客人の消えた後
「紅茶、淹れなおしてきてちょうだい」
そう言って、少女はまた薔薇園の中に消えていきました。
突然の天使の出現により、優雅なアフタヌーンティー所ではありませんでした。
さっきまで日差しが差していて眩しいぐらいだったのに、今はどんよりと重い雲で覆われています。
薔薇園の中で少女は考えました。
"あの天使は何かを企んでいる?"
紅茶を淹れなおし、スイーツを手早く作りながら執事は考えました。
"天界に連れ戻そうとしているのでは?"
"吸血鬼である私を連れ戻そうとする一つの要因は、あの時の儀式の連中…"
"あの方をお渡しする事などあってはならない。
もしもそうせざるを得ない場合、私があの天使にする事は…。
"それでも儀式の生贄は、もう払われたはず…。
紅茶と、出来立てのスイーツを持ってきた執事は、少女ににこやかな微笑みを、浮かべました。
「お待たせ致しました、お嬢様。
こちらがセイロンティーとミルク。
そして、スイーツは、この時期にとれる木苺のミルクレープを…いかがですか?」
執事は少女の顔を伺います。
執事を見上げてこう言いました。
「お腹が空いてて、たまらなかったわ…。
あなたの糖分を私にちょうだい…?」
執事の唇が少女の唇に重なりました。
この行為は…2人の密やかな関係性を示します。
「甘い糖分は、いかがでしたか。お嬢様。」
唇に弧を描く少女は、執事に言いました。
「ハァ…
とっても…甘かったわ…。ありがとう」
「恐れ入ります、お嬢様」
一礼してから、少女は何事もなかったかのようにスイーツをフォークで刺して、一口食べました。