『て』つかの間の一家団欒 日帰り旅行
~ 燈 家族旅行 ~
水無月一家。
おとん、おかん、燈、そして兄。
久々に4人が集まって、日帰り旅行に出かけることになった。
おかんは荷物の用意に、余念がない。頭痛薬と、お腹の薬、タオルハンカチ、ちょっとしたお菓子をバッグに詰め込んでいる。
おとんは出発するまで、テレビを見ていて、何もしないけれど、これは運転前の「準備(集中)」なのだ。
兄は、普段は大人しくて、優等生みたいな、ガリ勉野郎、けれど、4人で出かける時は少し私に優しくなる、そんな兄だ。
3月だから、少し離れた所へ、みんなでお花を見に行こうと、母が提案した、プチ家族旅行。
帰りは温泉に、入ってきたいらしい。
1日だけだけど、私もわくわくする。
小型ゲーム機をリュックに入れて、燈はちょっとだけおしゃれなスウェットに着替えた。
ワンポイントに、猫がついている、燈の中では「おしゃれ着」だ。
いつもおかんに「そんな寝間着みたいな格好してー」と言われるが、無視、無視。
だって、私が家族旅行に、ついて行くってこと自体、みんな嬉しそうだから。
渋滞の中、私は夢の中にいた。
トンカツとチキンと3人でいた。
色んな魔法が飛び交って、色んな妖怪が邪魔をする。
……なんかハチャメチャな夢だった。
おとん:「燈、着いたぞーー」
おとんに起こされて、ちょっと不機嫌になる私。
すると兄が、
兄:「ゲーム落としてるよ」
と、さりげなくカバンに仕舞ってくれる。
おかん:「さぁ、行くわよ。楽しみねー、お花!」
おかんが1番楽しそうで、何より。
3月に咲く花が咲き乱れる、大きな公園みたいな所だった。
ゲームが好きな私は、あまり興味をそそられないけれど、おかんが私の腕を引っ張りながら歩く。
おかん:「ほら見て、燈! 菜の花、チューリップ、梅……桜はまだね。4月に来たら良かったかしら」
おとん:「菜の花畑があるみたいだよ」
と、おとんが、パンフレットを取り出した。
兄:「あ、俺、ここの前のカフェでコーヒー飲みたい。な」
兄は、コーヒーを飲みたいらしい、私はアイスが食べたい。
おかん:「行きましょう? みんなでお茶しながら、お花を見たいわ」
おかんが先頭に立った。
おとん:「そうだね、行こうか」
その次におとん、兄も続いていく。
私はなんだか、照れくさくて、小石を蹴りながらみんなの後を、ついていった。
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~ カフェ The ミラクル ~
変な名前なんだけど、落ち着いた木のつくり。
外の風景に合っているし、屋根は赤色。
キャンプ場のログハウスみたいな造りをしたカフェだ。
おかんはカプチーノ。
おとんはアメリカン。
兄はアイスコーヒー。
私は、ホットドッグ1つとバニラシェイク。
何故ホットドッグかって?
寝たらお腹が空いたからだよん。
菜の花を見ながら飲める外のテラスは、白いテーブルに白い椅子。
まるでお姫様が秘密の花園でお茶してるような、いわゆる「映えスポット」だった。
写真を撮る若者パリピ軍団や、おじいちゃんにおばあちゃん。
家族連れで満員になりかけていた。
おかん:「綺麗な菜の花畑で、美味しいコーヒー……最高ね!」
おかんは、鼻歌を歌い出しそうな勢いでルンルンしている。
おとん:「これでビールがあればな。もっと最高なんだが。ははは」
おとんのこういうガサツなところが、割と好きだ。
母がいつも「もう、お父さんたら」と、愛しそうに笑顔でおとんを見る。
私達はいつも見て見ぬふりをする。
完全なるノロケ夫婦に、ちょっとだけ羨ましく、ちょっとだけ照れくさくて。
兄:「燈、ホットドッグ一口くれ」
兄はたまに「一口くれ星人」になる。
むろん、私はあげない。兄の唾がつくなんて嫌だからな。
燈:「やだよ。兄ちゃんも買いなよ」
バクッと一口大きく食べて、わざと「美味しい~」と誇ってみせる。
おかん:「お兄ちゃん、ほら。お金あげるから買ってきなさい」
それを見ていたおかんが、兄にお金を渡した。
兄:「やった! 行ってくる!」
無邪気に急ぎ足で買いに行く兄。
おとん:「お母さん、ちょっとトイレ行ってくるわ」
おとんも自由に行っちゃって、私とおかんの二人きり。
……ちょっと気まずい!!!
おかん:「燈、学校は楽しい? あんなに嫌がってた受験勉強、最後までやり遂げて行きたい学校に行けたの、本当にすごいわっていつも思ってるわよ」
気まずいのがバレたのか、母はこういう時に昔話やら話題を振るのが上手い。
「コミュ力おばけ」と密かに心の中で呼んでいる。
燈:「うん、まぁ悪くはないかな」
私は基本的に学校では一人で過ごすことが多くて、懇談会でいつも心配される。
話しかけてくる奴らはいるけど、そいつらに宿題をやらせていることは黙っておこう。
おかん:「良かった。もう3年生ね、あっという間。ふふ」
燈:「卒業まで1年か。赤点取らないようにするよ」
おかん:「お勉強、嫌いだものね。将来のことって何か考えてるの?」
おかんのトークは止まらない。早く帰ってきてくれ、おとん、兄!!
燈:「勉強は嫌いだけど……絵は学びたい。デザイン」
おかん:「いいじゃないそれ! お父さんにも言わなくちゃ」
おかんはとてつもない笑顔で私を見てくる。
照れくさくて下を向いていたら、おとんと兄が戻ってきた。兄は速攻でホットドッグに食らいついていた。
……よ、良かった。
おかんのことは好きだけど、中学の時、ゲームを取り上げられて反抗期になった私。
喧嘩ばかりして、よくお巡りさんのところに行って迷惑をかけたから。
今でも少し、照れくさいんだよな。
このことは、まだトンカツやチキンには話していない。
(ゲーム取り上げられたら、勝手に喧嘩するとか……。自分が「痛い」ことぐらい、分かってるし)
私達はお茶をして、菜の花畑や梅の花、展望台に登れる階段を上がって記念撮影をした。
帰りの渋滞は行きより穏やかで。
地元の温泉に浸かってから、家路へと向かった。
楽しかった。
色んなことがあり過ぎたから。
少し、リフレッシュできた。
~ふわふわと 心の中で 舞う花よ~
三葉神の俳句




