4.希望
夏休み4日目。
私は何もする気力が起きずそのまま布団の中で一日を過ごした。
もうどうなってもいいと思ってしまったら何もやる気が出なくなった。
ピーンポーン。
自宅の呼び出しが鳴る。時刻は17時を回っていた。
「楓お友達が来たから上げるわよ。」
お友達?有栖は外国だし。
「会いたくない。」
ふとそう叫び返していた。
それでも近く廊下を歩く音。
扉の前で足跡が止まった。
トントン。
「楓ちゃん大丈夫?」
それは昨日一緒にいた桃子だった、
「入るよ。」
「…。」
「今日学校に来ないから心配しちゃった。」
「人殺しの私なんか心配する価値無いよ。」
「そのおかげで私は今もこうしている。だから楓には凄く感謝している。」
「それでも殺す必要は無かった。」
「相手が殺しに来てたんだからこちらも手加減できないのは仕方がないよ。私の攻撃だって当たれば死んでた可能性があるし。死神の攻撃も当たれば死んでたよ。」
「それでも人を殺していい理由にはならないよ。」
「あの時死神をやってなかったら私は、間違いなく殺されていた。だからその事には私は凄く感謝してる。だから誰も貴方のことは、責めないよ。」
「もう帰って。」
「……わかった。また明日くるね。」
そういうと彼女は部屋を後にした。
《たかが敵を一人倒しただけでどうして落ち込んでいるんだい?》
《シュレディンガーには、人の気持ちごわからないの?》
《人の気持ちには、興味があるけど敵を一人倒しただけじゃないか。人間は戦争でたくさん人を殺し合ってるじゃないか?》
《私は一般人で戦争なんて程遠い所に生まれたの。だから人を殺すとか殺されるとかわからないし私は、人を殺すことなんて出来ない。》
《人間はどちらかしか助からない時より大切な方を選ぶ、今回は、チェリーと、死神どちらかが死ぬしか無かった。その中で君は死神が死ぬ方を選んだに過ぎない。それとも君はあそこでチェリーを見殺しにする方を選べばよかったと思っているのかい?》
「そんなのないよ。」
私はただ戦うという事しか考えておらず。
人が死ぬ事なんか全く考えていなかった事に酷く後悔した。
《もう、魔法少女をやめる。》
《本当に良いのかい。そうなると君の願った奇跡は無かった事になる。有栖が死ぬ事になるよ。》
「そんな」
私は逃げ場の無いこの感情を抑えきれず崩れ落ちた。
そのまま泣き疲れて眠ってしまった。
夏休み5日目。
次の日目が覚めた。
私はやる気が起きなかった。
どうせ今日も桃子が来るだろうし。
そう思うと私は、動く気がしなくなり、何も考えるのがだるくなって布団に突っ伏して眠ってしまった。
ふと気がつくと夜になっていた。
「昨日来るって行ってたのに。」
そう思うと急に寂しくなった。
《シュレディンガー今忙しい?》
寂しさを紛らわす為にシュレディンガーに声をかけてみる。
《なんだい?忙しくは無いけど暇ではないね。》
《何しているの?》
《仕事さ。僕は、魔法少女同士が合意の上で戦う場合周辺にバレないように結界を張っているからね。》
それを聞いてまた殺し合いが何処かで起きているのかと落胆する。
《ちなみに今戦っているのは薔薇園と死神が、所属していた死の騎士とチーム同士の戦争さ。》
「え?」
思わず聞き返してしまった。
《君の方にもリリィが召集をかけていた筈だよ。》
そこで改めて自分の仕出かした事に気がついた。
パジャマのままだったがそんなの無視して外に出る。途中変身をして屋根伝いに学校へ向かう普段20分くらいかかる道のりを2分とかからず到着する。
学校は不自然な程静かだった。校門を飛び越えて中に入る
キーン
さっきまで静かだったのに急に大きな音が連続して聞こえるようになった。
私は校門を超えたことで一緒に結界も超えた事に気がつく。
私は真っ直ぐに園芸部に向かう校内に入ると一人の人間が倒れている。
近寄ってみると女の子は血を流し既に生き絶えていた。
そのまま走り園芸部に到着する。
扉の奥から凄い音と魔力を感じる。
扉を開けた、周り一面嵐が去ったかのように荒れていた。花は踏み潰され、花壇は崩れ、水道からは水が吹き出ている。真ん中には大きな家サイズのレンガが鎮座していた。
「これはチェリーの魔法?」
周りを回って倉庫を目指す。ふと大きなレンガのしたから腕が見えた。
軽く10tはありそうなレンガに潰されては例え土の上でも即死は免れないだろう。私は叫びたい気持ちを心に押さえ込み倉庫に目指す。倉庫の扉は鉄製にも関わらず紙をハサミで切るかのように切り取られていた。
倉庫に入り地下へ飛び込むそこには薔薇園のメンバー4人と知らないメンバー3人と2人の遺体が転がっていた。
よく見るとリリィは、右手が曲がってはいけない向きに曲がっている。
「みんな!」
私は叫んだ。
皆んなが振り返る、敵の3人のうち2人が私に向かって走って来りその後ろをサンフラワーとリリィがおいかける。
途端、大きな薔薇が2人に襲いかかり、1人の心臓を背後から突き刺した。
1人は倒れたがもう1人は私に飛びかかる。
「死ね。」
彼女は大きな鋏で私の事を絶ちに来た。
私は前方にシールドを張る。
「駄目!!」
チェリーの叫び声が聞こえる。
彼女の鋏がシールドに触れた途端鋏はシールドをすり抜けた。
斬られる。
そう思い、私は反射的に目をつぶってしまう。
あれ?痛くない。
目を開けるとサンフラワーが目の前に立っていた。
サンフラワーが光りだす。その途端糸が切れたかのように、菊地 洋子地面に倒れた。
「っち、狙いとは違うが1人やったしとりあえずは良いか。
次はお前だ、死ね。」
私に向かって鋏が向かう。
シールドじゃ防げない。
私は反射的に後ろに飛ぶ。
「うっ。」
壁に勢い良くぶつかる敵はまだ近づいて来る。
「よそ見とはいい根性してるわね、ソウルイーター。」
その叫び声とともにリリィは鋏を持った相手に回し蹴りを叩き込む。
そのまま私とソウルイーターと呼ばれた彼女の間に立つ。
ソウルイーターは持っていた鋏を振り回しながら走って来る。
リリィはそれを間一髪でかわし、蹴りを叩き込む。
ソウルイーターは、後ろに飛んで蹴りの威力を和らげるようにして飛ばされる。
リリィはさらに距離を詰めるように肉薄する。
ソウルイーターが鋏を振るにはある程度離れている必要がある。ゼロ距離では、鋏を開く事が出来ないのだ。
それを理解しているリリィは常に相手の懐に入るようにして戦っている。
攻撃し続ける事で相手が大技を繰り出す隙を与えない、それにこちらは4対2相手が攻撃しなければこちらは手を増やす事も可能なのだ。
「ローズお願い!」
リリィが叫ぶとローズは自分が戦っていた相手をソウルイーターに投げつける。
「邪魔だ!!!」
ソウルイーターは飛んできた仲間を真っ二つに切断した。
リリィはすかさずゼロ距離に戻る。
「させるかよ。」
ソウルイーターはリリィを警戒して、鋏を真っ二つに割り双剣の様に構えた。
そこにローズは、荊を拘束具の様にまとわり付かせる。
「行きます。」
チェリーは、叫ぶと同時に上にその辺に落ちていた掌大の石をソウルイーターの直上に投げた。途端石はその体積を1000倍に膨れ上がる。
荊ごと相手を踏み潰す石は相手が荊左右に避けれないのをいい事に押しつぶす。
そのまま暫く経過した。岩は動く気配が無く岩の下が白く発光した。
その途端岩の下から魔力の反応が消えたので、皆ホット一息をつく。
菊地 洋子は、既に手遅れだったが。他のメンバーは無事生還する事が出来た。
薔薇園を出るとぐちゃぐちゃにされた花壇が元の花壇に戻っている。
「あんなに壊れてたのに。」
《それはこれも僕の仕事のうちだからね。結界内での決闘や戦争の場合死んだ魔法少女の魔力を使って戦闘前の状態に復元するのさ。》
「その代わり魔法少女の身体は朽ちて消えてしまうので。血痕や死体発見による時間にはならず失踪として未解決で処理される。」
シュレディンガーの説明を、ローズが引き継ぐ。
「これで死の騎士のリーダーソウルイーターと副リーダー、リリーパが死んだ今実質死の騎士は解散になる。これから付近の勢力が一気に変わるから皆警戒は怠らない様に。」
リリィが注意事項を周りに伝え解散になる。
ふと気がつくと人が死んだのに慣れてしまったのか何も感じなかった自分に気がつき急に気持ちが悪くなった。
夜も遅くなり自宅の窓から戻り変身を解く。
家の明かりは完全に消えていて両親も眠りに着いた時間だろう。
私はそのまま死んだかの様に眠りに着いた。
サンフラワー死亡。
死の騎士壊滅。
これから長期で連載予定ですので、皆様から評価を頂けたら嬉しいです。