Part.Ⅶ
∬
神崎とアリサは水族館を出ると、次に神社にやって来た。
「ぐ……ぐぅ……」
神崎は、体が重たく猫背にしてアリサの肩に掴まっていた。
「お…重……い…」
「神崎さん、肩が痛いです」
「なら、助けろっ!!」
アリサはため息をつくと、神崎の肩をパパッと払った。正確には祓ったが正しい。
すると、神崎の体は軽くなった…が、また、急激に重くなり猫背に戻った。
「さ…さすが…じ、神社…だな…はぁはぁ…」
「そうですね。神社は社殿の中に入るまで人の念と負が集まる場所ですから。自然と霊も集まりますし」
「は、はやく…済ませ……む、無理…」
神崎はそう言うと、神社の近くにあるベンチに座った。
「こ、ここで…待ってる…から…」
「わかりました。直ぐ戻ります」
神崎は、返事をするのも苦痛らしく、弱々しく手で返事を返した。
◆◆◆◆◆
アリサは、鳥居を潜り抜けると神社の辺りを見回した。
さすが、神社と言っていいだろう。
中に入ると、外と違って清らかな清浄な空気が流れていた。
「流石に…ここにはいなさそうですね」
そして、アリサは引き返そうとした……が、その瞬間、アリサは目を見開いた。
そう、目についてしまったのだ。
神社の隅で売られている、どんぐり飴に…。
アリサは、ふらふらと誘われるかのように、その出店に歩み寄った。
そこで、ハッとした。
「いやいや!神崎さんが待ってるじゃないですかっ!駄目駄目っ!!」
そして、チラリと横目で出店を見た。
「あぁ…でも……気になるなぁ…。あぁ!駄目駄目っ!!」
アリサは、欲望を振り払うかのように頭を左右に激しく振った。
そして……………。
◆◆◆◆◆
「お待たせしました」
「お…おう…」
「ほら、行きますよ」
「ちょ…か、肩…貸して…」
アリサはため息をついた。
「仕方ないですね。ここを少し離れたら、また、祓ってさしあげすよ」
「…た…助かる……」
「……………。」
アリサは、鞄をギュッと握った。
そして、チラリと鞄の中を見た。
「……えへっ」
「…あぁ?…な、なんか…言ったか…?」
そこでアリサはハッとして首を振った。
「い、いえっ!何も言ってませんっ!!」
「ぐ…ぐぐう……」
アリサが見ていた物。
そう、それは、ビニール袋に沢山入った色とりどりのどんぐり飴だった。
アリサは神崎にバレないように、どんぐり飴を鞄の奥底に隠して、神社付近を出たのだった。




