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Part.Ⅴ


-翌日


アリサは、見た目洋書に見える鞄・・・所謂、洋書風鞄を片手に手に持ち、大学に来ていた。

「……なんで俺まで…」

その隣で、相変わらずだらしないスーツ姿の神崎が難しい顔をしていた。

「神崎さんが来るのは当然です。私一人で探すのは、めんどくさいじゃないですか」

「めんどくさいじゃねーだろっ!これは、お前の仕事だぞ?!」

「いつも、祓ってあげてるの誰ですか…?」

「…ぐ……い、いや、でもな、ちゃんと報酬は渡してっ」

「その報酬も遅れて渡すし、忘れたりする人誰でしたっけ??」

「……………。」

「………………。」


二人の間に、沈黙が訪れる。

そして、アリサはニコリと笑って

「さ、行きますよ♪」

と言ってた神崎の腕を引っ張ったのだった。


「…わかったよ…わかりましたよ、やればいいんでしょ、やれば…はぁ……。」


そして、神崎はチラリと腕を引っ張り歩くアリサの姿を見た。

今のアリサの姿は、紺色のジャンパースカートに、ウエストからふんわりと広がるスカートラインが可愛らしかった。

そして、ローウエスト位置にある、少し大きなリボンは、西洋のお人形のような印象を与えていた。

勿論、それをアリサが着た時点で更に人形度は増している。

まるで、人間になった美しい西洋人形と言ってもいいだろう。

神崎は、引っ張られてない腕で、頬をポリポリと掻いた。


(…まぁ…いつものあの服じゃないだけマシか)


アリサは神崎の視線に感じたのか、神崎をチラリと見た。


「さっきから何ですか。」

「いや、お前、珍しく私服着てるからさ」

「当たり前です。どうして、休日まで制服を着ないといけないんですか。」

「まぁ、そうなんだけどさ。てかさ、その服……お前の趣味?」

「は、はぁ?!何なんですか、急に?!」

「いや…何か気になって」

「………これは…祖父が選んだ物です…」

「へぇ~」

「私は、もっと普通のでいいって言ってるのに…お祖父ちゃんが……」


可愛らしい頬を、ぷく~っと少し膨らませてアリサはボソリと言った。


(おいおい…その顔やめろよ…あぁ…ほらぁ~、更に他の奴らがお前のこと見てるし…)


そう、神崎とアリサが大学を歩いていると、必ずと言っていいほどすれ違った人間は二度見する。

それも主にアリサをだ。

神崎は、ため息をついてアリサを凝視する男子学生をジロリと睨んだ。

男子学生は小さな悲鳴を上げ、その場から逃げて行ったのだった。

しかし、神崎は気づかなかった。

神崎も、また同じく、女子学生にチラチラ見られていることを…。


「で、今は何処に向かってるんだ?」

「大学にある美術室ですね。智恵さんは、絵が得意でよくそこで絵を書いていたらしいです。」

「へぇ~」

「この大学が出会いの場だったらしいですよ」

「青春だね~」

「神崎さんは青春しなかったのですか?」

「え?俺?う~ん…」

そう言うと、神崎は顎に手を当て思い出していた。

「ほら、だって、今も周りの女の子達が神崎さんの事見てますよ?」

「は?」


(いやいや、それ、お前もだろ…)


「まぁ、昔はそういうの興味無かったからな」

「昔…は??というと…今はある、と」

「え、いや、別にそういう意味じゃ…」

「ふ~ん。まぁ、いいんじゃないですか?」

「いや、だからね、アリサさん」

「あ、着きましたよ。ここですね」

「あの………はい、そうですね」


神崎は、キチンと説明しようとしたが、アリサがスルーする為、横でガックリと項垂れたのだった。

アリサは、第一校舎美術室と書かれたプレートの扉を開いた。

そして、中に入った。

中に入ると、美術独特の臭いが鼻についた。

そして、壁には色んな油絵、水彩画などの絵が展示されていた。

神崎は、壁に飾られている絵をマジマジと見ていた。


「は~、上手いなぁ」

「凄いですね」


アリサは辺りをキョロキョロと見渡した。

そんなアリサを神崎は横目で見ると

「で、なんかいたか?」

と言った。

アリサは首を横に振った。


「いません。」

「なら、他の所か」


神崎は、そう言いながら色んなスケッチブックをパラパラと見ていた。


「勝手に見たら失礼じゃないですか」

「いいじゃねーか…って、おい、アリサ、これ」

「何ですか?」


神崎は、一冊のスケッチブックを手にし、少し驚いた表情でそのスケッチブックの中身を見ていた。

アリサは、神崎が持っている物を覗き込んだ。


「ん?それ、美優ちゃんのお父さん…ですかね?似てますね」

「いや、そうだろ」

そして、神崎はそのスケッチブックに書かれている持ち主の名を見た。

相澤智恵(あいざわちえ)…か」

「それは、智恵さんの物だったんですか」


神崎はパラパラと、そのスケッチブックの中身を捲った。

智恵の基本とする絵は、水彩画らしい。中には、風景、花、物、そして、美優の父の顔が水彩で書かれていた。

どれも、優しい色遣いだった。


「きっと、優しい人なんですね」

と、アリサは言った。

「そうだな」


神崎が、そう言うとアリサは神崎の持っているスケッチブックを奪い鞄の中に入れた。

神崎は、それに驚いた。


「は?!お、おいっ?!」

「何ですか?」

「何ですか?じゃねーよ!お前、何やってるんだよっ!」

「何って…見たまんまですけど?」

「いやいや」


神崎は、額に手を当てため息をついた。

「お前、それ、ここの人に許可取ったのかよ?窃盗だぞ?てか、それどうするんだよ」

「美優ちゃんに渡します。お母さんの遺品でもあるので」

そう言うと神崎は、まだ何か言いたそうな顔をしたが渋い顔をすると、また、ため息をついた。

「……俺は何も見ていないからな」

アリサは、その言葉にキョトンとして、大きな深い青の瞳をパチパチとさせた。

そして、クスリと笑った。

「はい」

「なら、次、行くぞ。…はぁ……ほんと…なんだかなぁ…」



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