第5話【魔法】
「はぁっ!」
熱い日差しの中、一心不乱に剣を振るう。
「ふんぬぅっ!」
その周りには、野次馬の様に溢れ飼う兵士の姿があった。
「腕を上げたなぁ坊主!」
そう言って、自分の剣をガルドーは軽く往なす。
「くっそぉ!全然当たんねぇ!」
息を切らしながらも隙を作ろうと剣を振るう。
あれから1年程経過したが、一向に剣が上手くなっている気がしない。
「お前さん、そろそろ彼女ともいい感じになってるんじゃないのか?」
そう言って笑いながら的確に防御していく。
何度か覗きや好意を寄せてみたが、全て不発に終わってしまった。
「あいつにそこまで執着する奴なんて殆どいないからな、いい感じになっているかもよ?」
そんなことを言っているが、遠くからそんなことは無いと直ぐに否定されてしまう。
「それにしても坊主、そろそろ魔法について勉強してみたらどうだ?」
そう言ってガルド―は剣を下ろす。どうやら今日の訓練はこれで終わりの様だ。
「魔法?俺にも使えるのか?」
何度かこの世界にも魔法のような物を見てきたが、真似してみても全く成功したことはない。
少し前に、図書館に忍び込んでみたが、魔法に関する事が一切乗っていなかった。
「おう、俺らの中にも魔法を使うやつがいるが・・・。
そうだな、ちょうどいいしネムに教えて貰っとけ」
そう言って、野次馬と共にどこかに行ってしまう。
乱れた息を整えながら、人間用とは思えない大きさの重りを付けて素振りしている彼女に近づく。
「そう言うわけなんだけど、実際魔法ってどう使ってるんだ?」
そう彼女に聞くと、彼女は重りを置いて、汗を拭く。
いつもの彼女も素敵だが、筋肉質な姿も素晴らしい。
「・・・。魔法という物は、自分の中にある魔力を使って、物を作り出すことを差している。
魔力量は基本的に素質や体質で変わってくる。
だが、魔力量が少なくても、死ぬまで使い続ければば多少増える。
魔力量が後天的に増えて、活躍したって話は全く聞かないが」
そう言って彼女は魔法の事を教えてくれた。
ファンタジー感に感動しつつ、試しにやってみることにした。
(まずは・・・体中に流れている血液と同じように体中に魔力を流すイメージで力を込める・・・)
目を閉じ、体内にある塊のような物を体中に流し始める。
(次は・・・魔力を手の平に移して・・・詠唱を始める・・・)
暖かいものが体中から手のひらに移るのを感じる。
≪我、異世界の騎士を名乗るもの。我、愛する者を守る力を願う。
今ここに、水を召喚する。スプラッシュウォーター!!≫
詠唱を終えると、手のひらから水があふれてくる。
「ふむ・・・。お前は剣よりこっちの方が向いているのかもしれないな。
だが、剣とは違って、魔法は必ず唱えなければならない。
だから、お前には魔法剣士になる訓練を受けてもらうことにしよう。」
そう言って、彼女は嬉しそうに笑う。
自分は溢れ出た達成感を忘れ、嫌な予感を感じてしまう。
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