幼馴染み
「おーい、りっくん! 見て見てぇ~! カメラ買ってきたの〜!」
長い髪を振り回しながら、幼馴染みが一目散に僕の方へと駆け寄って来る。
時たま、こんな風に突拍子もない行動をとる彼女に、僕は呆れながらも、いつも通りに振る舞った。
「カナ、そんなカメラ買ってどうするんだよ? ……絶対使わないじゃん」
傍目に見ても、そのカメラはそこいらの安物とは大違いだ。
いわゆる高性能で、とても使いきれるわけもない機能が搭載されているに違いない。
カナは僕の言葉に「ええ〜っ」と頬を膨らませているが、僕の知っている彼女はとても飽きやすい。今までも、それで一体どれだけの辛酸をなめされられる事になったのか、思い出すだけでも頭が痛くなってくる。
「大丈夫だよ! 今回はちゃんと、綿密な計画に基づいて衝動買いしたんだから!」
本人は気付いていない様だが、その言動自体が破綻している。
「あのね、カナ、綿密な計画と衝動買いが結び付く訳ないじゃん」
だから僕はこの様に一端の常識を盾にして、いつも通りに彼女を諌めた。
でも、この瞬間をあるがままに受け入れ、これから先もこんな日々が続いていく事を疑いすらもしていなかった僕は、
「でもね、りっくん。 私、もうすぐ死ぬんだって……」
突然放たれたその言葉に息を飲み、
「だからね、今の内にたくさん残そうと思うの!」
現実を直視する事が出来なくなって、
「ねぇ、りっくんも手伝ってくれるよね? 私の遺灰作品の完成を!」
有り体に言えば全てを放棄するかの様に、考える事を放棄してしまったんだ。
受け入れなければ現実とは遠く、受け入れてしまえばきっと、それは僕を不幸にしてしまうから
だから、僕は黙ってカナの提案に頷いた。