Part.Ⅵ
∬
神崎とアリサが次に来たのは、水族館だった。
神崎は、水族館前で立ち止まっていた。
そして、周りにいる水族館に来た客を見た。
周りは、家族、友達、そして何よりもカップルが多かった。
「……なぁ…俺達…場違いじゃないか?」
と、神崎は隣にいるアリサに言った。
「場違い、でふか?」
「あぁ…って、お前、何か食ってるしっ?!」
いつの間に買ったのか、アリサは生クリームと苺が乗ったクレープをモグモグと頬張って食べていた。
神崎は、少し呆れてアリサを見た。
「お前…いつの間に買ったんだよ……てか、何か見てたら腹減ってきたし」
「あげませんよっ!」
「いらねーよっ!早く食って、さっさと次行くぞ」
「へ?!ま、待ってくださいよっ!」
アリサは、慌ててクレープを食べ終え口元をナプキンで拭うと、先にスタスタと歩く神崎の背を追いかけて行ったのだった。
◆◆◆◆◆
アリサは、水槽に手をついて目を輝かせながら魚を見ていた。
「ほ、ほわわぁ~」
(おいおい、なんか、当初の目的忘れてねーか?)
と、神崎は内心思ったのだが、小動物の如く楽しそうな顔をするアリサを見ると
(ま、いっか)
と思ったのだった。
なんだかんだで、アリサに甘い神崎である。
「か、神崎さん!見て下さいっ!鮪ですっ!あ、あれは、ヒラメ!鯛!」
「はいはい」
「は…はわわぁ~、どれも…美味しそうですねぇ」
「って、そこかよっ?!」
「え、違うんですか?」
「いやいや、全然違うしっ!!つか、ここでも食い物かよっ!」
「甘い物もいいですけど、海鮮もいいですよねっ!あ、海鮮丼食べたいですねぇ」
神崎は額に手を当て、深いため息をついた。
そして、先程思った事を撤回した。
(早く帰りてぇ……)




