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いずれ神に至る物語  作者: eyun
第一章:プロローグ
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ヴェインの不満

 帝歴346年11月11日


 あれからミレーと家族たちは昼飯を食べ終わって、外でミレーが自身の剣術を見せているようだ。

 それが気になりもするが、まずは自分で昼飯を用意する。

 自画自賛だが、自分の料理は絶品だなとケイは思った。


 昼飯を食べ終わってから、外に出てみる。

 『武王』の剣術が見れたらいいなと思っていたが、どうやらヴェインが相手では彼女本来の剣術は見れないようだ。

 ただただヴェインが一方的にボコられていた。


「どうした!それで終わりか、ヴェイン!弱すぎるぞ。私が教えていた当時の方がよっぽど強いぞ」


 そう言って、彼女は自身のレイピアを振り上げヴェインを吹き飛ばした。


「ガハッ、はぁはぁ。相変わらずの…強さですね…」

「お前は何だ?私が教えた剣術が全く使えてないようだ。『冒険者』になって少しは名を聞くようになったから、強くなったと期待していたんだが…失望したぞ」

「ッ、はは、師匠が強すぎるだけですよ。俺も成長してますよ。才能ありますし」


 ミレーの言葉に少し息を飲んだヴェインが何とか言い返そうとする。

 しかしそれを聞いたミレーはいっそう失望したように首を振った。


「強くなり名声を得てから、色に溺れたな。あぁ確かにお前にはそれなりの才能があったが、努力する才能はなかったようだ、はぁ」


 ミレーは実に残念そうにため息を吐いた。

 それを見たヴェインは頭に血を上らせたのか、顔を真っ赤にしていた。

 そんな会話を聞いていた他の面々は、フェリルを除きヴェインに心配していた。

 その全員の様子を見ていたケイも失望したかのようにため息をつく。


(ヴェインのやつ、俺との一回きりの訓練の時よりも弱くなっていやがる。確かに家で剣をまともに振っているところを見た覚えもない。息子の才能の嫉妬して、嫌がらせをするだけで、自分は訓練も何もしてないとか、小さい男だ)


 ケイがため息を吐いたのを見たヴェインは、今度はケイに突っ掛かってきた。

 

「おい、ケイ!なんだそのため息は!父親にため息だと!?ふざけるな!」

「ヴェイン!自分の未熟さを息子に当たるな。みっともないぞ!」


 ヴェインの理不尽な激昂にミレーも注意するが、ヴェインは止まらない。

 まるで今までの不満をぶつけるかのように言ってくる。


「ケイ!お前は俺より才能がないんだよ。俺より弱いんだよ。たかが5歳で魔力操作が出来たからってなんだ。そのあとも努力を続けないお前なんな、雑魚に等しいんだよ。俺がくれてやった剣はどうした?一度も振っているところを見たことがないぞ?いつも森に入っているのだって、そこら辺の雑魚ゴブリン相手にいきってるからだろ!ハハハ、俺からしたらお前なんてそのゴブリンと変わりはしないんだよ。いつもいつも、俺を見下した目をしやがって。ふざけんな」


 ヴェインに同調するかのように、カペラもカナリアもカルナも、俺を見下した目をしてくる。

 そんなケイたち家族を見て、ミレーはしんそこくだらなさそうにしている。

 もうヴェインを止めるのも諦めて、ただただヴェインを軽蔑しきった目で見ている。

 フェリルはどうしたら良いかわからないのかオロオロしている。

 実にかわいらしい。

 そしてケイはヴェインの台詞に笑いを堪えていた。

 いや、堪えきれずに少し笑っている。

 それに気づいたヴェインがまたケイを叫んでくる。


「おい、何が可笑しいんだ。言ってみろ!」

「あっそう、じゃあ念慮なく。父さん、いや、ヴェイン。あんた、ブーメランって知ってるか?あんたの言葉は実に小物臭い。自分を省みていないカスの台詞だ。全く、こんなのが俺の父親だなんて思いたくもない」

「なッ、なんだと!殺されたいみたいだな、ケイ。上等だ、今ここで殺してやるよ」


 そう言ってヴェインが丸腰のままのケイに向かっていくのを、ミレーが瞬時に取り押さえる。


「バカか、ヴェイン。お前子供に何しようとしている」

「俺の息子なんだ。何したってあんたには関係ない!」

「愚か者が。いいだろう、現実を教えてやる。お前はケイの才能に劣る。比べるのがおこがましいほどに」


 そう武術の最高峰『武王』ミレー=カジュアに言い切られて、言葉を失っている。


「現実も見られないほど、愚かになったか…いいだろう、ちょうどよい。今からケイの才能を、私が直々に証明してやろう」


 ミレーはそう言って取り押さえていたヴェインを呆然と見ていたカペラたちに向けて放り投げた。

 そのままケイの方へ歩いてくる。


「ケイ、今から実践だ。ここでは戦うのに狭すぎる。用意してから、裏の丘に来い。お前たちも見に来い!ヴェインのような安い才能ではない。本物の才能を見せてやる」


 ミレーはケイと家族たちにそう伝え、裏の丘に移動した。

 ケイは準備するものといっても、妖刀黒桜を召喚するだけでなので、そのまま丘に向かった。

 そんなケイをどこか憎らしそうに見つめていた家族たちも渋々向かう。

 そんなみんなを見て、おかしなことになったと思いつつフェリルも移動する。

 かくして、ケイとミレーの戦いが始まるのだった。

 

 

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