92.ミクローシア
ミクローシア=ユニヴァース。
彼女は偉大なる魔法使いロジスティコス=ユニヴァースを父に、“ほうきの魔女“デイズ=カリスマティックを母に、そして『若き英雄』エルディオンを兄として、この世に生を受けた。
超一流の家族に恵まれた彼女は、幼いときから魔法の才能に溢れていた。
『神童』、『天才』。そう呼ばれ、何不自由なく幸せな日々を送っていた彼女は15歳となり、父親が経営するユニヴァース魔法学園に入学する。
そのときから、彼女の運命の歯車が大きく狂い出す。
黄金色の髪を持つ年上の美青年アンクロフィクサ。彼を一目見て、ミクローシアは恋に落ちた。
ところがそう簡単に彼は振り向いてはくれなかった。
なぜなら…アンクロフィクサは失恋したばかりだったから。
学生時代のアンクロフィクサは、同級生の少女クリステラに恋をしていた。しかし彼女には別に好きな人がいた。同じく同級生のパラデイン。
完膚なきまでに失恋したアンクロフィクサは、失意のまま学生を卒業し、そのまま研究生として学園に残ることになる。
少し影のある雰囲気を持ったアンクロフィクサに片思いをし続けたミクローシアは、一生懸命彼のそばにいようとした。だが、どれだけがんばっても彼は振り向いてはくれなかった。
その頃のアンクロフィクサは、既に少しずつではあるが闇に染まり始めていたのかもしれない。だが…決定的に彼が“崩壊“したのは、召喚した魔族フランフランとともに彼の生まれ故郷である“閉鎖された村“に帰還したときだった。
その村で、何が起こったのかは誰も知らない。
結果としてアンクロフィクサは…その村を滅ぼし、悪魔へと堕落した。
大きな罪を犯してしまったアンクロフィクサを、それでもミクローシアは見捨てなかった。
少しおかしくなっているだけだ。自分が治してみせる。
そう言って両親や兄の制止を振り切り、アンクロフィクサについていってしまう。
…しかし彼女は、結局アンクロフィクサを救うことができなかった。
魔王グイン=バルバトスを召喚し、世界を滅ぼす戦争…『魔戦争』を開始したアンクロフィクサ。
その戦争で、ミクローシアは兄であるエルディオンを殺害し、完全に悪魔へと堕落してしまう。
最終的には父親であるロジスティコスによってミクローシアも倒されることとなった。
…ところがここで一つの悲劇が起きる。今際の際となって、彼女のもう一つの能力が覚醒したのだ。
フランフランが化身したオーブによって『荊棘の女王』という固有能力に覚醒したミクローシアは、不死身の身体を得て死の淵から奇跡的に蘇る。
しかし、この世とあの世を繋ぐ『冥界の門』までも垣間見た彼女が生還したときには、魔戦争は…すでに終わっていた。
彼女の愛するアンクロフィクサは討たれ、魔王グイン=バルバトスは滅ぼされていた。
ミクローシアは絶望した。
ついに…彼女の想いは愛する人に届くことはなかったのだ。
その代わり、死の淵から蘇った彼女には新たに得たものが幾つかあった。
まずは、不死身の身体。
次に、フランフランが行っていた邪悪なる研究施設。
最後に…“狂気の科学者“と言われたフランフランの狂った知識。
それら“禁断の果実“を手に入れてしまったミクローシアは、見失いかけていた新たな目標を見つけることに成功する。彼女は…自身の歪んだ想いを叶えるために、あらゆる手を尽くし始めた。
最初にミクローシアが試みたのは…アンクロフィクサとの間に子供を作ることだった。
幸いにもフランフランは様々な人たちの遺伝子を隠された研究施設に所有していた。アンクロフィクサを筆頭に、グイン=バルバトスやフランフラン自身の遺伝子、さらには切断された七大守護天使『断罪者』ゾルディアークの右腕、魔戦争で死した『魔獣王』ガーガイガーの死骸など。
ところが、何度自分の遺伝子とアンクロフィクサの遺伝子を組み合わせようとしても…なぜか上手くいかなかった。フランフランの遺した研究をどんなに駆使しても、ミクローシアの遺伝子とアンクロフィクサの遺伝子は融合しなかったのだ。
ミクローシアは絶望した。自分とアンクロフィクサは子供を残せないのかと。
だが、絶望の淵に沈んでいた彼女は…ふいに気づく。
そうか、子供が無理なら…本人を甦らせればよいのだ。
その歪んだ想いは…やがて別の方向へと変化していく。
ミクローシアは一度死にかけたときに、この世とあの世を繋ぐ『冥界の門』の存在を知った。
しかも、幸か不幸か…アンクロフィクサの持っていた能力のうちの一つが『扉』の能力だった。
魔族をこの世界に呼び寄せる魔本『魔族召喚』を創り出した彼の能力を、彼の遺伝子を継ぐ子供で再現できれば…この世とあの世を繋ぐ『冥界の門』を呼び出し、アンクロフィクサをこの世に呼び戻すことができるのではないか。
そんな…夢のようなことを考えてしまったのだ。
最も不幸だったのは、ミクローシアに…それらを実現するだけの知識と環境が備わっていたことだった。
ゆえに彼女は…普通の人間だったら諦めるであろう“死者の復活“という世迷い言に全てを捧げることとなる。
ミクローシアは、アンクロフィクサ復活のために必要なものは、“扉“と“鍵“だと考えた。
ゆえにまずミクローシアは、この世とあの世を繋ぐ『冥界の門』を召喚する術者を作ろうとした。
これについては、アンクロフィクサと魔王グイン=バルバトスの遺伝子を掛け合わせることで、素質を持つ赤子を生み出すことができた。
ミクローシアはその赤子に“ディアマンティーナ“と名付け、『器』と呼び大事に育てた。
次に“鍵“だが、残念なことに鍵に関係しそうな『天使の器』は持っていたものの、その素質を持つ魔法使いは簡単には見つからなかった。
そこでミクローシアは、単に術者を探すだけでは飽き足らず、片っ端から“魔力覚醒者“を生み出すことにする。
このとき最悪だったのは、彼女にとって“魔力覚醒者“とは…天使でも悪魔でもどちらでも良かったという点だ。術者を効率的に見つけるために、彼女は手段を選ばなかった。
ミクローシアは、“鍵の能力を持つものを探す作業”に平行して、『魔薬』と言われる禁断の薬をばら撒くことで、無理やり“悪魔“を増産した。
さらには“失敗作“…鍵の能力を得られなかった配下を使って人を集めさせ、世界に混乱をばら撒いた。目的はもちろん、“鍵“を探すため。
悪事を働けば、それを解決するため天使が現れる。その中に…目的の“鍵“がいないかと考えたのだ。
だが、手段を選ばず”鍵”を求め続けた結果、ミクローシアの悪事はついに露見してしまうこととなる。
それは…ほんの偶然だった。
ミクローシアの母であるデイズ=カリスマティックが、彼女の秘密の研究所を発見してしまったのだ。
激しい戦闘の結果敗北したミクローシアは、大事に育てていたディアマンティーナをデイズに攫われるだけでなく、自身もデイズの魔法により長い時間封印されてしまう。
デイズの施した封印は、本来は永遠の時間彼女を封じるものであったが、ミクローシアは5年でなんとか脱出した。
その後デイズ殺害に成功したものの、その際にまたしても深いダメージを負ってしまう。
この一連の出来事は、ミクローシアに大きな反省を与えた。目立ちすぎるのも良くないと気付き、より慎重に裏方に徹するようになるキッカケとなる。
以降彼女は、ディアマンティーナを泳がせることにした。加えて、これまでより慎重に…闇の中に潜り混み、“鍵“を探すことになる。
結果的にこれが正解であった。
ダメ元で“鍵のオーブ“をディアマンティーナに与えていたのだが、その作戦が…見事に的中する。ディアマンティーナのもとに、エリスという“運命の鍵“が現れたのだ。
こうして…20年以上の長い年月をかけ、ミクローシアの悲願は実現する間際までやってくる。
ここ…冥界に最も近い場所と言われる『グイン=バルバトスの魔迷宮』において、ミクローシアによるアンクロフィクサ復活の儀式は最終段階にまで到達していた。
だが…ミクローシアの手段を選ばぬ進め方は、この世界に数多くの悲劇を生み出していた。
そのしわ寄せが…ついにミクローシア自身に襲いかかろうとしていた。
******
「…封ぜよ!【霊体封鎖】!」
俺の目の前で、エリスが放った新たなる『天使の歌』が赤い魔法陣を伴って解放者へと襲いかかった。
だが、赤い魔法陣は解放者の横をすり抜けていく。外れたのか?いや違う、エリスの狙いは別にあった。魔法陣は、天井に張り付いたままのフランス人形…【荊棘の女王】に向かって突き進んでいたのだ。
赤い魔法陣が小柄な人形のような存在…【荊棘の女王】に激突した。
その瞬間、魔法陣は幾筋もの赤い光を放つ檻と化し、【荊棘の女王】を縛り付けた。
「ぐぅわぁぁぁっ!!」
苦痛の声を上げたのは、解放者だった。胸を押さえ、激痛に耐えるかのようにもがき苦しんでいる。
「エリスゥゥ!な、何をしたぁぁあっ!?」
「分からない?あなたの魂を、その不死身の能力ごと封印するんだよ!」
エリスがさらに魔力を込め、新たな赤い魔法陣を立て続けに放つ。エリスの魔法により、【荊棘の女王】はどんどんがんじがらめとなっていった。
「ぐぅぅ、これは…マズイ。このままでは封印されてしまうわっ!」
解放者が俺たちに初めて見せる恐怖と焦り。そして奴は…最終段階を取った。
赤い光の牢獄に囲われていた【荊棘の女王】の中心から、光る球のようなものが飛び出してきた。光る球は、そのまま解放者の身体へと近寄っていき、その胸の中に吸い込まれていった。
これは…もしかして解放者は、魂を自分の身体に戻したのか?
そのことは、とある重大な事実を指し示していた。
この瞬間から…解放者は不死身ではなくなったのだ。
「…これで、あなたの…不死身の能力は…封じた…よ」
大量の汗を流しながらそう口にすると、エリスはガクッとその場に膝をついて崩れ落ちた。恐らく…突然の《複数覚醒》によって全力を使い果たしたのだろう。俺はすぐに彼女を支えに行った。
「エリス!大丈夫か?」
「ええ、大丈夫。ちょっと…疲れただけ。アキ…あとはお願い…ね?」
「ああ。よくやったな、エリス。あとは俺に…まかせろ」
俺の返事に安心したのか、エリスはそのまま目を瞑ると気を失ってしまった。
本当によくやってくれたよ、エリス。
俺はゆっくりと…ティーナの横に彼女を横たえると、立ち上がって解放者の方に視線を向けた。
「うぅ…」
一方、魂を元の身体に戻した解放者は、苦しげに胸を押さえながら荒い息をしていた。久しぶりに肉体に魂が戻った痛みに耐えかねているようだった。
苦しそうに胸を抑えるこいつに、もはや不死身の身体は無い。そうなればあとは…俺の出番だ。
「…肉体を取り戻した気分はどうだ?解放者。いや、堕天使ミクローシア」
「ぐぅぅ…あなたたちは…とことん私の邪魔をするのね…うぅっ」
肉体を取り戻すとともに、痛みをも取り戻したミクローシアは、苦痛に顔を歪めながら俺を睨みつけていた。
だが、そこに居るのはただの人間。
みんなが…力を注いで、こいつの化けの皮を全て剥がしてくれたんだ。
「ミクローシア。お前は…多くの許されないことをした。その目的が愛するものの復活だったとしても、結果としてたくさんの人を不幸にし、数多くの命が失われていったんだ」
「…アキ…何が言いたいの?偉そうに…死んでいった人たちの敵討ちをするとでも?」
「俺は…亡くなった人たちの仇を討とうなんて、大それたことを言うつもりはない。
だけどな…俺は誓ったんだ。これ以上不幸の連鎖は起こさせないってな。
だから…ミクローシア、これからお前を討つ!」
――――<起動>――――
個別能力:『新世界の謝肉祭』
【魔眼】…『スカニヤー』発動。
――――<平行起動>――――
個別能力:『新世界の謝肉祭』
【右腕】…『シャリアール』発動。
――――<平行起動>――――
個別能力:『新世界の謝肉祭』
【左腕】…『ゾルディアーク』発動。
――――<同時起動>――――
状態変化:【古龍形態】発動。
ーー《多重起動:究極形態発現》ーー
俺の全身を、8つの光球が旋回し、右半身が龍化、左半身が白い聖獣と化した。
瞳には魔法陣が展開され、魔眼が発動する。
これが俺のとっておきの…”究極形態”だっ!
「…アキ、何なのその姿は…?それがあなたの…真の姿?
でも、もはやそんなこともどうでもいいわ。たとえ不死身でなくなったとしても…私はあなたたちを皆殺しにするだけの力を持っているのだから。
その力を…存分に味わうがいい。
…さようなら、【死出の抱擁】」
激痛に顔を歪める解放者が、俺に向かって渾身の攻撃を仕掛けてきた。先ほどと同じように、”黒い雨”、”波動砲”、”死の女神メフィストフェレスの抱擁”の三重奏が一気に襲いかかってくる。
だが…先ほどまでの俺とは違う。甘んじて解放者の攻撃を…受けたりはしないっ!
「弾け飛べっ!【流星雨】!」
まずは上空から降り注いでくる”黒い雨”に対して、光球から放たれた光線…【流星】が、流星雨のように乱れ飛ぶ。乱反射する光線が、頭上の雨を全て撃ち落とした。
続けてメフィストフェレスの口元から放たれた”波動砲”を前にして、俺は新たな技を発動させる。
「…龍魔法、【龍の咆哮】!」
気合いとともに、俺の口元から強烈な衝撃波が放たれた。襲い来る波動砲と激突し、一部分を弾き飛ばすことで容易に回避することに成功する。
よし、第二波までは防ぎきった!だが、まだだ…まだ”メフィストフェレスの抱擁”が残っているっ!
「…ゾルディアーク流格闘術『魔纏演武』!」
技の発動と同時に、俺の全身の筋肉に魔力が行き渡ると、筋肉にはち切れんばかりの力が溢れかえってくる。
これなら…いけるっ!
「うぉぉぉおっ!!」
俺は雄叫びをあげると、抱きしめるように襲いかかってくる死の女神メフィストフェレスの両腕を…全力で殴り飛ばした。まずは右腕、続けて左腕が、俺の拳によってはじき返される。
「なっ!?」
全ての攻撃を弾かれたことで、大きく身体を仰け反らせた死の女神メフィストフェレスの姿を見て、解放者は信じられないといった表情を浮かべながら驚きの声を上げた。
俺は間髪入れずに飛び出すと、勢いのままに…解放者に対して殴りかかった。
慌てた解放者が、腰に差した杖を抜き構える。だけど…そんなもん御構い無しだ!
「古龍の力よ、俺の右手に…《龍鱗剣》」
俺の右手が龍の鱗に覆われ、あっという間に鋭い一本の剣のような形に変形した。
右手を龍の力が込められた剣と化したことを確認した俺は、加速した勢いのままに…解放者に向かって斬りつけた。
バキャッ!
鈍い音と共に、解放者の持つ魔杖が真っ二つに折れた。さすがの超文明ラーム時代の遺跡も、龍の力には耐えられなかったようだ。
だが俺の《龍鱗剣》の威力はそこで止まることはない。そのまま…解放者の胸元を大きく斬り裂いた。
確かな手応え。
飛び散る鮮血。
解放者が初めて流した血は、俺たちと同じ…赤い色をしていた。
「ぐぅっ!ア、アキィィ!!」
胸元を押さえてよろめきながらも、解放者はなんとか崩れ落ちることだけは堪えていた。
体制を立て直し素早く俺から距離を取ると、死の女神メフィストフェレスを前に出し盾代わりにすることで、束の間の守りの体制に入る。
「まさか…私の【死出の抱擁】が防がれるとは…ぐぅぅ。やっと…此処まで来たというのに…」
「…無駄だ、解放者。不死身という要素が無くなったお前は…俺には勝てない」
「…アキ、あなたは何ものなの…?…化け物?」
失礼な、人を化け物呼ばわりとは。
まぁ確かに8発もの光球を纏わせて半龍半獣の女の子なんて、化け物以外の何物でもないのかもな。
「解放者、いやミクローシア。観念して、悪魔化を解除しろ。そして俺に『冥界の門』を閉じる方法を教えるんだ」
降伏勧告ともいえる俺の問いかけに、血を吐きながら解放者が激しく反応した。
「…『冥界の門』を閉じる方法を教えろ、ですって?ゲホッ…そんなこと受け入れられる訳がないでしょう?私がどんな思いで…ここまで辿り着いたと思っているのっ!!」
大怪我をして深刻なダメージを受けたはずの解放者の瞳が、暗黒色に染まり歪に歪んだ。
再びヤツの全身に、黒い魔力が満ち溢れてくる。
「…アキ、私なあなたを侮ってたわ。素直にその事実を認めるとともに、あなたを私の最大の敵として認め、最大の敬意を払いましょう」
ずずっ…
何かを引きずるような音と共に、死の女神メフィストフェレスが解放者の身体の中へと吸収されていく。
「そして…全力を以ってあなたを排除するわ。私の…『黎明の夢魔』の真の力でねっ!」
やがて…解放者とメフィストフェレスが一体となった。
現れたのは…禍々しい死の女神を纏った解放者ミクローシア。紅く染まるその姿は…暁に染まる堕天使のよう。
奴が言う通り、これが解放者ミクローシアの全力なのだろう。であれば俺は…こいつの”全力”を叩き潰してやるっ!
解放者ミクローシアの手に、紅黒い魔力が集まっていった。来るっ…!こいつが正真正銘、ミクローシアの最大の攻撃魔法だ!
「沈みゆく黄昏の光に染まって…死になさい、アキ!
…暁に染まれ、【災厄の光】!」
解放者ミクローシアの手から放たれた紅黒い光線が、渦を巻きながら俺に迫ってきた。狙ったものを確実に死に送るであろう、破滅を呼ぶ光。
だけど…俺はやられないっ!
この攻撃を防いでこそ、完全な勝利があるんだ!
俺は自身に喝を入れ直すと、魔力の出力を上げて迫り来る光線を全力で防御しようとした…そのとき。
俺の目の前を、突如なにかの影が横切った。
気がつくと、驚愕する俺の前に…何者かの姿が在った。
ギィィィン。
耳障りな音と共に、解放者の放った”死の光線”がその人物に直撃する。
だが…光線に貫かれたかと心配する間も無く、その人物が手にした剣を振るうと、驚くほどあっさりと光線を消し去ってしまった。
解放者ミクローシアの攻撃を防いだ人物の正体。
それは…白く光輝く剣を持つ、一人の”勇者”だった。
「遅くなってすまなかったな、アキ。約束通り…お前の剣となり盾となるために来たぞ」
退魔剣ゾルディアークという銘のついた魔剣を手に持ち、白い衣に身を包んだ青年がにこやかな笑顔を浮かべて俺に話しかけてくる。彼の姿を見て…解放者ミクローシアが驚愕の声を上げた。
「なぜ…あなたがここに居るの…レイダー!!」
そう、この土壇場において現れたのは…『英雄』レイダーだったのだ。




