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影生誕!クレイジークッキング!

作者: こいしのひとつ

皆さんこんにちは!今週も始まりました「クレイジークッキング」!!

この番組では、まともな番組ではまず挑まないであろう無謀なる戦い(調理)に、番組の技術、設備、人員の全総力を上げて挑戦していく!という番組です!

いやー、前回の放送は酷かったですねー。

リノセウスの姿煮を作ろうとするも、調理中に調理人が攻撃を受けてしまうというアクシデントがありました!

しかしこの番組に放送事故は褒め言葉!なぜならこれはクレイジークッキング!!人智を超えた力に人が立ち向かう!それこそがこの番組の信念なのです!

さあ、前置きが長くなってしまいました!

今回挑戦する料理は…これだッ!

「フ ァ フ ニ ー ル の 直 火 焼 ホ ル モ ン !」

さあさっそく始まりました!まずは下準備からです!ボウルの中に災厄の屍王を入れて塩もみを10分!その後に1日置いて味を肉全体に行き渡らせ、ちょうどネクロマンスで進化したぐらいの熟し具合が食べ頃!

食材の下ごしらえが出来たら、いよいよ調理に入って行きます!

今週の調理人はなんとゲストが2人!

1人目は天地を焦がすことに定評があるファフニールさん!

そして2人目は先月執筆したレシピ本が重版御礼の大ヒットで今まさにノリに乗っているこの男!”覇食帝・カイザ!”

その絶妙な火加減と華麗なる包丁捌きで世の女性達を虜にし、更に声もCV社長と文句の付けようがない!これは期待出来そうです!


《コクトゥーラ・インテグーロ》!

おっと、前置きが長くなってしまいました、ただいま調理人カイザの掛け声と共に調理が始まりました!流石本場のフランスで修行を積んだだけあって流暢な発音です!

そして調理の方も流石はプロ、キッチンの中を縦横無尽に飛び回るアルティメットキャロット達を苦もなく捕まえて輪切りにしていきます!

おっ!ファフニールさんも今調理に取り掛かりました!もはや自身のアイデンティティといっても過言ではないそのブレスですね!なんでもカイザによると独自の呼び名があるらしくて…なになに…?

”Exhaustively destroyed scorch on heaven and earth”(エキサイト翻訳:天地を焦がし全てを破壊する天龍の息吹)

…という名前だそうです!かっこいいですね!そのブレスを巧みに操り炭火七輪に器用に火をつけて行きます!解説のミラージュディフェンサーさん、こちらはどう思われますか?

\そうですね、まずこのファフニールさんの技術には驚かされます!人1人は軽く収まる程の巨大な口から器用に加減をコントロールし、まるでガスバーナーのように細長い炎を吐き七輪だけに火を当てています。

そして特筆すべきところはその火加減!素人では読めない風の流れを敏感に感じ取り、炎の角度を調節することで、鉄板に均一に火が当たり、焼きムラがなく肉が焦げにくくなる見事な炎捌きを見せています!/

なるほど、ありがとうございます!

これには調理人カイザも思わずニッコリ、口元を綻んでいます!肉が焼けるのが待ちきれないという楽しさがくっきりと顔に現れています。

さあ、そんなことを言っている間に調理は手際よく進み、完成まで残り僅かとなりました!

着々と時計が針を動かし時を刻む中、各自最後の仕上げに取り掛かっています!

ファフニールとカイザ、お互い見事なテクニックで肉に彩色を施していく!

それはまるで手品の様!

最初はゾンビの体色の様に鈍い土気色を放っていた肉が、今調理人が命を吹き込んだことで肉本来の薔薇色を取り戻しました!それはまるで舞台の上で輝くフェリアの様!

そしてラスト10秒!両者とも凄い速度で手を動かしています!観客の歓声も最高潮の盛り上がりに達しています!カウントダウンが今まさに始まろうとしています!今この場にいる総勢102人の思いは1つ!この肉を全力を尽くして焦がし焼きあげる!ただそれだけの思いが皆の興奮を高めています!今!心は1つに合わさりました!

\ 5! … 4 !… 3 !… 2! …… 1!/


………ピッピッピ----‼︎

今高らかに終焉を知らせる笛の音色がここに鳴り響きました!

とうとう”ファフニールとカイザのコンビネーション焦がしホルモン”の完成です!

ファフニールの熱に身を焦がされない為に私たちと肉からはおよそ100mほど離れていますね!

しかしそれほどの距離があるにもかかわらず、私たちの5感に真っ直ぐに訴えかけてくる、この香ばしい肉の香り!

ジュージューとまるで燃え盛る焚き火の様に鳴り響くこのホルモンが焼ける音!

そしてこの美味そうな形!弾力がありまるでゼリーの様な柔らかさを持ちながらも、口に入れたらコリコリの歯応えを持って私たちを楽しませてくれるであろうその食感!

これら全てを兼ね揃えていることが、もはや口に入れるまでもなく伝わってきます!

そして我々人間が最も食事の際に重きを置いている最も重要な5感の1つ…味覚!

いよいよこのホルモンを召し上がる時が来てしまいました!

皆さん、心の準備はいいでしょうか!

おっと!皆さんが召し上がって頂くその前に!この料理に持てる力の全てを尽くし、調理をしてくれたカイザ!そしてその炎を持って重要な火力の調節を行ってくれた、見た目に対して繊細な天龍ファフニール!

まずはこの御二方に感謝と敬意を持って、1番最初に召し上がって頂きましょう!

さあ!両者料理の前に並びました!流石に元レジェンドを食材に使っているだけあって、例え調理されても屍王から凄まじいオーラが放出されています!

しかし、それ以上に私たちの胃袋を刺激してやまないこの香り!これにはさしものカイザも笑みがこぼれる!当然でしょう、我々はこの瞬間のために心を1つにし、力を合わせて屍王と戦ってきたのです!

さあ!いよいよ!試食です!

まずはカイザから!一気に口に放り込んだ!

これはまた凄い豪快な食べっぷりだ!その体躯からは想像もつかないほどの豪胆な食べ方を見せ付ける!これはカイザが信じられないほどの強靭な胃袋の持ち主なのか、それともこの肉の美味しさが赤子を手を捻るが如く簡単に人1人を変えてしまう程の恐ろしい力を秘めているのか!

そんなことを言っている間にもどんどん食べ進んでいく、自分の体の3倍近くある肉をいともたやすく平らげてしまったー!これには観客も総立ち!小さなエンターテイナーに惜しみない拍手を送っています!

そして拍手と共にカイザ退場!残るはあの!ファフニール!

本来何も食わずして数千年は生きることが出来る存在である龍が、あえて人の食楽である肉を喰らうというのです!

一体どんな反応を見せてくれるのかこの私自身も体の動悸が治まりません!

さあ!ファフニールも同じく豪快に肉をその大きな口に放り込んだ!それはまるでクジラの捕食の如く豪快な…

おっと!?

どうしたのでしょうか!?

ファフニールの様子がおかしい!何やら口元を押さえています!喉でも詰まらせたのでしょうか!?


…いや!…違う!…これはヤバい!

ファフニールの体から燃え盛る灼熱がこみ上げている!

今まさに肉が辿ってきた道を折り返し!その土管の様な大きさの首を瞬間で突き抜け、今まさにその口から下界に放たんとしています!


ヤバい!みんな逃げろ!天地を焦がす程の威力を持つ息吹だ、一度その身に触れたら骨も残らず灰燼と化すぞ!

だめだ!観客がパニックを起こしている!無理もない…私もまさかこの様な事態が起こるとは予期していなかった…!せっかくフリーアナウンサーの下積み時代から初めて任された冠番組だったのに…また仕事を探さないとな…

おっと、そんな悠長にしている場合では無い!このままではここにいる人々が皆炎で焦げ死んでしまう!それだけではない!このままファフニールが天地ごと全ての人々を焦がしてしまえば、この数百年安寧を保って友好的な関係を築いて培った「人間」と「ドラゴン」の信頼が崩れてしまう!それは即ち両者への不信!そしてそれは裏切り、陰謀を呼び、あっという間に人間とドラゴンの全面戦争の火蓋が切って落とされてしまう!

それだけは阻止しなければいけない…あの時はなんとか人類絶滅の危機を脱したが、このまま最悪の事態が訪れてしまえば今度こそ人類に生き延びる道は無い!それだけはまずい…

クソッ…これだけは避けたかったが…最後の手段に出るしかない!もう今から人々を避難させる猶予はもはや残されていない!このままで彼らは灼熱の咆哮から逃れられずに消し炭にされてしまうだろう!彼らの死が確定してしまう!

しかし…私は1つだけこの危機的状況から彼らが死から免れる方法を知っている…やるしかないのか…しかし、現状では他に方法は無い…! やるしか無いんだ! 覚悟を決めて!

「誇り高き炎獄の支配者、天龍ファフニールよ!

我が名は…ジークフリート!

さあ来い龍よ、この私が相手だ!」

\グオオオオオオオオ!!!!?/(自我喪失)

「どうした?忘れたとは言わせないぞ!

たとえ貴様が過去に俺の記憶を忘却の彼方に追いやろうとしても…それは無駄な足掻きだろう!」

「何故なら…貴様の遺伝子が、その斬られた鱗、翼、心臓が…俺の記憶を脳髄に刻み付けているからだ…」

「そう…この俺こそが、この龍殺しのジークフリートこそが…古の深淵にてお前を死へと葬り去った…お前を殺した者だからだ!」

\グァァアアアアアアアアアア!!!!!/(憤怒)

どうだ…思い出したか?俺がお前を殺したことを…

俺が憎いだろう?お前を殺したこの俺を…お前の心臓を喰らい、不死となったこの俺を…殺し尽くしたいのだろう!?

\グガァァァオオオオオオオ…/(凄まじい殺気)

「そうだ、その意気だ!お前の相手はその人々では無い!この俺だ!」

「俺とて1度は刃が立たず、生と死の境界を彷徨った身よ…

つまり…1勝1敗という訳だ!

…ならば!今ここでこの因縁に…終止符を打とうではないか!」

(みんな、死なないでくれよ…お前たちは俺が守る!)

(頼むぞ、魔剣グラム…俺の相棒!)


「さあ…我が不死の魂…殺せるものなら、殺してみせよ!」

\ヴゥオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!/(臨戦態勢)

「おおおおおお行くぞォォォォ!!!」

(俺たちの戦いはこれからだ!)

ーーーーーーーーーーーーー

※只今絶賛放送中の○○主演のドラマ「影生誕!クレイジークッキング! 〜龍殺しの騎士編〜」は、諸事情により今回を持って放送を打ち切りとさせて頂きます。

今迄のご拝聴誠にありがとうございました。

○○先生の次回作にご期待ください!

fin.

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