嘘 一
そろそろ、勿体振るのは止めようかと思うんだ。
僕がこれ以上のページを重ねるためには、やっぱり、きっちりと説明はしておいたほうがいいと思う。
それに、これはきっと良い機会なんだと思う。
現在進行形で綴っている、この『いはいダイアリー』が、どんなに間違いで、どんなに嘘で塗り固められているのかを、自身に刻みこむためには……
単刀直入に言うと、僕にはカナではなく、エミさんという、とっても素敵な恋人がいる。
年上の恋人だ。
自分で自分が羨ましくなるほどの、身にあまる光栄だって感じてる。
エミさんはとっても妹思いで優しくて、今の世の中じゃ、滅多にいない出来た人だ。
だからこの『いはいダイアリー』を制作するにあったってまず、僕はエミさんに別れ話を切り出した。
それも期間限定で、とっても身勝手な別れ話を。
でも、やっぱりエミさんはエミさんで、そこまで思うのは病的なんじゃないかって思ってしまうほど、妹の幸せを望んでくれたんだ。
嘘 一
僕とエミさんは、カナの為にと偽りの破局を迎えることになった。
そしてそれを、カナは知っていながらも受け入れてくれている。
理由は単純な話だ。
余命を告げられた人物が、その程度の我儘を推し進めようとも、誰も文句なんて言えようはずもない。
例えそれが正しい道なんかじゃなくったって、幸せになろうと思う気持ちに嘘はない。
嘘はきっと後悔につながっていく。
でも、僕達にはもう、これ以上の幸せの形が見出せなかった。
これは罪とも言えるのかもしれない。
時が経てば、自分達で罰を与える機会がやってくるのかもしれない。
今の僕からしてみれば、「だからどうした?」とふんぞり返ってしまうんだけどね。
周りに迷惑を掛けてもいいんだなんて、そこまで子供じみた考え方はしてないけれど、僕達は僕達で、それなりの覚悟を持って、この道の歩き方を選んでるんだ。
どうか、そっとしておいて下さい。
僕にとってカナは、大事な大事な友達なんです。
最期の時が来るまでは、ずっと、一緒にいると決めてるんです。
例えそれが、僕よりもずっと〇〇だったとしても……
今日の告白は、ここまでにさせて貰おうと思う。
まだまだ僕には、告白すべき噓偽りがあるんだけどね。




