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指輪の魔法  作者: canceler
3/7

寝言は寝てから言いなさい

 4時間目が終わって昼休み。本来なら、転校生の周りには多くのクラスメイトが集まって賑やかな風景が繰り広げられているはずだが……一美の机に向かおうとする生徒は1人としていなかった。それは決して彼らが冷たいわけでなく、(実際は何人もの生徒が一美に話しかけようとしていて)一美が発する視認出来そうなほど濃い負のオーラがそうさせているのだ。彼女のこのオーラは、自己紹介が終わって1間目が始まってから今(昼休み)まで、途切れることは無い。授業中でさえ机に向かったまま俯いている姿は、教師も引いたくらいだ。その原因はというと……

 あぅ~、何であんなとこで転んだんだろ~。第一印象最悪だよ~。せっかく頑張って自己紹介の文章考えてきたのに~。

 やはりというかなんというか、朝の一件のことであった。

 そんな一美に声をかける生徒ゆうしゃがいた。

「どうしたの? 島倉さん」


「どうしたの? 島倉さん」

 一人で自己紹介の反省会をしていた私はそんな風にかけられた声に反応して顔を上げた。

「気分でも悪い?」

 声をかけてきたのは、ショートヘアにハーフフレームの赤い眼鏡をかけた子。自己紹介のときに突っ込みを入れてた子だ。でもどうして気分が悪いかなんて聞いてくるんだろう?

「大丈夫だよ。えっと…」

「そっか、名前まだ言ってなかったね。私は西條さいじょう 未来みき。未来って呼んでね。これからよろしく」

「うん。よろしくね未来ちゃん。私のことも一美でいいよ」

「わかったわ、一美。で、何かあったの? 悩みなら聞くよ」

 また聞かれた。

「えっ、私そんなに辛そうにしてた?」

 そう聞いたら未来ちゃんの顔が少し引きつった。

「一美、すごいどんよりとしたオーラを出してたよ。午前中ずっと」

「本当?」

 そんなに酷かったのだろうか。まぁ少し落ち込んでたのは確かだけど……

「ほんとだよ。みんな近づけなかったんだから。で、何落ち込んでたの?」

 三度聞かれる質問。

「えっとね、なんていうかね、今朝のことなんだけど……転んじゃったでしょ、私。恥ずかしかったな~って……」

「……えっと、それだけ?」

「そうだよ! だって私さ、前の学校ではよく転んだり失敗したりして友達に『一美ってドジだよね』とか『天然だよね』とかって言われてこの転校を機にそんなイメージを無くそうって決めてたのに……はぁ」

 自分で熱弁してまた落ち込み始めた一美を見て、未来は「あ~この子本当に天然なんだな~」と思った。

「わかったからまたそんな風に落ち込まないで、お弁当食べよ」

「……うん」

 その後は、(一美の雰囲気が普通になったので)クラスメイト達も一美に話しかけたり、一緒に食事してよいかと尋ねてきたりと、賑やかな普通の昼休みの風景になっていった。


 昼休みも残り10分ほどになって、私が未来ちゃんと恵子ちゃん(榎本えのもと 恵子けいこ 同じクラスで女の子にしては背の高いほう。テニス部に入ってるらしい)の3人でいると、2人の男子生徒が教室に入ってきた。

 1人は背が高くて顔の作りも悪くない、一見美少年っぽいけどどこか軽薄そうな感じがする。名前は……進藤君っだったはず。

 もう1人は、どこにでも居そうなこれといって特徴の無い人。あえて特徴を探すなら、髪が染めたように真っくろなところだろう。

 まるで対照的な2人。

「あの2人はこのクラスの問題児よ」

2人を見る私の視線に気づいたのだろうか。未来ちゃんがそう言ってくる。

「そうなの?」

「そうよ。今だって2人して職員室に呼び出されてたんだから。特に進藤――背の高いほう、あいつには気をつけなさい。バカだから」

 バカだから。うわ~言い切ったよ…恵子ちゃんも頷いてるし、と思っていると、

「バカとはひどい言われようだな」

 後ろから声がした。振り向くとそこには未来ちゃん曰く問題児が2人そろって立っていた。

「はじめまして、一美ちゃん。俺、進藤しんどう 徹也てつや。よろしくね」

佐上さがみ 啓介けいすけだ」

「こちらこそよろしく」

 話し方も対照的だな、この2人。

「おい未来! 転校生に悪い先入観イメージを植えつけるな!」

「初対面でいきなり『スリーサイズを教えてください』なんて聞いてる時点でイメージも何もないわよ! このバカ!」

 進藤君と未来ちゃんが言い争いを始めた。

「またっ、この学年トップの成績を持つ俺に向かってバカバカと連発しやがって…」

進藤君が学年トップ??

「はっ、寝言は寝てから言いなさい」

「すみません。寝てました」

 謝っちゃった。嘘なんだ。

 なんとなくほっとする一美だった。

 そんな一美を置き去りにしてますますヒートアップしていく2人。

「どうしよう……止めたほうがいいのかな」

 とりあえず一美は傍観している恵子へと助けを求めた。

「大丈夫だよ。いつものことだから。それに……」

「それに?」

「あいつが止める」

「2人もストップストップ。島倉が困ってるし、そろそろ予鈴だ」

 突然かけられた声は啓介のものだった。

「……わかったよ」

「……わかったわよ」

 素直に従う二人。

「あいつら3人は中学からの知り合いなんだ。特に徹也と未来は幼馴染。言い争いなんてあいつらにしたら挨拶みたいなもんだよ」

「へ〜」

 恵子の説明を聞いて、「確かにあの2人、なかなかにいいコンビだな」と、一美は思った。

どうもcancelerです。

第3話を読んで頂きありがとうございます。

すみません。魔法はまだ出ません。とりあえず啓介と一美の日常での出会い。次回は非日常での出会い・・・までいけるといいなぁ。

こんな拙い文章ですがこれからもよろしくお願いします。

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