第4話 「おやすみじゃないです、何やってるんですか」
あてのない草原を野宿覚悟でふら付き歩いていたが、それももう限界だ。いくら異世界に来たとはいえ体力が持たない。
このまま野宿して朝になったらまた歩くのか。そう思うと気が遠くなる思いである。本当に私が無職を希望した事でアイスに恨まれたんじゃなかろうか。
……………やめよう。考えると精神的疲労まで大きくなる。とりあえず寝て、明日からまた考えよう。野宿する時はテント位用意したかったけどもう無理。おやすみなさい。アイスちゃんも無事でやってるかな。
「おやすみ、アイス…」
「おやすみじゃないです、何やってるんですか」
「うん、おやす…え?」
そう言うと、何故かそこには私を異世界に飛ばしたコスプレ大天使、もといアイスが目の前に立っていた。
「せっかく草原から抜けられるのになんで野宿しようとしてるんですか。キャンプでもするおつもりですか?」
「草原から抜けられる?出口は?」
「?……ああ、この『木』です」
アイスは一瞬懐疑的な反応を示したが、すぐに何かを納得し冷静に説明をした。
「『木』?…ただの木じゃないの?」
「はい、実はこの木、ただの木ではありません。試しに触ってみてください」
アイスに言われるがままに、私は木にそっと触れた。
すると、一瞬で今までいた草原の景色は途絶え、世界全体が私の眼前に映し出された。
「動かしたい方に念じれば自由に世界全体を見る事ができます。例えばそうですね…左に動かしていただけますか?」
アイスの言うとおり『左』と念じると、世界の景色が左へと動いていった。
「火山が見えませんか?」
「うん、見える…」
「そうしたら、両手を手を前に伸ばしてみてください」
「こ、こう…?…………っ!!!!」
直後、眩い光に包まれる。
「これで移動完了です。ちなみに『木』は移動した場所のスタート地点にありますが、一度移動したらしばらくは移動できません」
「えっ!?って事は今度はこの火山に長時間いなきゃいけないって事!?」
「そうですね。ですが草原と同じように散歩はできるので、ひたすら歩くのがお好きなあなたなら楽しめるかと思いまして」
いやいや好きであんな限界まで歩くわけないでしょアイスちゃんさあ…しかもなんか笑顔なんだけど。本当に私が歩くの大好きだと思ってるのか、やっぱり私を貶めようとしてるのか。どっちにしろ怖い。
「ではまた。何かありましたらお呼びください」
そう言うとアイスは、透明になりながら消えていった。私を一人にしないでおくれアイスちゃんや。仕事はしたくないがタダ働きはもっと嫌なのじゃよ…