三話 象はデカいです
三話 象はデカいです
蔵は広いスペースの中に一頭だけしかおらず、やや寂しい印象受けた。
「結構年寄りみたい」
象の展示スペースの前にこの象のプロフィールみたいなものが書いてある。象はなおみといって、この動物園のスターティングメンバーだそうだ。昭和の頃からある動物園なので、最低でも三十年以上は生きていることになる。
「女性の歳をああだこうだ言っちゃダメ」
ポケットから顔を出したエスパーダにたしなめられた。
「動物だよ」
「人間も小人族も動物でしょ。だから私に聞かなきでよね」
それが言いたかったようだ。だがエスパーダの年齢はだいたい見当がつく。大学を黒星達と卒業して数年。だいたい要と同世代だ。それ以上の追及にはからめ手を使う必要がある。
「じゃあ誕生日は? 聞いちゃダメ?」
「私は一月生まれだよ」
「誕生日ケーキには歳の数だけロウソクを立てて、願い事を思い浮かべながら吹き消すんだ。そうすれば願いが叶うんだって」
「ふーん、でも私言わないわよ」
「なんで?」
作戦がバレているのか。
「もう願いは叶っているもの」
要は混乱した。
「ほら、私と象の写真を撮って。今なら人がいないわよ」
「うん」




