13.異種格闘技
13.異種格闘技
パシュッーー!
はるか上の方から、人間の声とも何かの動物の発する音とも取れぬ掛け声が上がった。例のあの犬人間が俺を突き落とした三階から、こちらに目掛けて飛び降りてくるのが見えた。いつのまにか犬の頭が消えて人間の頭部だけになっている。クソッたれ、派手に俺を踏みつけようって魂胆か?プロレスでももう少し地味なものだ、遠慮をしろよ。
「オオオオォ!!」
掛け声と共に、ゴロリと横に転がって、犬人間の攻撃を回避した。ズドン!という音がして、半壊していた車がさらに破壊される。せっかく危機を知らせていた防犯ブザーの音も止まってしまった。飛び散る破片を身体に受けながらも、立ち上がって顔面を殴りつけた。みしりと顎の骨が砕ける感触が拳に伝わってくる。男の首があらぬ方向に曲がって、九十度真上を仰ぎ見る体勢になったものの倒れる気配がない。
パシュ!!
その時、犬人間の腰の辺りから尻尾のような何かが飛び出てきて俺の腹を貫いた。ヘソの横あたりに、同じような大きさの穴がポッカリを空いてしまった。お気に入りのゴミのにおいがするパーカーにも同じくだ。
「クソ野郎。一張羅に穴を開けやがって、お前の目玉と目玉の間にも、もう一つ穴を増やしてやる」
腹に刺さったままの尻尾を引き抜いたあと、そのまま両の手で握ってそれを引きちぎった。しかし、それを見ても犬人間は狼狽える様子はない、まったく涼しい顔だ。
パ……!
例の音が鳴る瞬間先んじて片腕を突き出した。犬人間の喉に手をかけてそのまま吊り上げる。手のひらに伝わってくる手応えが、首の骨を砕いた事を俺に伝える。
「何度も同じ手を喰ってたまるか。……さあどうしてくれようか」
腹の底から出る低い声で、俺はそう告げた。このまま首を引きちぎって、首がなくても動くのか見てみるか?それとも、もっと細かに引き裂いてやろうか。ひゅっと風を斬る音。犬人間の指先がそれぞれ鞭のように伸びて、突然俺の喉に突き刺さった。やりやがったな。ぱっくりと切り開かれた喉の傷口から声が漏れ出す。
「焼き尽くしてやる」
散々好き放題しやがって!こいつはもう許さん。処刑方法は決まった、火炙りだ。奴の首を締め上げている俺の手のひらが青白く光った。次の瞬間、犬人間の目玉と口から青白い炎が噴き出した。
「GYAAAAA!!」