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【番外編】勇者戦隊

お久しぶりです!

作業のほうがひと段落したので、番外編をアップします(≧∇≦)



「みんな、よく集まってくれた」


 俺は部屋に集まってくれたメンバーに礼を言った。

 ここは、ユニヴァース魔法学園の一角にある通称『白銀の間』。

 この場に集まったのは、俺を除く九人の男女だ。


 俺の隣に当然のように座っているのは、我らがスターリィ。その横には目をキラキラさせたボウイと、彼の腕にしなだれかかるナスリーンの姿が。

 正面に視線を向けると、紅茶色の髪のエリスと、彼女を無理やり引き連れてきていたミア姫。

 さらにその二人の隣には、仏頂面のティーナと眉毛をへの字に曲げたカレン王子。それにニコニコ笑顔を浮かべた赤毛の女性バレンシア。

 そして、その後方……壁にもたれかかるようにして立っているのは、なんと『明日への道程ネクストプロムナード』から参戦の《氷竜アイスドラゴン》ウェーバーさんだ。


 彼らがこの部屋に集まった理由。

 それは、俺の新しい能力について相談するためだった。




 俺がサトシの『覇王の器レガリア』によって覚醒した能力名は……その名もずばり【勇者戦隊ブレイブリー・ヒーローズ】。

 こいつは本当にとんでもない能力だった。簡単に説明するとこんな感じだ。


『俺が指定したメンバーを【勇者戦隊】オーブマンの一員にする能力。なお、戦隊メンバーが掛け声とともに変身した際、戦闘力や魔力に大幅な補正が入る』


 いやいや、すごいよこれは。

 なにせ魔纏演武まとうえんぶでも数割しかアップしない基礎能力とかが、下手すると二倍とか三倍になっちまうんだぜ?

 与えられた役割によって手にする能力は異なるけど、こいつがチートであることに変わりはない。

 さすがはレガリア……サトシのやつ、とんでもないものを残してくれたもんだぜ。


 『勇者戦隊』オーブマンのメンバーは、デフォルトで五人となっている。

 レッド、ブルー、イエロー、ピンク、ホワイトだ。

 このうち、リーダーであるレッドは自動的に俺に割り当てられているので、他のメンバーを選ぶ必要があるのだ。


 ちなみに、五人にはそれぞれ特徴と特殊能力が割り振られている。

 レッドはリーダーだけあってすごい。『リーダーシップ』『炎の能力付与』『基礎能力すべて二倍』『味方のピンチでさらに倍』だ。いやはや、これはさすがに性能がぶっ壊れてるとしか思えない。

 他はブルーが『冷静沈着』『氷の能力』『基礎能力二倍』。

 イエローが『カレー大好き』『体力三倍、他は二倍、魔力ブーストなし』『タンク役』。

 ピンクが『ヒロイン属性』『お色気担当』『魔力三倍、他は体力以外二倍』『魔法の威力一律五割増し』。

 ホワイトは『妹属性』『ツンデレ』『魔力三倍、体力二倍』『無差別に魅了の能力』。

 ……うーん、なんというかいろいろぶっ壊れてやがる。


 あとは、俺が別途『天使の器オーブ』を獲得するたびに一人ずつ増えていく。

 俺は今、他に五個のオーブを持っているので、さらに五人を追加で指名することができる。

 ……ねぇこれ、世界征服できるレベルの能力じゃね?


 といっても、この追加メンバーが曲者であって……

 たとえば『オーブシルバー』。こいつはまだ良い。オーブマンたちがピンチになったときに駆けつける助っ人属性だそうだ。言いたいことはいろいろあるが、まだわかる。

 ちなみにオーブシルバーは夢の中でアンクロフィクサに予約された役割だから、一応取っておくことにする。

 だが……問題は別のキャラだ。こいつはなんなんだ?『超魔怪人フローズンブリード』。

 世界を破滅に陥れようとする、吹雪の超魔だそうで……って、なんやねんそれ!!

 完全に悪役やんけっ!!



 そんな俺の魂の叫びツッコミを、この場にいる全員に伝えた。

 ようは、能力を伝えた上で戦隊のメンバーを募ろうとしていたんだ。

 なにせせっかく手に入れた能力だし、スペックも良い感じに壊れてるからきっとみんなの役に立つはずだし!

 多少格好がイマイチではあるんだけど、背に腹はかえられないし、なにより慣れればどうということはない。

 現に俺は慣れてしまってもはや気にもならなくなったし!はっはっは!


 ……てなわけで、とりあえず俺は、全員の前で『勇者戦隊オーブマン』のオーブレッドに変身して見せた。

 俺は主人公であるレッドになるようにデフォルトで設定されているのだ。


「この世の悪を許さない!勇者戦隊オーブマン、ここに爆・誕!」


 変身した俺は、我ながらイカレた格好をしていた。

 パッツパツの全身赤タイツのような服に、申し訳程度に備わったヒラヒラのスカート。頭全体を覆うマスクに、ブーメランのような形をした目の部分。胸元には光り輝くオーブを意識したであろう紋様が浮き出ていた。

 ついでに、背には天使の翼とうまく合体して翼のフォルムを宿した赤いマントを羽織っている。


 変身した俺の姿を見て、その場にいる全員が息を飲むのがわかった。

 ただし、全員が異なる反応を示していたのは気になるんだけど……

 特にティーナ。彼女はなんだか汚物でも見るような視線を俺に向けていた。

 やめてぇ、その目は本気で心が折れるからやめてっ!



「やるやる!俺がやるっ!」


 まるでお葬式のような微妙な空気を切り裂くように、元気の良い男の声が聞こえた。真っ先に手を挙げたのはボウイだ。

 まぁそうだろうな。俺もこいつならきっと立候補してくれるだろうと思ってたよ。


 だけどなぁボウイ、非常に申し訳ないんだがお前さんは『戦隊』には入れないんだ。


「すまないボウイ。この戦隊に入るにはある制約がある。それは…『天使に覚醒していること』なんだ」

「あっ……」


 そう、残念ながら『勇者戦隊』シリーズには天使しか参戦できないのだ。

 つまり、天使として覚醒していないボウイでは戦隊入りはできない。


「なんてこったい…まさに俺のための能力だってのに」


 うん、俺もそう思うよ。

 本当にすまなかったな、ボウイ。


「それじゃあ、あたしも無理だね。あーあ、なんだかちょっとだけ面白そうだと思ったんだけどなぁ」


 赤毛でスタイル抜群の女性……ティーナとエリスの親友であるバレンシアが残念そうに口を開く。

 しかーし! 実は天使でない君たちにも出番があるのだよ。ふふふのふー。


「まぁまぁそう焦らないでくれ。実は……天使じゃなくてもなれる役割があるんだ」

「むむっ!?」

「なになに?」


 すかさず食いつくボウイとバレンシア。俺は勿体ぶって間をおいたあと、二人に意気揚々と告げた。


「君たちにもなれるもの、それは……『超魔怪人フローズンブリード』の戦闘員である”フロスターズ”だ」

「……は?」

「……え?」

「だから、戦闘員”フロスターズ”だ」


 そう。悪役である『超魔怪人フローズンブリード』の配下、戦闘員フロスターズであれば誰でもなることができるのだ。

 もちろん数に制限があるから何人でも、とはいかないけど、戦闘員になるだけでも基礎能力が二割増しになるという超絶機能なんだよなぁ。他にも多少制約はあるけど。

 でも……


「ッザケンなよ!誰がなるかよっ!んなの悪役じゃねーか!」


 速攻でボウイが切れた。ですよねー。


「ちなみに、その戦闘員フロスターズってのはどんな格好なの?」

「ああ、こんなのだよ」


 俺が試しにオーブレッドの状態を解除して、戦闘員フロスターズに変身してみる。

 全身が黒ずくめのタイツに、顔の部分に氷をかたどった目が付いた、なかなかイカレた格好だ。

 ついでに言うと、フロスターズになると『シャー!』しか喋れなくなる。


「くくく……バレンシアにピッタリじゃないか」

「むむっ」


 変身した俺の姿を見て、ティーナが忍び笑いを漏らす。

 親友の小馬鹿にした態度に、とたんにバレンシアが不機嫌になってしまった。


「……なにその格好?あたし絶対イヤなんだけど」


 変身を解除した俺に、バレンシアの容赦ない拒絶が襲いかかる。


「うーん、そっかぁ、残念だ。ボウイは……聞くまでもないか」

「ああ、ぜってーやらねーよ!」

「ダーリンがしないなら、ウチもやらへんわぁ」


 吐き捨てるように宣言するボウイの横で、ナスリーンも撤退宣言をしてくる。

 なんてこったい、はやくも貴重な人材が三人も失われてしまったぞ。


 ところが……最悪なことに、辞退という名の悪循環の連鎖はとどまることを知らなかった。


「あー、先に言っておくけど、ボクは参加する気は全く無いからね?」

「あ、私も。あの格好はちょっと……」

「うんうん。いくらアキのお願いでも、さすがにあれは、ねぇ?」


 ティーナ、エリス、カレンの三人が立て続けに撤退宣言をしてくる。

 おいおいマジかよ、ここで君たち三人が離脱すると、マジで致命的だぜ?

 特にカレン! 魂の盟友としてお前だけは裏切らないと思ってたのにっ!

 お前のためにホワイトを取っておいたのにぃぃ!


「あー、あたしはレッドだったらやってもいいよ? なんか炎の戦士ってのがいいね」


 おお! さすがはミア姫! ここで手を上げてくれるか!

 だが残念、オーブレッドは仕様で俺しかなれないんだ。

 だから…オーブブルーとかイエローでどうかな?


「えー、やだ。だいたい『カレー大好き』ってなによ。あたしレッド以外だったらやらなーい」


 なんですとー!? ここでまさかのミア姫まで戦線離脱ときたもんだ。


 あまりのショックに、がっくりと項垂れてしまう。

 そんな俺を横目に、一同は次々と部屋から出て行ってしまう。

 あぁ、なんて冷たいやつらなんだ。



 残ったのは……いつもそばにいてくれる安定のスターリィと、なぜか退出しなかった『氷竜アイスドラゴン』ウェーバーさんだけだった。


「えーっと、アキ? 仕方ないですわね。本当はイヤだったんですけど、他に誰もいないなら、あたしでよければ協力しますわよ?」


 あぁ。ありがとう、スターリィ。

 一度は拒絶していたのに、受け入れてくれるなんて……本当に君は俺にとっての至高の存在だよ。

 俺は感動の涙を流しながら、スターリィに小さなピンク色のピンキーリングを渡した。これが変身するために必要なキーグッズとなる。

 スターリィ、そんな君のために『オーブピンク』を残しておいたからね。

 といっても、他に成り手がいないんだけどさ……しょんぼり。



 こうしてなんとかスターリィの参加までこぎつけたものの、ほとんどの人に断られてしまい散々な状況だ。

 そんな中、予想外の人から予想外の言葉が飛び出してきた。


「アキ、君の能力は本当に面白いね。私も是非参加させてもらおう」


 なんと、それまで沈黙を守っていたウェーバーさんが、ここでまさかの参戦宣言をしてくれた。

 マジかよ! しかもあんた『明日への道程ネクストプロムナード』じゃん!

 現役最強の冒険者チームのメンバーがこんなのに参加してくれるなんて、嬉しい誤算だ!

 しかし……ウェーバーさんは一体何の役をやってくれるんだ?


「そうですねぇ……なんでもやって良いのなら、『超魔怪人フローズンブリード』なんかが良いですねぇ」


 ……は?

 それ、悪役なんですけど?


「ええ、知ってますよ。なんだか私もレイダーと一緒に正義の味方をするのにも飽きてきましてね。たまにはこういう役割も良いかなぁと」


 えーっと、もしかしてウェーバーさん、世界を滅ぼしたかったりする?


「そんなことはありませんよ?ただ、一度本気のレイダーさんとやり合ってみたい気はしてたんですよねぇ」

「あははっ、そうっすか……」


 どうやらウェーバーさんもなかなか過激な脳筋思想をお持ちのようで。あは、あはは……


「す、すいません。敵役はメインメンバーが五人揃わないと設定できない仕様になってるんです……」

「あぁ、そうなんだ。それは残念だねぇ」


 ちなみにメインの五人に入る気はないかと聞いてみると、「それは遠慮しておくよ」と言われてしまった。

 うーん、この人も本当に不思議な人だな。




 そんなわけで、俺の『勇者戦隊』のメンバーはいまだに全然揃わずにいる。

 しかも、せっかく『オーブピンク』になってくれたスターリィも、なぜか一回も変身してくれない。


 どうせならスターリィが変身した姿も見てみたいなぁ。そう思って彼女に変身しない理由を尋ねてみることした。


「ねぇスターリィ、なんで変身してくれないの?」

「えーっと……変身は強敵が現れた時に取っておきますわ!」


 ……スターリィ、どうして俺から目をそらす?




 一事が万事こんな感じだったので、どうやら俺の能力が真の力を発揮するようになるには、もう少し時間がかかるようだ。

 せっかく良い能力なのになぁ、これじゃあ宝の持ち腐れだよ。


 あーあ、誰か『勇者戦隊』に入ってくれないかなぁ。

 まったく、サトシもやっかいな能力をくれたもんだぜ!


新作の方の構想も着々と進んでます(≧∇≦)

三月中にはスタートする予定です!!



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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです。 良い物語をありがとうございました。 他作品も楽しく読ませていただきます。
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