騒がしい二人の子供たち
パタパタと廊下を走る音が近づいてくる。
「にいさまぁぁぁぁぁ、おかえりなさいませぇぇぇぇぇ‼︎」
絶叫に近い叫び声をあげて、そっくりな男女の子供がフィンに体当たりをかます。
「次から次からへと」
しっかりと子供たちを受け止めたフィンは、二人の額に指を弾く。
「いってぇ、感動の再会にひどいです、兄さま」
「そうよそうよ。騒いだのはシエルだけじゃない」
額を押さえながら子供たちが騒ぐがフィンはそれを無視。
ローザたちに挨拶をするよう促す。
「お客様がいるんだけどなぁ」
ここでやっとローザたちに気づいたらしい子供たち。
男の子は目を見開きわなわなと震え、女の子は驚いた顔をしている。
「に、兄さまが……女性を、つれ、て」
「うそ、意外と……」
フィンにしっかりと目を合わせ男の子は騒ぐ。
「兄さま、裏切りですか⁉︎あれほど王位は余に譲るといっておいて、まさかの裏切りですか。ひどいです、裏切りだぁ!」
「そうやってわたしたちのこと嘲笑ってたのね」
女の子は男の子に便乗してのって騒ぐ。
客人の前だというのに自由すぎる弟妹にフィンはため息をつく。
まるで小さな怪獣だ。
フィンのため息に気がついたらしい男の子は咳払いを一つして自分の胸に拳を当てる。
「余はいずれ王にな――ひっ」
威風堂々と喋り出した直後、シエルが恐怖に顔をひきつる。
黒いローラを背負った笑顔のフィンが視界に入ったからだ。
「お、オレは第二王子のシエルだ――です。それで、こっちは」
「第一王女のメーアよ」
「よく出来ました。レン、連れてけ」
出入り口に隠れるようにひっそりと立つ青年に向けてフィンがいう。
「気づいてたんですね」
頼りなさそうな黒髪の青年が申し訳なさそうに謁見の間に入ってくる。
フィンの近くまでいくと恭しく頭を下げる。
「おかえりなさいませフィン様」
「ただいま。こいつらをよろしく」
シエルとメーアの首根っこを捕まえて、フィンはレンに手渡す。
レンは苦笑しつつもしっかりと受け取る。
「積もる話もあるでしょうし後でお話しできる時間を設けますね」
「いや、いらない」
割と本気でフィンが断るが、レンは聞く耳を持っていないようで、シエルとメーアに囁く。
「お勉強が終われば、お兄様といくらでも遊べますから頑張りましょう」
「え?いま、だって、本気で……」
「照れ隠しですよ?いつもからかってばかりで素直になれなくなったんです」
レンはフィンの意思は却下をして、シエルとメーアの鼻先のニンジンとして扱う。
頼りない見た目に反して強かなのかもしれない。
「そうなのね。さっさと終わらせるわよ、シエル」
「そうだな。余の手にかかれば時間のかかるものではない。すぐに終わるであろうしな」
「戻りますよシエル様、メーア様。それでは失礼いたします」
一礼をして去ってレンは去っていく。
「来て早々騒がしくてごめんなさいね、ローザさん。でも、仲良くしてくれると嬉しいわ」
フリーズが頰に手を当てていう。
「もちろんです、フリーズ様」
「騒がしすぎるようならチョップの一つくらい構いませんので、あの子らは元気すぎる」
オーグストが言うが、さすがにそれは恐れ多いので、はぐらかしたローザだった。
ローザのために用意された部屋に着くと、思いのほか圧倒されて疲れていたローザはそのままベッドに倒れこんだ。
シエルとメーアは12歳くらいです。




