『く』封印が1つだけ 解けてゆく
寒すぎたので、温かいお茶を、飲みながらお餅を食べることにした燈。
肩に乗っていた「肉ブラザーズ」ことトンカツとチキンも、一緒になって食べていて嬉しそうだ。
「はぁー、何しようかなー」
特にすることもないので、ノートとペンを持って観察日記を付け始めた。
2月△日
今日は、トンカツとチキンと散歩をした。
「これはただの絵日記だ。アホ、ブヒ」
「へ?」
「やっぱりこの人間は頭が悪い。コケ」
なんか腹立つ。
トンカツ(豚肉)とチキン(鶏肉)に茶々を入れられて、くそおーー!
大体さ、観察日記って何を、観察して書けばいいのよ。
燈はノートをポイッと放り出して、畳の上に寝転がった。
すると、神社の方からそよ風が吹いてきた。
冬なのに、まるで春のような温かい風が、燈の鼻先をかすめていく。
むくっと身体を起こし、
「肉ブラザーズ、行くよ」
「「に、肉ブラザーズ!?」」
トンカツとチキンはキョトンとしながらも、慌てて肩の上に飛び乗る。
燈はそのまま、神社の方へと向かった。
神社までの距離は意外と長い、走るには観光客だらけで走りにくい、人力車や出店、お土産屋さんを縫うように歩いて、ようやく巨大な鳥居の前までやってきた。
その鳥居の近くには、1000年も前から鎮座している大きな御神木があった。
「ここの木から、風を感じた」
「これは神気の木だな、ブヒ」
「神様が昔住んでいた木、ということだ。コケ」
神様が昔住んでいた木?
これを観察日記に書けば、もしかして……。
燈は真面目にその木を描き始めた、スケッチブックに描くように、ノートにさらさらとペンを走らせる。
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――1000年を生きた、その木の絵が。
突如として光となり、空へと溶けて消えた。
木は元のままそこにある。
燈は、空に消えていった自分の絵(芸術)を見上げて、
「あーーーーーーーー! 私の芸術が飛んでったぁぁぁぁーーーー!!」
思わず大声を出してしまった、海外の観光客が「What!?」と、驚いていたけれど、全力でスルーする。
ノートの紙は、たしかに1枚減っていた。
「やるな、燈」
――我の力、一つ元に戻りし。
ブタの言葉を、その絵に封印せよ――
「トンカツ……?」
「兄者!! 封印が一つ解けたコケ!!」
「ああ、四葉。この1000年の木のお陰だな」
「え? 封印? この右手に宿りし漆黒の蝶(喋)が、今空に飛んでったみたいなアレ!?」
「…………兄者。この娘、いつもこんな感じなのか? コケ」
「ああ、通常運転でそれだ。覚えておけ」
「ちょいちょいちょい! 肉ブラザーズ!?」
燈は腰に手を当てて、憤慨した。
通常運転とか言われちゃあね、私だってムッとしますわよ。
「まーさ。とりあえず、褒めてもらおうか、私を」
ニヤリとした顔で2匹を抱え、家路を急ぐ。
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「さ、なんか知らんけどさ。1つ封印が解けたってことで。私ひきこもるから、邪魔すんなよ、肉ブラザーズ」
ギロッと二人を睨んで、言い放つ。
手元には、チョコ棒、ポテチョ、プリン、スルメイカ、コーラ。
5つのお菓子と飲み物を完璧な布陣で並べた。
2匹を押し入れに閉じ込め……いや、閉じ込めただけじゃ可哀想なので、お菓子を少し分けてあげた。
「待ってろ」
そう言い残すと、燈はゲームのコントローラーを握りしめた。
さあ、ゲームの世界へ没入だ。
……まぁ、夜ご飯ができるまでの間だけだけどね。
作者の好きなゲームはポケモンです
皆様の好きなゲームは?




