第2話【助け人】
「・・・これ以上嘆くのはやめるか・・・。
まず最初にやることはステータスの確認かな」
一端落ち着き、思考を巡らせる。
「ステータス!」
空に向かって大きく声を上げる。
この異世界もゲームと同じであれば、自分のステータスが表示される筈なのだが・・・。
「・・・出ないな。言い方が違うのか?」
その後も違う方法を探し続けたが、自分のステータスが出ることは無かった。
(どうなっているんだ?この世界はゲームのようにステータスが出ないのか・・・?)
そう悩んでいると、近くの草木から揺れ、物音がする。
驚いて、立ち上がると目の前に犬のようなモンスターが現れる。
「モ、モンスター・・・!?」
後ずさりしながら、武器を探す。
近くに短い棒切れが落ちていた。
棒切れを拾い、モンスターと対峙する。
犬のモンスターが飛びついてくる。
「うわああああ!!」
目を瞑りながら棒を振るう。
振るった棒は空を切り、モンスターに押し倒される。
「くそっ!くそっ!」
モンスターを押しのけようとするが、肩を押し付けられ、動くことが出来ない。
犬のモンスターは口を開き、自分の四肢を食べ始めようとする。
その瞬間、強い風が吹き、自分を押し倒していたモンスターが吹き飛ばされる。
そのまま犬のモンスターは森の中へ逃げていく。
「大丈夫か?少年」
そう言ってモンスターが逃げた反対側から一人の女性が現れる。
腰に剣を差し、胸鎧を着た女性が現れる。自分がその女性を見た途端、目を奪われる。
今まで見た女性が不細工に見える程、彼女の事がとても美しいと感じた。
これが人に恋をするという事なのだろうか。
「だ・・・大丈夫です・・・」
そう言って、震える足を抑え、立ち上がる。
「さて・・・。君は一体何者なんだい?」
女性は鋭い目つきで自分を見る。
思考がようやく回り始め、彼女が自分に聞きたいことが分かる。
「俺は・・・遠くの・・・健一と申します。東の小さな島国からやって来ました。」
自分の名前と、日本の事をなるべく分かりやすく説明する。
「ふむ・・・。ケンイチか。私は聖光王国騎士の隊長、ネムと言う。
その喋り方はやめて貰いたい。それは君自身の言葉ではないのだろう?」
剣に手を当てて、軽く礼をする。騎士がする礼のようだ。
そして、彼女は木に寄りかかり、そっぽを向く。
「わかった・・・。よろしく、ネム」
自分も言葉を崩し、お辞儀を返す。
「君を一端我が国で保護しよう
出身地や目的を詳しく教えてもらうぞ」
そう言って彼女は来た道を戻る。
少し歩くと、森を抜けて舗装されていない道に出る。
(こういう所を見ると異世界だと実感できるな)
小高い山に登り、遠くを見ると大きな国が見える。
あれが聖光王国のようだ。
これからの不安と高揚感を覚えながら私たちは歩き始める。
第1話をお読み頂き有難うございます。
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