表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

"そちら側"に行かれては困ります

目を閉じて、眠りにつこうかどうしようか迷っていると…。


コンコン


「お嬢様、お目覚めの時間です」

起きていると分かっていながらも、いつもの習慣を行います。扉の向こうで執事の声が聞こえました。

ガチャりとドアを開けて入ってきたのは朝というにも関わらず、上から下まで全て漆黒の執事。

まるでそこだけが夜のような装いです。


「おはようございます。お嬢様」

執事は、少女に近づき朝食の準備を始めます。

その時に、少女から僅かに感じる生臭い匂いに気づきながらも、笑顔を絶やすことを忘れませんでした。「朝は、早く起きるに限るわね」

「左様でございます」

カチャカチャと音を立てて、手早く準備をし、少女に朝食を食べさせます。

その後、今日の少女の予定を言ってから、少女に問いかけました。


「失礼ですが…今朝はお嬢様から獣臭い匂いがします…先程森へお出かけに?」

少女の瞳を見つめて言いました。

「そうだけど。それがどうかしたのかしら?」

少女は、当たり前のかのような言い方で、執事を見ずに言いました。

執事は、当たり前のように答えて?の顔をした事と、森でのただの獣と戯れていた事実に心の底から腹を立てました。それは、紛れもなく、少女に特別な感情を抱いていたからでした。

「何度も仰っているではありませんか。お嬢様」

声のトーンを変えずに少女の目線に合わせる為、膝を折り、話し出しました。

「お嬢様は、気高き"吸血鬼"一族の御令嬢であり、この屋敷の当主。普段から香る薔薇の香りのないお嬢様は、お嬢様ではございません。そのような匂いをつけては、ただの獣に過ぎませんと」

"どうして、分かっていただけないのですか。

貴女は、そちら側の獣とは訳が違うというのに"

「私は、獣よ?それは、間違いないわ」

"いちいちうるさいわね。私がどこに行こうと勝手じゃないの。全くこの執事ったら、嫌になるわ"

「お嬢様はわか「そんなに言うなら…貴方が、永遠に消えない薔薇の香りにすればいいじゃない」

キョトンとした執事に向かって、少女は、長いまつ毛を瞬かせて、持っていたホークを揺らしながら言いました。

「そこまで薔薇の香りがいいだなんて、貴方ぐらいしかいないし、私はちっとも気にしないわ」

少女は朝食を食べ終わってホークを置き、執事に両腕を伸ばしました。

「早くしないと、私の匂いはずっとこのままよ…それでもいいのかしら?」瞬きしている間に、瞳の色が真紅に変わり、執事を熱っぽい目で見つめます。

少女の、今日の予定を考えている余裕なんてそこにはありませんでした。

執事は、そんな少女を見て弧を描きます。

「そのような瞳で見つめられては、こちらも困惑してしまいます。お嬢様」

執事も瞳の色を変えて、少女の意志を汲み取りますした。

少女を自身の腕の中に収めて、腰に手を添えました。







「ねぇ、私から臭う獣の匂いって、興奮するの?」


ベットに沈んだ少女は、自分の身体に跨っている執事を、見上げながら言いました。


「ご冗談を、お嬢様……このような匂いは、やはり虫唾が走りますねぇ…」

はぁ とため息をつきます。

"貴女は今もこの先も、私だけの、唯一の薔薇でいてください…"

心の中で、呟きます。

カーテンの隙間から漏れる心地いいそよ風と、朝の日差しに照らされて煌めく、少女の胸の谷間に顔を埋めました。

┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅ ┅





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ