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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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全ての終わりの始まり

作者: 那瀬斗 赫
掲載日:2026/05/26



 途方も無い、悠久とも思える程に昔の、とある世界のとある惑星(ほし)


 そこには雲よりも高くそびえ立つ、巨大な樹が生えていた。その地に住まう人々は、その樹を中心として〝国〟を作り、暮らしていた


 その国では争いも喧嘩も無く、少しの犯罪はあったものの、とても平和で皆が毎日平和に暮らせることに感謝しながら生きていた。


 そんな国の端。草木の生い茂る森に囲まれた村に、とても好奇心旺盛なパンドラという少女がいた


 彼女は毎日何処かへと出かけては、必ず昼頃に泥だらけで帰ってくる。その手には石や木の枝が握られていたり、時には野性の動物と仲良くなり連れ帰ってきた事もあった。


 ある日、パンドラのお母さんはパンドラに聞いた。


「毎日何処へ行っているの?」


 パンドラはニカッと笑い、元気いっぱいな声音で「いろんなところ!」と答えた。


 パンドラのお母さんはひどく心配そうな表情で、「危ない事だけはしないでね」と伝え、パンドラを送り出した



 数日後


 パンドラはいつものように出かけ、5日に一度と決めている森の方へ出向いていた。


「この木何ていうのかな?」

「このお花きれい!」

「変な模様の虫!」


 草原や森は、パンドラにとって宝の山だった。何度同じ場所に来ても、毎回目新しい物に出会える。パンドラの好奇心を満たすための場所として最適だったのだ


 少し奥の方の方までやってきた。樹木が生い茂り、日光が遮られて少し暗くなっている。地面には草花、偶に茸が生えている。


「そろそろお腹減ったな〜」


 そうして帰ろうかと後ろを振り向いた時、とある物がパンドラの目に入った。


「あれなんだろう?」


 パンドラは小走りでそのナニカに近づいた


「んぅ〜?……箱?」


 そのナニカを持ち上げ、まじまじと観察するパンドラ。それは紫色で、銀色や金色の金具で装飾してある小さな〝箱〟のようだった。


 パンドラは開けてみようと、蓋に指をかけた。


「んっ……あかないなぁ」


 しかし、箱はギュッと力を込めても石で叩いても、投げてみても傷一つ付かず、開く気配は微塵も無かった。


「まぁ、いいや。ご飯ご飯♪」

「あ…んぅー……ちょっと待て重いけど、持って帰ればいいや!」


 パンドラは箱を開ける事は諦めたが、何故かその箱にとても惹かれ、持って帰ることにしたのだった。




 家に帰り着いたパンドラは、森で見付けた不思議な箱を母親に誇らしげに見せた。


「みてみてー!森の奥に落ちてたの!」

「まぁ!森のどこに落ちてたの?」


 母親は驚いた様子で、パンドラにそう聞いた。


「えーとねー、ムトおじちゃんの家の方の森の奥!」


 この「ムト」とは、パンドラを可愛がってくれている、近所に住んでいる男性のことである。


 ムトの家は東の方角にあり、そちらの方角の森は未開拓でなにか道がある訳では無い。森に好き好んで入っていき、探索をするのもこの村にはパンドラしかいない。その方角に人工物があるなどおかしな話だ。


「東の方じゃない。そんなところに落ちてただなんて。まさか、盗人が落として行ったのかしら?」

「でも、盗人が出たなんて話は聞かないわね。」


 パンドラのお母さんはそう思い至ると、パンドラがなにかマズい物を拾ってきたのかもしれないと言う思考は捨て、パンドラが喜び楽しんでいる様を見て微笑んだ


「ママー!お腹空いたー!」

「あら、それなら、ご飯にしましょう。もうできているわよ」


 二人は昼食を楽しんだ





 それから、十数年後。


 パンドラは箱とその中身への興味を捨て切れずあらゆる事を学ぶようになり、やがて研究者となっていた。


 そしてある日、ようやく箱が開かない理由を突き止めた。


 それは、力学について思考実験していた時の閃きと、それを明らかにするための実証実験により確定された。


 開かない理由。それは、謎の〝力〟が働いていた為だった。


 それが分かってから数年。その力の源と無力化の仕方について徹底的に研究が行われた。その研究の過程で、謎の力は何重にも掛かっており、一つ無力化しただけでは意味が無いと判明した。


 未知の何か


 パンドラは研究に研究を重ねた。結果、謎の力は目に見えず感じることもほぼ不可能なエネルギーにより発生していた事を突き止めた。


 更に研究が重ねられ、エネルギーが〝式〟を通して謎の力を発生させていることを突き止めた。


 パンドラは、その〝式〟によって起こす現象を〝魔法〟と、動力であるエネルギーを〝魔力〟と名付けた。


 それ以降、箱を開けるための研究は躍進した。


 箱に掛けられた〝魔法〟の式を解析し、その式を打ち消す〝式〟を構築する。それを何度も繰り返し、箱を開けないようにしていた魔法は次々に解かれて行った。


 やがて、最後の一つになった。そこで問題が生じた。最後の魔法の式の解析が行えなかったのだ。


 そこで、パンドラは式解析するのでは無く、動力である魔力の供給を無くしてしまおう、と閃いた。


 空気中に満ちている魔力を無くす事はとても難しかったが、「吸魔石」と言う、周囲の魔力を全て吸い上げ内に保持する鉱石を見付け、それを利用して無魔力空間を作り出した。


 そこへ箱を置き、1時間待った。魔法は解けていなかった。


 2時間待った。解けていなかった。


 4時間待った。解けていなかった。


 8時間待った。解けていなかった。


 1日待った。解けていなかった。


 3日待った。解けていなかった。


 やがて1週間、3週間、1ヶ月、2ヶ月。


 3ヶ月目の終わりになっても、魔法は解けなかった。


 その事にパンドラはなぜか激怒してしまった。


 論理もやり方も何もかも正しいはずなのに!なぜ!なぜ上手く行かない!!早く中に何があるのか知りたいのに!!!


 やがて、パンドラは倫理を無視し、箱を開くことに固執し始めた。


 仲間の研究者達をこき使った。八つ当たりをした。不眠不休で研究させた。もちろん、パンドラ自身も同じ事をした。


 パンドラの好奇心は〝執着〟へと変わってしまった。


 それがいけなかった


 箱の最後の魔法を解き、閉ざされた箱を開く条件。それは、強い強い執着だった。パンドラがまだ辿り着いていなかった方法を用い、箱はそれ以外の要因では開かないようにされていた。


 パンドラは鍵が全て開いた事に狂ったように喜び、とうとうついに箱を開いた



 それによって、国は滅んだ。


 箱の中からは、労苦、忘却、飢餓、悲歎、戦闘、戦争、殺人、紛争、虚言、空言、口争、不法、破滅、復讐、嫉妬、色欲、愛欲、傲慢、怠惰、強欲、不和、絶望、乱闘、殺戮、苦悩、非難、欺瞞、憤怒、虚飾、暴食、貪欲、懐疑、偏見、差別、滅亡、破壊、混沌、消滅、執着、愚鈍……様々な災いが飛び出した


 大勢の人が正しき心を見失い、争い蔑み貶め殺し合う、地獄がこの世に顕現した。


 人々は欲望の赴くままに魔法を利用し始めた。破壊し、奪う為に。


 それにより、やがて世界は取り返しのつかない所まで荒廃してしまった。


 雨が振っても消えぬ炎。毒に犯され踏み込むこともできなくなった大地。万物を溶かす雨。


 パンドラの住んでいた故郷の村は火の海となっていた。


 パンドラが、故郷が襲われたと聞いて駆けつけた時には既に全ての家屋が焼け落ちていた。


 パンドラは急いで母の居るはずの家へ向かった。


 家に着くと、家の前で半身を焼け爛れさせた母親が血を流しながら倒れていた。


 既に死んでいた。


 火の海の中、母親の亡骸を抱え、パンドラはようやく自分の心の間違いに気がつき、泣き崩れた。


「私の……私のせいでっ…!」 


 と、その時、服のポケットに入れていた箱から光り輝く()()()がゆっくりと出てきた


 光るそれはパンドラの視線の先に止まると、輝きを強弱させ、言葉を発した


『我が名は〝エルピス〟──希望と呼ばれるものだ。 箱より出してくれた礼に、貴様の望みを叶えてやろう』

「……私がいない世界…」

『我に世界を作り変えるほどの力は無い。此の先を、望む未来へと導くのみが関の山。希望とは、そういうもの』

「それじゃあ……私が壊す前の…平和な世界に………戻って欲しい…」

『……良かろう…いつか、果たそう…』


 そう言うと、エルピスと名乗った光は何処かへと飛んでいった


 直後パンドラは、村を襲った男に背後から刺され、命を落とした。


 間違いに気が付いたとはいえ、この事態を起こした犯人でもある。それを踏まえて今、パンドラの魂は何処で何をしているのだろう




 それから更に数年後、人は限界にまで堕落した。


 もう大地は、人の住める環境ではなくなっている。大半の生命が死滅してしまった。人間ですら、このまま行けば絶えるだろう。


 惑星(ほし)としては、それを望んでは居なかった。惑星(ほし)は地殻変動により人を滅ぼした。ほんの一握りの、正しき心を持った人々を残して。



 やがて人はまた栄えたが、振り撒かれた災いが消えることはなく、何度でも何度でも人は滅びと繁栄とを繰り返すこととなった。



 果たして、今我々が生きる世界、文明は()()()なのだろうか?




最後までお読み頂きありがとうございました


これは、頭の中にある構想の、始めの方の、ある意味での事の発端に当たるお話になります。

この先のお話はいつかお出しできたらなぁと思います。


それでは、またいつか!

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