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陽だまりの中にレツがいる。
レツが笑っている。
おいで、おいでと手招きをしていて、急いでそこに走っていくと、今にも弾けそうな笑顔で飛びついてくる。
レツを触れている?
そんな事、できるわけが無いのに。
でも確かに温もりを感じるし、手に触れている感触がある。
「誰にも渡さないよ。ボクだけの巫女」
耳元で囁く声に、ただ聞き惚れるだけで、言葉なんて出てこない。
まるで母親を求めている子供のようなレツを抱きしめる。
ずっとこうしてあげたいと思っていた。
何かを探しているようなレツを、いつか抱きしめて安心させてあげたいと思っていた。
やっとその夢が叶った。
甘ったるい幸福感で胸がいっぱいになる。
抱きしめて暖めてあげているのに、抱きしめられて暖められている気がする。
いくら甘えてもいいんだよって、言われているみたいに。
ずっと心の中にあった、満たされない思いが昇華されていく。
言葉なんて必要ない。
やっと私が巫女なんだって胸を張って言える。
だって、こんなにもレツに必要とされているんだもの。
クスクスと耳元でレツが笑う。
「サーシャは真面目に考えすぎるから辛くなるんだよ。少し肩の力を抜いた方がいい」
レツの肩にもたれかかり、暖かい陽だまりの中にいると、うとうととしてくる。
「今は安心しておやすみ、サーシャ」
誰よりも幸福な時間を過ごしている間、どんな事があったのか私は知らない。
ただ、気が付いた時には自分の部屋のベッドの中で、心配そうな顔をしたシレルの顔が見えた。