第9話 「この土地はとても大事で…必要なんです…」
「…え?でも…」
本気で困惑している私に、アイスは説明するように話し掛ける。
「…まあでも、8割方当たっています。『元の世界に帰る方法』と、『元の世界に帰る為には一定の時間が必要』…これは、合ってます」
アイスは続ける。
「ただ、『土地は本物』で、『異世界も現実』なんです。あなたが前世で死んだ…という事実も、念じたら食べ物が出てくる…という魔法のようなシステムも、全てが現実に起こってる事なんです」
「うーん…だとしたら、なんで『元の世界に帰る』為に『土地が必要』なの?時間が経てば帰れるようになるなら、別に土地を絡める必要がなくない?単に遊び心?」
「鋭いですね…実は、逆なんです」
「逆?」
「『元の世界に帰る為に』『土地が必要』なのではなく、『土地が必要』だから、『元の世界に帰ってもらう』…つまり土地の為です」
「意味がわからない、土地が現実にあって、その土地が必要なのはわかったけど、それならどうしてこういった転生者をわざわざ帰すの?」
「………」
「…アイスちゃん?」
「…言いにくいんですが、土地にとって欲しいのは『資源』や『エネルギー』であって、その資源を食い尽くされたくない訳です」
「うん」
「つまり、その…土地はあなた達が探検する事により資源と生命エネルギーを貰えますが、反面あなた達に永住されるとなると逆に今まで土地が貰った資源を全て食い尽くされてしまう。少しいる分には土地にとって需要と供給が成り立ちます。しかし、あまり長く居座られると土地にとってデメリットが大きいんです」
「それは…永住=ニート、って考えてるんだよね」
「異世界と言っても不老不死になる訳じゃないですし、時が止まる訳でもないですから。ある程度の時間操作はできますけど、限度があるので…」
「つまり、永住すると歳をとるから身体的に衰える。そうなると働けるもんも働けなくなって、結果土地にとって資源を食い尽くすだけの邪魔者になる、と…」
「そういう事です…身勝手なんですけど、この土地はとても大事で…必要なんです…」
「…」
「だから…身を削る思いで……良い人も…いっぱい…いだんでずげど…」
泣きながらアイスは語り始めた。