表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/15

Part.ⅩⅢ


-数日後



「で、そのスケッチブックには、何が描かれていたんだ?」

喫茶探偵事務所のカウンターで、アイス珈琲を飲んでいる神崎がアリサに言った。

「ですから、家族の絵ですよ」

「いや、それは解ったって。どういう家族の絵なのかを聞いてるんだよ」

「普通ですよ。三人が微笑んでいる絵です」

「ふーん」



―カランカラン



「お姉ちゃん!!」

「美優ちゃん、いらっしゃい」

ニコリとアリサは美優に微笑みかけた。

「ご無沙汰しています」

「お久しぶりです」

「はい。あの、これ、依頼費とお土産です」

「え?!お土産まであるんですかっ?!」

アリサは、紙袋二つ受け取ると嬉しそうな顔をした。

「有り難うございますっ!!」

「あの…本当に依頼費は、そちらの物で宜しいんでしょうか?」

「はいっ!(むし)ろ、こっちの方が嬉しいですっ!!」

「そ、そうですか?」

はは、と晃は苦笑した。

美優はというと、神崎の隣のカウンター席で眠っている紅葉を撫でていた。

「うさぎさん♪うさぎさん♪」

「ふ・・・この可愛さが解るとは、お前も見る目があるじゃねーか」

「美優も、あれからスッカリ元気になりました。今では、智恵の描いたあの絵を大事に飾ってあるぐらいですから」

「ふふっ、そうですか」

「写真でしか見たことない母親に名前を呼ばれ、触れられ、抱き締められた。それが最期でも、美優には幸せだったんでしょう。さて、そろそろ行かなくては」

「どちらに?」

「私達は、今、智恵との思い出の場所を巡っているんです。美優にも、同じ景色を見せようと思って」

「そうなんですか」

そう言うと、アリサは微笑んだ。

「美優、そろそろ行くよ」

「は~い」

「美優ちゃん、また来てね」

「うん!ばいばい、お姉ちゃん、おじちゃん!」


―カランカラン


そう言うと、美優と晃は店を出たのだった。

「お、おじっ?!あいつっ、また?!」

「まぁまぁ、いいじゃないですか」

アリサは、ルンルン気分で紙袋から箱を取り出した。

「で、今回の品は何なんだ?」

「ふ、ふ、ふ!今回は、羽田空港にあるホーニッヒアッフェルバウムです!!」

じじゃーん!と、箱からそれを取り出し(かか)げるアリサ。

「丸いな」

「はい!丸いバームクーヘンなんです!!しかも!!中には、林檎も入ってるんですよ!!」

「わ、解ったから落ち着け」

「食べるのがもったいないっ!けど、食べますっ!!」

「…それ、前も言ってたよな…」

「いただきま~す♪」


―パクリ


と、丸かぶりしたアリサに神崎は驚いた。

「お前なっ!フォークを使え、フォークを!!」

「ふぉれふぁ、ふぅへはっふぁんふぇふ」(訳:だって、これが夢だったんです)

「だ~か~らぁ、食い終わってから喋れっての!」



―モグモグモグモグモグモグモグモグ

モグモグモグモグモグモグ



「長いわっ!!」


―ゴクリ


と、口の中に頬張った物を飲み込んだアリサ。

「ふぁ~…お、美味しい~幸せ~ぇ」

ほわわ~と、幸せな顔をするアリサに、神崎は疲れきった表情で頬杖をついた。

「不思議だったんだけどさ。何で智恵は、美優に触れる事が出来たんだ?霊は、基本触れる事は出来ないはずだ。ここの物以外は」

アリサは、フォークで、小さく切り取ったバームクーヘンを口に放り込んだ。

「はむっ…もぐもぐ…そりぇはれすね~」

と、言いながらアリサは神崎の前に一枚の長方形の紙を置いた。

「なんだこれ?」

「ん、これは、お札みたいな物です。これを店の中に貼ると、短時間ですが、霊も人に触れられるようになるんでふ…もぐもぐ…」

「へぇ~、この紙がね~」

神崎は紙を持ち上げ、ペラペラと振った。

アリサは、それを神崎から奪い取った。

「大切な物なんですから、丁重に扱って下さいっ!」

「それ、何処で手に入れたんだ?」

「これは、私のお祖父ちゃんが作った物です」

「祖父さんが?」

「はい。もぐもぐ…もぐもぐ」

「……………」

(相変わらず、祖父さんの正体が解らん……)

と、内心思った神崎だった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ