第6話【ライバル】
「さて、今日の訓練はここまでだ。」
そう言って、ネムは剣を収める。
この数時間で生きた心地が何度もしなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
息を整えて、酷使した体を魔力を流すことで回復していく。
これも彼女から教わった休憩方法だ。
最初の頃は難しかったが、最近では多少集中するだけで、魔力を操作できるようになった。
「君がここに来てからもう3年になるけど、やはり君は器用だな」
そう言いながら、自分と同じように魔力を操作している。
2年間彼女から魔法を勉強したが、彼女を超える事は出来なかった。
しかし、魔法を使った剣術なら、追いつけそうな感じがする。
「君の様に魔法と剣術等を組み合わせて戦う人は、私の知る限り3人しか知らない。
君の技術を応用すれば、戦術の幅が広がると思うよ。」
この3年で彼女との距離も縮んだ気がする。
魔法も剣術も、彼女と並んで戦えるくらい強くなりたい。
「おーい!訓練は終わったのかー?終わったのなら、俺と戦わないかー?」
そう言って駆け寄ってくるのはケントだった。
彼はハーフエルフで、俺の使う魔法をよく見せてほしいとねだってくる。
騎士団に入ったのも2年前で、ちょうど俺が剣を使いながら魔法を使えるようになってきた頃だった。
「おういいぜ!」
彼もこの1年で剣術を学び、こうして何度か打ち合いをしている。
ガルド―やネムだと、隙が一切ないが、
ケントと打ち合っている間は自分と彼の弱点や隙が分かりやすくなる。
「見せてやるよ!俺の新技を!」
そう言って彼は剣を水平に構える。
自分は剣を構えながら彼の動きを注視する。
「はぁっ!!」
彼が地面を蹴る。
自分は剣を軸に上に飛ひ、彼は剣を横に振るう。
彼は剣を空振り、自分は剣を体に寄せる。
そのまま空中で体をひねり、回し蹴りを行う。
ついでに火球を飛ばして、攻撃を行う。
彼は回し蹴りの威力を抑えるために、身をひねるが、間に合わない。
吹き飛ばされつつも、火球を風を纏った剣で往なしていく。
そのまま自分は着地した瞬間地面を蹴る。
彼は受け身をとれず、転ぶ。
そのまま自分は彼の喉に剣を差しこむ。
「・・・まいった」
そう言って剣を手から離す。
自分は息を整えながら剣を収める。
「まったくかなわないや、君には」
そう言って手を差し出してくる。
「さっきのはいい一撃だったな。
もうすこし動作を複雑にするといいと思うぞ。
俺も、着地が無防備になったからな。」
そう言って笑いあう。
周りには一緒に訓練していた兵士が笑顔で拍手していた。
彼の一撃は、真横に来ると分かっていたから避けただけで、上の方に剣を振るっていたら、
体制を崩さないといけなかったところだった。
きっと彼に日本刀を渡せば、居合のような事も出来そうに思える。
そうして、5年も経過した時、報告が入った。
前線で戦っている部隊が全滅したと。
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