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セカンド・ワールド〜女神救出から始まる物語〜  作者: 唯ノ蒼月
第1章 異世界転生

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第4話 女神の下へ

月光昇Side


外に見張りは居らず、また夜という事もあり闇に紛れて容易に都市へと侵入出来た。

都市と言うか集落か?建物はどれも古い建築だな。

特に特徴的なのはあの一際大きい建物だな。

にしても此処はかなり古い時代の様だな。

当たり前だが地面も舗装されておらず一部を除いて土の道だ。


さて、アリシア様が此処に囚われていると聞いただけで的確な位置は不明。

先ほど外からこの街を見て1番怪しいと思ったのは船を逆さまにしたようなあの特徴的な建物だ。

と言うことであの建物に侵入してみよう。

まずは巡回する敵に見つからないように移動をする。


「猫耳っ」


『昇は異世界から来たのだったわね、此処では獣人は珍しい物では無いわ、事が落ち着いたら私達の仲間の獣人を紹介してあげるわ。だから落ち着きましょう』


巡回する敵兵、その1人が猫耳と猫尻尾を生やしていてついはしゃいでしまった。

だって見ろよ、ピコピコって耳が動くんだぞ、偽物じゃ無いんだぞ。

にしてもあの猫獣人の娘もそうだがこの世界の女の子は露出が多くないか?

上は胸だけだし、下はホットパンツみたいなやつで殆ど下着みたいな服装なんだけど。

ほら彼処の狐娘も狼娘もそうじゃん。


「この世界はああいう格好が普通なのか……?」


『そういう訳では無いわよ、個人個人の趣味もあれば所属する組織とかでも大きく異なるもの。あの狐の娘や狼の娘を見てみなさい、羞恥で頬が赤いから』


「あ、本当だ」


ルナ様に言われた通り物陰からじっくりと2人を見てみると確かに頬を赤らめ両腕でそれぞれ胸や下半身を隠しながら周囲の警戒をしていた。

それに比べて最初に見た猫耳の娘はなんら羞恥を感じてなさそうだったな。

……あれ?あの娘何処行った?


「この辺から匂いが……はっ!?敵━━━」


俺が隠れていた建物の死角から目の前に突如現れた異世界人、それは最初に見た赤髪の猫耳娘だった。

おめでとう、これが神様を除く初めての異世界人との接触だ。


「うぉぉぉぉぉ!?」


「むぐっ!?」


叫ばれると思って急いで飛び掛かりその口と身体を押さえて後ろに周り物陰へと引きずり込む。

あ、焦った!後はこの娘を……いや待って力強いぞこの娘!?


『この娘、奴隷にされて無理やり従わされてるようね』


「いやルナ様呑気に観察してる場合じゃないですって?!」


ルナ様と言う言葉に過敏に反応した目の前の猫人族の娘は更に力強く抵抗してくる。


『落ち着きなさい、その娘に奴隷から解放すると言えば落ち着くわよ』


「ま、待て、話せば分かる!」


「むぐーーー!!!」


『話せば分かるじゃなくてその内容を話しなさいよ!?』


「お、落ち着け、奴隷ごふっ、奴隷から解放するから!」


「!」


話の最中に肘打ちを食らったがなんとか伝えきれた、そのお陰か彼女から抵抗の意思が無くなった。

ゆっくりと身体の拘束を解けば彼女は長い白髪を靡かせながらゆっくりと此方に振り向き直る。

赤い目が俺の目を見つめる。


(ルナ様)


『やるのは私では無くて昇よ』


(へ?)


『私の話はしたでしょう?この娘を奴隷から解放するのは貴方よ。私を助けた時に用いたジジイの針金があるでしょう?』


(はい)


『その針金を首輪の鍵穴に刺せば外れる筈よ』


(なるほど……)


確かにルナ様は奇跡をそこまで扱えないと言っていたし、奴隷解放が出来ないのだろう。

そこで役立つのがこの爺さんが与えてくれた針金という訳か。


「あの……まだですか……?もしかしてただの時間稼ぎ……!」


「違う違う、今から解放するから!」


長らくルナ様と会話してた事、傍から見ればただじっとしてる俺を見て時間稼ぎと捉えたらしい目の前の彼女が再び戦闘態勢に入ってしまったので急いで針金を鍵穴に差し込む。

すると彼女に掛かっていた首輪が何の抵抗もなく開き地面に落ちた。


「うそ……本当に取れた……」


自分の首をペタペアと触りながら足元に落ちた首輪を見つめる彼女。

女神であるルナ様の拘束を外したこの針金なら問題なく外せると思ってたがもしこれで外せなかったらどうしようかとドキドキしてた。


「私の名前はフィアナと申します。改めてお礼を言わせてください、ありがとうございました」


「気にしなくていい」


控えめな胸に手を添え一礼する猫獣人のフィアナ。

成り行きで助けたお礼を受け取る権利は無いだろう。


「いいえ、貴方様はこの先一生奴隷として生きる筈だった私を解放してくれた恩人です、例え助ける気が無かったとしても結果は変わりません。貴方様のお名前をお教え願えないでしょうか」


「ジョン、ジョン・ドゥだ」


『息をするように偽名教えたわね……』


ルナ様がツッコんでくるが仕方ない……。


「ジョン……ジョン様、良いお名前です……」


(ごめん、これ偽名で名無しって意味なの……)


『これは酷いわね……』


目をキラキラさせて見つめてくるフィアナに罪悪感を感じる……。


「ジョン様はどうしてこの地へ……?」


(教えても良いのでしょうか?)


『アリシア達女神側の娘みたいだし大丈夫よ』


「実はアリシア様を助けに来たんだ」


「なんと……でしたら私も何かお力に……!」


下手に断るよりは何か手伝わせた方が良いか……。

フィアナを助けた事だし他の娘達を何人か助けて撤退時の戦力を増強するか……。


「分かった、これからもう数人奴隷の子達を解放してアリシア様達救出後に護衛してくれ、アリシア様を救出したら残りの奴隷の子も助けるからその際どうしても無防備になるからな」


「分かりました!」


その後フィアナが他の奴隷の子達を数名呼び出し、その子達を解放して護衛してもらう事にした。

一気に解放しないのは時間の問題と目立つのを避ける為である。

少数ならまだしもここに居る奴隷全員を解放し連れて行くとなると間違いなく悪魔側に気付かれる、そうなったらアリシア様救出は難しくなるからだ。


幸いアリシア様の居場所はフィアナが知っておりその場所は最初に怪しいと思った特徴的なあの建物だった。

俺は急ぎフィアナ他数名の獣人の子達と共に目的地へ向かう。

勿論気付かれてはいけないから周囲の警戒をし、物陰に隠れながらであるがフィアナ達のお陰で接敵は簡単に免れた。

目的の建物内へと到着、だが正面からは行かない。

ではどう行くか、屋根へと登るんだ。

屋根に窓が付けられているのが確認出来たから屋根を登って窓付近まで目指す。


先頭を行くフィアナがそのまま窓から室内を見渡し手で合図を送る。

フィアナが先頭なのは索敵および道案内のためだ。


フィアナに続き窓から梁へと飛び乗りゆっくりと奥へと進む。

中では焚き火があり、その火の明かりが周囲を照らしていた。

話し声が聞こえ下を見てみれば囚われている者が居た。


『あれは……クロエ?』


(クロエ?)


『下で捕らわれている金髪ロングの娘が聖女クロエ。アリシアが認めた聖女よ、私がアリシア達を悪魔共に渡す為に彼女を捕まえ人質にしたのだけど……。そのせいで女神の祝福……力を受けられなくなって勇者達も含め士気の下がった女神側の軍勢はその多くが敗走してるらしいわ……』


ルナ様が原因故に流石に思う所があるようだ、声が暗い。

と言うか思った以上にこの世界ヤバいのでは……?

女神や聖女は此処で捕まってるし、勇者達も敗走してるってなると最早敗北寸前と言うか負け確では……?

クロエは後ろ手で縛られ布を噛ませられていた。

だが一緒の所に居るのは僥倖か。


「フィアナ、アリシア様救出後に下の娘達を救出する」


「分かりました」


梁を反対まで渡り柱から下へと降りる。

そのまま捕虜や見張りの者に見つからないよう地下へ行くための床板を押し上げ地下へと侵入した。


「暗いな……」


地下洞窟の中に明かりは無く、床板の隙間から辛うじて明かりが差し込むだけで俺達の行く先は真っ暗闇だ。


「ジョン様は魔術は……使えないですよね……?」


「ああ使えないが……」


どうしたものかと悩んでいたらフィアナがそう尋ねてきたので答える。


「申し訳ありませんが私達の魔術ではジョン様に暗闇でも目が見える魔術は掛けられません……皆練度が低く他人に付与出来ないので。そこで私がジョン様の手を取り案内します!」


「それは助かるな……頼むよ」


「はい!」


フィアナに手を引かれてゆっくりと洞窟を進む。

流石異世界、やっぱり魔術もあるようだ。

そうして進む事数分、奥から微かに光が見えた。

光の出処は洞窟内の開けた空間。

俺達は陰から開けた空間内を覗き見た。


見張りの者と同じ褐色の肌に黒い角が生えた者。


『あれが私達の敵、魔族よ、そして牢の中に捕らわれている娘達が』


ルナ様の言葉に視線を魔族から牢の中に移す、そこにはルナ様の時と同じく吊るされた美女が数名居た。


『━━━女神達よ』







女神アリシアSide


牢に入れられ鎖で繋がれた私。

神族最高戦力の一角であると言われていた姿はそこにはなかった。


「ルナ!どうしてこんな事をっ!」


思い出すのは親友であったルナとの最後のやり取り。

私はルナに嵌められたんだ。

ルナは我々神族を裏切り悪魔達へと寝返った。

その事を知らなかった私と妹のノルンは聖女クロエを人質にされルナに捕まり、こうして悪魔達の拠点にて囚われの身となった。


とは言え私やノルン、他の女神達もルナのことを恨んではいない。

ルナがリューヌを求めて寝返ったと知ったから。

そのルナも悪魔に嵌められ捕まり力を奪われていると悪魔の配下達から知らされた。

私は別にルナが無事ならそれで良かった、けれど現実はそんなに甘くなかった。


日に日に弱る私達、不幸中の幸いなのか悪魔が私達を深く絶望させる為にその身を穢すことは無く、今も純潔を散らさずに済んでいた。

だが私達の力を受けられなくなった勇者達が魔族との戦いに敗れたと聞いた。

それは勇者達による救出を望んでいた私達を深い絶望に落とすには十分だった。


「もうそろそろ妹くらい味わっても良いよなぁ?」


「ひっ!?」


1人の魔族が下卑た笑みを浮かべながら牢屋の鍵を解き扉を開けた、一緒に捕らわれている妹のノルンが悲鳴を上げる。


「やめろっ!相手なら私がする!ノルンに手を出すな!」


「お前はまだまだ力がある、そこで妹が穢される様子を見て憎悪を溜めておくれ。それが俺達の力になるんだから━━がっ!?」


此方に入り込もうとした奴の背に何かが飛び付き首を絞めた。

何かは分かる、人間だ。

絶望に染まった私達の前に現れた救世主はただの人族。

それも不思議な人間だった、魔力が一切無い、そして臆せず魔族に立ち向かう。

魔族は生まれながら莫大な魔力量を保有し、魔術の腕も人族より優れている。

故に魔族の相手は基本一対一は避ける人族なのだが魔力を持たない彼は立ち向かい続けた。

彼の後ろには数名の獣人族の子達が居た、格好を見るに魔族達に捕まり奴隷として戦わされていた様だが奴隷の首輪は見受けられない、彼が解放したのだろうか。

彼の方に視線を戻せば魔族の頭を掴み洞窟の壁に叩き付けていた。


「人間風情がぁ!」


「ジョン様ぁ!?」


「っ……!」


魔族の身体から魔力が渦巻く、長い赤髪の獣人の娘が叫び声を上げた。

妹達かもしかしたら私なのか、誰かの唾を飲む音が嫌に聞こえた。

それもそうだ、希望が潰えそうなのだから。


「ふっ!」


「がはっ?!」


「へ……?」


間の抜けた声は私の声だろうか、はたまたこの場の魔族と彼を除いた全員の声だろうか。

彼が魔術が発動する前に拳を叩き込み魔術の発動を封じてしまった。

それだけに止まらず彼は魔族の腕を掴み捻り上げて背後に回り、膝裏を蹴りつけ魔族のバランスを崩したかと思えば顔を掴みその後頭部を地面に打ち付けた。


「凄い……」


ノルン達からも声が漏れる、彼は人族でありながらも魔族相手に魔術も無く圧倒してみせた。

しかもあの動き、見たことの無い戦い方だった。

魔族が気絶しているのを確認した後、彼が此方に向かって来る。


「ルナ様、この方で合ってる?」


独り言の様に見えた、けれど彼の奥底に確かに親友(ルナ)を視た。


その後彼は私達を捕らえる鎖を神気を帯びたたった一本の針金でその鍵穴に差し込み助けてくれた。

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