第一印象が大事っ
5月6日。
ゴールデンウィークが終わって、なんとなく憂鬱な月曜日。
いつものように早起きをして、いつものように始業チャイムの5分前に教室に入った啓介を迎えたのは、
「啓介おっはよー!ひさしぶり!ゴールデンウィークは何してた?」
「徹也うるさい!もうすぐ先生くるんだよ!あっ啓介、おはよう」
テンションの高い級友たちだった。
「ああ、おはよう徹也、未来」
と言いつつ自分の席につくと、後ろの席の徹也が身を乗り出して話しかけてきた。
「なぁなぁ知ってるか?」
「知らないよ」
とりあえずうるさいので、出鼻を挫いてみがが、
「今日このクラスに転校生が来るんだぜ」
無視された。
「・・・・・・・・・」
「どんなやつだろうな?噂では女子って話だけど、かわいい娘だったらいいよな~」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
返事をしてはいけない。してしまったらまたいつもの繰り返しじゃないか・・・
「あぁ、楽しみだなぁ。早く来ないかなぁ」
もう少しの辛抱だ。もうすぐ終わる。前を向いていればいい。
「なぁ、啓介もそう思うだろ。思わないわけないよな」
「あぁもう!うるさい!般若のばばあが来ちまうだろ!」
そう振り向いて叫んだ後、激しく後悔した。つい我慢できず反応してしま・・・
「誰が『般若のばばあ』だって?」
背中に刺さる鋭い視線。冷ややかな声。徹也の顔を見ると・・・にやけていやがる。確信犯か、こいつ。
「ゴールデンウィーク明けで気が緩んでるんじゃないか?佐上」
恐る恐る振り返ると、この2-Aの担任、半田 麻里子が教室の扉のところで仁王立ちしていた。こめかみに浮かぶ青筋は自分の目の錯覚だろう。いや、そうであってほしい。そうじゃないんだろうなー。
「まぁいい。今日はやらなければならんこともあるしな」
「転校生の紹介のことだ」
後ろから徹也が囁いてきたのを聞いて、助かったぞ転校生!と、好感度を10ぐらい上げたところで、
「佐上と進藤はあとから職員室に来い」
と言われ、
「俺もですか?」
「あたりまえだ」
という徹也と半田のやり取りを聞きつつ、啓介は転校生への好感度を30下げた。
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勝手に好感度を下げられているなど思いもせず、教室の外では転校生の一美が、先生に呼ばれるのを待っていた。
あ~どきどきするな~。転校なんて初めてだもんな~。でもびしっと決めるぞ!第一印象が大事っていうもんね!よーし、やるぞ!私!
などと1人で呟いていて、人に見られたら第一印象が間違いなく「変な子」になる状態で・・・
「じゃあ、入って来い」
扉が開いて先生に呼ばれたのを確認した後、大きく深呼吸を1つして教室へと入る・・・・・・と同時に転んだ。盛大に。
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
沈黙。ちなみに、3つの沈黙は上から一美、半田、教室内の生徒である。
「・・・大丈夫か?」
沈黙を破ったのは、半田だった。
「・・・大丈夫・・・じゃない・・・です」
よろよろと起き上がって、そういった後一美は教室を出て行った。
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「はじめまして。島倉 一美といいます。種子島の島に倉敷の倉で島倉、一美は数字の一に美しいと書きます。以前は岡山のほうに住んでいて、父の仕事の都合でこっちに引っ越すことになりました。これからよろしくお願いします」
3分ほど教室の外で心を落ち着かせた後、
「仕切り直しです!」
と言って入ってきた後の自己紹介。
自己紹介としては100点満点なのだろうが、その前にあったことが響いているのか、気まずい空気の中に、一美の声が虚しく響いた。
ど~しよう、なんか変な空気だよ~。
と1人でパニックになっていると
「はいはい質問!」
男子の1人がてを上げていた。
一美は、この気まずい空気を変えるチャンスだわ!と意気込んで、
「はい!なんですか?」
「スリーサイズを教えてください」
固まってしまった。
「あ、あんた何聞いてるのよ!!」
隣の席の眼鏡の子が突っ込んでいる。
「進藤・・・」
担任の先生があきれている。
クラスのみんなはそれを見て笑っている。
どうやらこのクラスでは日常のことらしい。
空気も和んできたし、ちょっといい感じかも。
一美の予想通り、その後は普通の質問が少し出たほどで、無事(?)自己紹介は終わった。
cancelerです。
第2話です。話が進みませんでした。魔法の登場は5話・・・6話にはしたいと思います。
次回は昼休み。啓介と一美のファーストコンタクトです。
これからもよろしくお願いします。