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幸せの言葉

作者: 暢流

 低年齢層の絵本のような雰囲気を目指しました。

 あるところに二人の兄妹が住んでいました。お兄ちゃんのは明るくて何でもできるみんなの人気者です。でも妹である女の子は恥ずかしがり屋で家族以外の人にはなかなか声をかけることができませんでした。

 そんな二人はとても仲がよく、家の中で女の子はいつもお兄ちゃんの後をついて回っていました。でも人気者のお兄ちゃんは外ではいつもお友達に囲まれていて、恥ずかしがり屋の女の子はなかなかお兄ちゃんに近づくことができません。他に遊んでもらえる人のいない女の子はいつも一人で本をよんだりお絵かきをしたりしていました。

 ある日女の子はお兄ちゃんに聞きました。


「お兄ちゃん。どうしてリズにはお友達ができないのかなぁ。リズがわるい子だからだめなのかなぁ。」


 お兄ちゃんはいいました。


「どうしてそんなことを言うんだい?リズはかしこくて思いやりのあるとてもいい子じゃないか。リズに足りないのは勇気さ。」


「ゆうき?」


「そう、勇気だよ。明日みんなに会ったらリズから声をかけてごらん。きっと仲間に入れてくれるよ。」


 でもその言葉をきいた女の子は顔をくもらせて下を向いてしまいました。


「そんなことできないよ。みんなリズがきらいなんだ。」


 女の子はそう悲しそうに言いました。


「誰かがそんなことを言ったの?」


 お兄ちゃんがやさしくそう言うと女の子はだまって首を横にふります。


「じゃあどうしてそんなことを思ったの?」


 女の子はこたえました。


「だってリズはかけっこもおそいしボール遊びもへただもの。みんないやにきまっているわ。」


 とうとう女の子はその大きな目から大粒の涙をこぼしてしまいました。お兄ちゃんはそっと涙をぬぐってやさしくだきしめました。


「リズ。リーゼロッテ。僕のかわいい妹。かけっこが遅くてもボール遊びが下手でもそんなことは気にしなくていいんだよ。だってリズは本を読んだりお絵かきするのがとっても上手じゃないか。歌う声もとってもきれいだよ。僕のじまんの妹なんだ。だから何にも恥ずかしがることはないんだよ。」


 でもと女の子はいいましたが、その言葉はお兄ちゃんの立てた人差し指に邪魔をされて声に出すことはできません。


「リズにいいことを教えてあげる。」


 そういうとお兄ちゃんは“toiトイ toiトイ toiトイ”といいながらテーブルをコンコンコンとたたきます。


「がんばってのおまじない。これでリズはがんばってみんなに声をかけられるようになったよ。」


 お兄ちゃんはいたずらっぽく笑いながらそういいました。


「誰かに幸せになってほしいときや、がんばってほしいとき“toiトイ toiトイ toiトイ”っていいながら近くにあるものをコンコンコンってたたくんだ。きっといいことが起こるからね。」


 お兄ちゃんはやさしくそういって女の子の頭をいつまでもなでていました。




 次の日。女の子はお兄ちゃんに連れられてみんなの集まる広場にやってきました。いつも広場に来ない女の子を広場にいたみんなは好奇心いっぱいの目でみつめます。女の子は恥ずかしいのかお兄ちゃんの背中に隠れてなかなか出てきません。そんな女の子の背中をそっとおしてお兄ちゃんはいいました。


「ほらリズ。いっておいで。」


toiトイ toiトイ toiトイ


 後ろからお兄ちゃんの声が聞こえます。女の子もそう口の中でつぶやいてはじめの一歩を踏み出すのでした。




 その日も広場ではたくさんの子どもたちの笑い声がひびいています。その中には女の子の名前を呼ぶ声や楽しそうにそれにこたえる声もまざっていたそうです。


 toi toi toiはドイツ語でがんばってとか幸運をという意味の言葉で、結構日常的に使われているようです。

 教育テレビの朝の番組で流れていた曲をイメージして書かせていただきました。

 それでは皆様に幸運が訪れますように toi toi toi

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