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いずれ神に至る物語  作者: eyun
第一章:プロローグ
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異常な6歳児と森での修行

 帝歴342年8月17日


 ケイは6歳になった。

 5歳の時の、ヴェインとの武術の訓練から丸1年が経過していた。

 訓練はあの一回限りだった。

 あれ以来、ヴェインはやたらとケイを避けており、会話自体もぐっと減った。

 ケイの眼で見る限り、ケイへの嫉妬からのようだ。

 ヴェインはカナリアやカルナに付きっきりで魔力操作を教えており、ケイもそんなヴェインを全く気にせずにいた。

 父親が息子のケイを半ば無視している状態を、母親のカペラはどうしているかといえば、特別に気にしていなかった。

 カペラはヴェインにぞっこんのため、ヴェインの行動を全肯定しているのだ。

 

 ではそのケイは現在何をしているか。

 そう、森の中で犬型の魔物『ハーゲスト』から必死に逃げていた。


「くっそー、まだ追ってきてるよ。しつこいな。お前にはまだ勝てないから、あっちにいってくれ…」


 あれからケイは1人で森の中で修行しているのだ。

 ラックス村には魔物避けの結界が張られているため、魔物が村にやってくることはほぼほぼないが、村の近くの森は違う。

 森には低級であるが魔物が出てくるのだ。

 それも村の結界のおかげで、森の入り口から、奥にかけて段々魔物が強くなっていく仕様になっているのだ。

 まさに修行にうってつけなのだ。

 そのためケイは朝早くから夕飯時まで森に入って魔物と戦い、自身の魔力操作と身体強化を磨き、戦闘経験を積んでいくのが日課になっていた。

 以前ヴェインからまるで手切れ金のように真剣が買い与えられた。

 どう見ても自分で修行してこいと言わんばかりだった。

 5歳児(買い与えられた時点)に対する態度じゃないが、ケイは気にせず修行を始めたのだ。

 まぁ、ケイは妖刀黒桜こくおうがあるのでその真剣は全く使わずに、自分の部屋に隠しておいてるのだが。

 いずれその剣は売っぱらって金に代えてやろうと企てている。

 

 で、現在の描写に戻るが、『ハーゲスト』は犬型の魔物である。

 真っ黒な毛を持ち、真っ赤な不気味な眼を光らせている。

 額には紫色の角が生えており、そこから電撃を放って来るのだ。


「はぁはぁ…いつまで来んだよ…もう30分ぐらい鬼ごっこしてねぇか?」


 この『ハーゲスト』は低級の魔物の内ではかなり強い方で、今のケイでは勝てないのだ。

 そんな魔物に30分も追われ続けているので、流石のケイも疲れが見えてきている。

 そんなケイの目の前に崖が見えてきた。

 ちょうど反対側にも崖があり、普通の脚力では届かないほど離れていた。

 ここが好機と思ったケイは全体に纏わせていた魔力を足に集中させ、部分的に足を強化し、躊躇なくジャンプした。

 反対側の崖に何とか着地することができて、ケイはそっと息を吐いた。

 もしも魔力を全体に行き渡らせたままで跳んでいたら、決して対岸には届かなかっただろう。

 この1年の修行でケイはますます魔力操作に磨きがかかり、6歳児とは思えないほどの技術を身に付けていた。

 ケイがやってのけた部分的に集中しての身体強化は結構難しいのだ。


「ハァ、やっとあいつからもおさらば出来た。あいつに勝つにはいっそう身体強化をあげるしかないな。よっしゃ、やってやるぞ」


 そう意気込んだケイの側で枝が折れる音がした。

 ケイが眼を向けると、先程の『ハーゲスト』とは違う犬型の魔物が一匹出てきた。


「おっと、もう魔物に会ったか。まぁ、一匹の『ガルム』程度なら問題ないか」


 『ガルム』は『ハーゲスト』同様に黒い毛を持ち、赤い目をしているが、体長は『ハーゲスト』よりも一回りほど小さい。

 ケイが森に入ってよく出会うのが『ゴブリン』とこの『ガルム』なのだ。

 今までにも『ガルム』を何十体も狩ってきた。

 ケイは腰の妖刀黒桜を抜き、正眼に構えた。

 

「かかってこいよ。俺の戦闘経験値にしてやるよ!」


 ケイがそう言い終わると同時に『ガルム』はケイに飛びかかってきた。

 ケイは一瞬で足を集中的に強化し、『ガルム』の目にも止まらぬ速さで、横を通り抜け、同時に黒桜を首に振り下ろした。

 黒桜は何の抵抗も感じさせずに『ガルム』の首を切り落とした。


「流石妖刀黒桜。切れ味が凄まじいわ」


 そう言って黒桜の血糊を払い落とし、腰の鞘に納めた。

 ケイはまだ子供のため、十分に身体機能が成長していないが、魔力と妖刀を使いこなし多くの魔物を切り殺していた。

 

「出来れば早く黒桜の特殊能力を解放したいけど、いつになっても特殊能力がわかんないんだよなぁ。書庫の本を漁っても、あんまり妖刀は載ってないから、調べようにも調べれないし、困ったな…」


 ケイが空を見上げると、もう太陽がそれなりに沈んでいた。

 そろそろ切り上げて帰るべきだ、と判断したケイは森の出口に向かって走っていった。


  


「ただいまー」

 ケイが家に入るとちょうど他の皆が食卓を囲んで談笑していた。

「お帰りなさい、ケイ。今日も怪我はないようね。ご飯をゆっくり食べなさい」

 カペラがケイの分をよそおうとするのを、ケイ自身が止める。

「いいよ、母さん。俺は後で自分でよそって食べるから。皆は先に食べておいて」

 そう言い残してケイはさっさと2階の自分の部屋に向かった。

 ケイは両親が嫌いだ。

 ヴェインは女好きのネグレクト野郎で、カペラはヴェインの行動ならなんでもYESとしか答えられないヴェイン女。

 そんな両親から産まれたカナリアとカルナは、5歳ながらにケイを見下している。

 特にカナリアなんて、ヴェインが甘やかしすぎているので、スゲー我が儘だ。

 ケイがいくら人間性が欠けているといえど、そんな家族といたいとは全く思えなかった。

 異様な家族だ。


(強くなってこの家を出よう。そのためにもっと森で鍛えなくちゃな。今日の『ハーゲスト』との鬼ごっこは良い経験になった)


 1日を振り返って、ケイは決意を新たにした。


 

 

 


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