第8話【美男・美女】
「何という事だ・・・。」
私達が前線に辿り着くと、そこは地獄のような惨状があった。
野営用にテントが設置されていたであろう場所は、爆発でもあった様なクレーターが出来ており、
味方の兵士の四肢と血が飛び散っている。
周りに漂う血に混じった焦げ臭い匂いに激しい吐き気に襲われる。
「大丈夫か?」
ガルド―が優しく背中を撫でてくれる。
彼の質問に答えることが出来ず、胃に残った物を戻してしまう。
ネムは平然としているが、その顔は少し強張っている。
他の兵士も、同じように吐き気に襲われている者もいる。
森に着く前に遠くで見えたあの光と一緒に聞こえた音は、
よく動画や映画などで聞いたことがある銃声の音だった。
中世ヨーロッパの世界が魔法で実現しているようなこの世界で、銃を完成させている敵がいる。
それは、この世界にとって脅威になるのではないか・・・?と俺は思った。
「とりあえず、この現状を確認しないとな・・・」
そう言って、ネムは前線へ向かう。
自分とガルド―は慌てて彼女について行く。
しばらく歩くと、兵士の人だかりの中に二人の女性と、一人の男性が立っていた。
その中から、一人の男が現れる。
彼の話を聞くに、このエルフとの戦争は、敗北で終わったようだ。
指揮官の魔術師が死亡し、現在は彼が軍の指揮を握っているそうだ。
ネムは、彼が軍上の罪には問われると言いつつも、少し安堵した顔をしていた。
ふと、視線を感じる。ずっと自分を見ていたのは、美形の男だった。
(なんだろう・・・初めて会う人だけど・・・)
そう思い、目に魔力を集めてみる。
すると、彼らの魔力量を見ることが出来た。
まず、兵士に囲まれた女性の魔力は、殆ど無いことが分かる。
ただ、その奥で彼女に魔力を渡している女性を見ると、とてつもない程の魔力を持っていた。
そして、男の方を見ると、彼らの中で一番魔力を持っている事が分かった。
「ネム、これからどうするつもりだ?」
ガルド―がネムに耳打ちをする。
ネムは、少し考えるとこう言う
「今回の戦争は、敗北として処理をしよう。
そして、王国の兵士は全滅とし、彼らは死んだことにする。
エルフとの交渉次第だが、彼ら兵士を匿ってくれるかもしれない」
そう言って、ネムは持ってきた食料や衣料品を渡した。
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