは危険と判断しここからになりますが、訓練場です」
ローザも窓から訓練場を見てみる。
兵士たちは喜んでいたり、落胆したりしている。
さっきの大臣たちのようだが、そこにあるテンションは段違いだ。
ガッツポーズをして涙を流していたり、悔しそうに地面を叩いていたり。
「あれはおそらくですが、来週のローザ様の護衛を決めているところなんでしょう」
「やる気があるというのはありがたい話ですね、ローザ様」
「え、えぇ」
歓迎されていることに喜ぶべきか、あそこまで喜ばれてることに引くべきか、返答に困るローザだった。
アルレッキーノ城で働くひとは割とオールラウンダーです。




