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Part.Ⅷ

「はぁ~…やっと楽になった」

神崎は、首と肩をコキコキと鳴らした。

「よかったですね」

「もう、神社には行きたくないな」

「でも、中は清浄な空気でしたよ」

「中はよくても、そこまで行くのに体力がいるだろうが」

「…年寄り」

ボソリとアリサは言った。

「はぁ?!ちゃんと聞こえてたぞ!!そもそも、あそこに智恵の霊が居なかったなら、さっさと帰って来いよ!!」

ドキッとアリサは内心驚いた。

「いや…それは…そのぉ~…そう!周りを散策してたんですよ!」

「…ふ~ん」

ジト~っと神崎は冷や汗を垂らすアリサを見た。

(言えないっ!どれにしようか悩んでで遅れたなんて言えないっ!!)

そう、アリサは内心思った。

そして、この話を逸らす為に、アリサは大袈裟にある方向を指さした。

「あ!!ほらっ!神崎さん、見えて来ましたよっ!」

「そうだな」

(……こいつ…なにか隠してるな?)

と、内心、アリサを疑っている神崎だった。


◆◆◆◆◆


次に神崎とアリサが来た場所は奥多摩である。

東京から車で約一時間半。

神崎の車で、アリサはここまで来たのだった。

奥多摩は、東京都内とは思えない程、自然豊かな場所だった。

「初めて来ました」

「つか、俺の車まで出すとか…」

「仕方ないじゃないですか。私、免許持ってないですもん」

「そうですね…」


―バタン


と、お互い車から降りた。

二人が向かった先は、奥多摩湖。

奥多摩湖は、1957(昭和32)年に完成した人造湖である。

周囲を山に囲まれ、春の桜から新緑、紅葉(こうよう)、雪景色と、季節ごとに湖と山々の美しい風景が見られる場所として有名である。また、湖上に浮かぶ、通称“ドラム缶橋”を渡りながらの風景も楽しむのも一向の一つ。

神崎とアリサは、その奥多摩湖に向かうと辺りをキョロキョロと見渡した。

「まぁ、人はそこそこ、か?」

紅葉(こうよう)の季節ですからね」

「でも、どうやって探すんだ?」

「ん~…とりあえず、このドラム缶橋を渡ります。もし、智恵さんがいるなら、神崎さんに寄ってくると思いますし」

「また俺かよ……」

そう言いつつも、神崎はポケットに手を突っ込みながら、アリサとドラム缶橋を渡り初めたのだった。

周りの観光客は、ドラム缶橋の上で紅葉の写真を撮ったりしていた。

神崎は紅葉をボーッと見て、ふと、思ったことを口に出した。

「あ~…紅葉(もみじ)に癒されてぇ…」

「今、見てるじゃないですか」

「こっちの紅葉(もみじ)じゃねーよっ!兎の紅葉(もみじ)!!」

「あ、そ」

「…………。」

一瞬、イラっときた神崎だったが、それも束の間だった。

「きゃあああああ!!!」

という女性の悲鳴が聞こえてきた。

しかし、その悲鳴に気づいた人間はいなかった。

いや、正確ぬは一人いる。それは、アリサだ。

そう、その悲鳴はアリサしか聞こえていなかったのだ。


ドラム缶橋の真ん中辺りまで来ると、神崎は身体が少し重く感じたのだった。

「お…お?」

「釣れましたね」

「マジか?!」

アリサは、コクリと頷くと神崎の背中を見た。

「女性が一人います。今、取れない~って、もがいていますね。」

「いや、説明はいいから名前聞けよっ!」

アリサは、辺りをキョロキョロ見回した。

そして、神崎の側まで寄ると、顔を神崎の耳元に近づけた。

「!!!」

神崎は一瞬驚いて身を引いた。

「なっ?!」

「貴女は、立花智恵さんですか?」

「…………へ?」

(…あ。霊に言ってるのか)

その後、神崎は自分の羞恥に耐えきれず顔を片手で隠したのだった。

勿論、端から見るとそれは恋人同士の触れ合いみたいに見える。

これを技とやっているのか、ただ単に、周りに人がいるから注意してやったのか・・・それは、アリサ本人しか解らない事だ。

技とやっているのはあり得ない…と、神崎は思ったのだった。


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