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第1話【転生】


「どうして・・・どうしてこうなったぁあああああ!!」

暖かな日差しのと木々が生い茂る中、一人の男が叫び出す。

大きな声のせいで、周りの鳥や動物たちが慌てて逃げていく。


どうしてこうなったのか、今日の事を思い出す。


「おい、俺の朝飯は出来てるんだろうな?」

玄関で学校に行く準備をしていると、2階からボサボサの髪の毛と髭を伸ばしたままの男が降りてくる。


「あ・・・キッチンに朝ごはんがあるよ・・・」

そう怯えながら言うと、男は手に持っていた空き瓶を自分に向かって投げつける。

瓶は自分には当たらず、床に当たるが、割れてしまう。


「お前は・・・もう働ける頃だろう?お前を生かした俺を養うのは当然じゃないのか?あぁ?」

怯えながら、瓶の破片を集めている自分を男は踏みつける。


破片を集めて、キッチンに戻り、既に作ってある食事を皿に装う。

男は出された食事を食べ始める。その食べ方はまるで、餌を与えられた犬のようだった。


この男は自分の父親だ。幼いころに母親が家を出て行った時からこうなってしまった。

父親が、食事を終え、再び2階に戻っていく。

自分は溜息をつきながら食器を洗い片付けていく。

その後、玄関から荷物を持って学校に向かう。

街の時計は、既に10時を回っており、遅刻は確定していた。


街はいつものように賑わっており、周りの人は忙しそうにしている。

交差点に着くと、信号が赤になっている。

自分はポケットから、スマホを取り出す。

そして、アプリを開き、顔も知らない誰かの小説を読み始める。


この日本は今、なろうと呼ばれる転生系の小説が流行っている。

交通事故にあったり、孤独死したり、誰かを庇って死んだり。

転生する条件はそれぞれだが、皆強大な力を神とやらに貰って、新しい人生を始める。

地位も財産も友人も。女性でさえも自分の思うがままに出来る。


自分が何度も憧れ、諦めた世界。

産みの親に見捨てられ、救いを求めた人に見放され、神さえも救ってはくれなかった。

自分でさえ、好きになることが出来ない。

力がないが故に、最弱になり、勇気がない故に死ぬ事さえ出来なかった。


この世は残酷だ。漫画やアニメの様に、頑張れば結果が伴うことは無い。

凡人には限界があり、その下の者たちは、自由がない。

諦めた者から、終わっていく。


そんな世界で、自分は人形の様に生きていた。

ふと、急ブレーキを欠ける音が大きく響いた。

気が付くと、自分の真横にトラックがあった。

そして、身体に強い衝撃が入ると同時に、空中に放り出される感覚がする。

その時の感覚は、今まで感じた事がないほど呆気なかった。

いつもより頭が冴え、自分が引かれたことを理解する。

視界がぼやけ、走馬灯が見えてくる。


思い出したくもない過去が、コマ送りの様に次々と変わっていく。

(あぁ。ようやく俺は、この世界から抜け出す事が出来るんだな)

そう心の中で思った。


引き伸ばされた時間が戻っていく。

同時に強烈な痛みを感じ、視界が暗転する。

雑音だけが耳元に響き、エコーのように重なっていく。


やがて、完全に意識が無くなると、今度は光が見えてくる。

目を開けるとそこは何も無かった。

光すらない闇の中、1人の女性は立っていた。


この人の事を女神と呼ぶのだろうか。

不思議とそう感じた。

(自分にもようやく強大な力を手にする事が出来る・・・!)

そう思い、自分は目を輝かせる。


女性は、光のない目で自分を見た後、こう言った。


「貴方は勇者に選ばれました。これから、ある世界に転生されます。貴方は魔王を倒す為に強くなる必要があります。では、幸運を祈ります。我ら神は、あなた達と共に」


そう言った瞬間、闇が光に包まれる。

その言葉を理解する前に、自分は再び意識を失った。


そうして、草木の香りを嗅いだ時に目を覚まし、今に至る。

どうやら文句を言う暇すら与えてくれないらしい。

やはり憧れの異世界も、現実とさほど変わらないらしい。


第1話をお読み頂き有難うございます。

シリーズ4作品目になります。

これからも、文章を書くのを苦手としている作者を温かい目で見守ってくれると有難いです。



宜しければ是非感想や意見などをお書きください。

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