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いずれ神に至る物語  作者: eyun
第一章:プロローグ
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異常な10歳と『武王』との出会い

帝歴346年11月11日


 ケイは前日まで森にこもっていたが、今日はかの『武王』がやって来る日なので、間に合わなかったじゃつまらないので早々に切り上げて帰ってきていた。

 ケイは柄にもなく楽しみすぎて、朝日が昇る前に起きてしまった。

 こんなに早く起きたので、いつも以上に朝飯前に時間がかけれた。

 ケイは1食分の朝飯を作った。

 誰もいない朝早くから、一人の空間で食べる食事は実に美味しかった。

 

 『武王』はお昼頃にやって来るそうなので、それまでは森で修行してくることにした。

 まだやって来るのに数時間あるのでちょうど良い。

 そう思い、すぐに森へ入っていった。

 

 森に入ったところで50m以上向こうに『ゴブリン』の集団を見つけた。

 

「はは、いいね。ここから仕留めれるかな。それが出来ればいっそう強くなれる」


 そう思いケイは黒桜(こくおう)を抜刀する構えをとった。

 フゥーと息を深く吐き、集中力を高め、魔力を素早くかつ強力に刀身に纏わせる。


万里繊月(ばんりせんげつ)


 そうして一瞬、ほんの一瞬、1秒にも満たない斬撃が放たれた。

 その瞬間、『ゴブリン』の集団は両断されていた。

 50mも離れていたら、『万里繊月』ももはや1秒も保つことは出来ない。

 それでもケイは、最速の抜刀と、最高のタイミングで『万里繊月』を放ち、一瞬で『ゴブリン』を切り裂いた。

 まさに神技だ。


「50m級の斬撃は初めて成功したな。はは、今日は実に調子がいい」


 ケイは森のあまり深いところで行かずに、見つけた魔物は手当たり次第、型の練習台にしていった。

 そしていつの間にか昼近くになっていた。


「そろそろ戻るか。もう少しで『武王』がやって来るな。楽しみだなぁ」


 ケイは急いで家に戻った。

 家ではヴェインとカペラが忙しそうに、昼飯の準備をしていた。

 ヴェインが家事を手伝っているの初めて見た。

 なるほど、やはり本物の『武王』が来るようだな。

 そうして幾時か経って、ドアがノックされた。

 ヴェインがドアを開けようとする前に、ケイは『識色眼(イーリス)』を使った。

 そして驚愕する。


(なんて『色』だ。まさか人間がこれほどの『色』が出せるとは…)


 ドアが開かれ、1人女性が入ってくる。

 金髪金眼のスレンダーながらに、美しさと気品さを持ち合わせている絶世のエルフがそこにいた。


「やぁ久しぶり、カペラ。そして相変わらずのクズのようだな、ヴェイン」


 そんな美人さんがいきなりヴェインに毒を吐いた。

 どうやら、ヴェインの女癖の悪さを知っているようだ。

 もっと言ってやれ。


「久しぶりです、ミレーさん。あなたは相変わらずお美しい。その美しさ、私にも分けてほしいわ」

「お久しぶりです、師匠。子供たちの前で毒吐くのやめてくださいよ…」

「ああ、すまないすまない。久しぶりなものだから、つい言ってしまった」


 そうやって3人は和気あいあいとしている。

 フェリルからはヴェインとカペラの友人と聞いていたが、どうやら違うようだな。

 どちらかと言えば、恩人みたいものか。


「おっと、すまない。子供たちに紹介がまだだった。私はミレー=カジュアだ。一応『武王』を勤めている。また『冒険者』であるレイドパーティーに属して、貴族の剣術指南役もしたことがある。よろしく」


 そうハニカミながら自身を紹介がしてくる。

 その雰囲気に当てられてか、フェリルもカナリアもカルナも、頬を真っ赤にして、目をそらしている。

 自己紹介をやって欲しいのだが無理そうだ。

 仕方がないのでケイからまとめて紹介することにした。


「どうも、はじめまして。そこのヴェインとカペラの息子のケイです。で、こっちの双子がカナリアとカルナです。髪の短い方がカナリアで、短い方がカルナ。最後にそんな2人の魔術の師匠のフェリル=スイハルメです」

「紹介をありがとう。何故かわからないが、初対面の人には緊張されてしまうのだ。3人とも緊張しなくて良い」


 そんなこと言いながらミレーは朗らかに笑う。

 それだけで3人の緊張が解れていく。

 とても独特の雰囲気を持っている。

 その雰囲気は決して悪いものではなく、逆に他者を引き付けるものだった。

 

(なるほど、これが『武王』か。強さだけでなく、人を引き付けるものすら持っているとは。それにこの人、武術だけじゃないな。この『色』は魔術師独特の色だ。剣だけでなく、魔術も一流とは恐れ入るな)


 ケイはミレーの腰にささっているレイピアを見ながらそう思った。


「ささ、どうぞ、師匠。お昼ご飯を一緒に食べましょう。うちのカペラのご飯は美味しいですよ」

「そうか、ならいただこうか」


 そう言いながら皆が食卓に向かうので、ケイはいつも通り食卓に向かわずに、自室に向かおうとした。

 そのケイに気がついたミレーが呼び止める。


「ケイ、君は一緒にご飯を食べないのか?」


 そんなことを聞いてくるので、両親に少し嫌がらせをしてみることにした。


「ええ、一緒に食べませんよ。いつも俺のご飯だけ作られていないので、一緒に食卓を囲むことはありません。いつも自分で作って食べてるので問題ないです。むしろ、母さんよりも俺の方が美味しいぐらいですよ、はは」


 そう俺が言った瞬間、家族皆の顔色が変わった。

 特にヴェインとカペラの顔色はひどい。

 真っ青になって、ミレーを見ている。

 ミレーはそんな二人をチラリと見てから、もう一度ケイに視線を向けた。


「ふーん、なるほど。あとからヴェインとカペラから話を聞くとしよう」


 その台詞を聞いたヴェインとカペラの顔色は青から白に変わった。

 実に面白い。爽快だ。

 話も終わったと思い、今度こそ自室に向かおうとした時。


「ケイ、君は『魔眼』で私を見ているようだけど、探られているようで少し不愉快だからやめてくれ」


 まさか俺が『魔眼』保持者だと気づかれるとは思わなかった。

 いちいち隙のない人だ。


「それは失礼しました。あなたの実力者がどれ程か探り終わったら、見るのをやめますよ」


 ケイはそう言い放って自室に向かった。



●ミレー=カジュア


「ヴェイン、カペラ、面白い子供を産んだようだな。彼、一目見ただけでも優れた才能を持つことがわかった」


 私はケイのことをそう分析した。

 彼は才能ある。

 私の雰囲気に飲み込まれないだけでなく、まさか私を探ってくるとは。

 実に面白い。


「はは、そのようなことはないですよ、師匠。愚息は俺の足元にも及ばないほどの才覚しかありません。気にしなくていいですよ」

「そうです、ミレーさん。兄はそんな優れた人物じゃないんですよ。あんな無能。無視すればいいんです」


 そうヴェインとカルナが言ってくる。

 はぁ彼らは何も理解してない。

 ふむ、ヴェインはケイへの嫉妬、カルナは親からの影響といったところか。

 逆に私は君らの方が無能に思えるがな。

 それにヴェイン、それが育児放棄の理由にはならないことを理解しているのか?

 相変わらずクズ野郎だ。

 今も変わらず女癖が酷いようだ。

 私が剣を教えていた頃から何も変わっちゃいない。

 大人になれない子供か。

 

「はぁ、もういい。それよりもご飯を食べよう。その後、私の剣術を少しだけ見せよう。ヴェイン、相手になれ」


 私がそう言うと、ケイの話がそれたのが嬉しいのか、満面の笑みで頷いてきやがった。

 この家族はダメだな。

 せめとも救いは、フェリルという娘がヴェインたちの言い方に眉を潜めていることだな。

 ヴェインの根性を叩き直すか。

 試合では忖度などせずに、圧倒的な実力差を理解させてやる。

 かつてヴェインは確かに武術の才能があった。

 当時は光るものがあると感心したものだったが、今は見る影もない。

 そんな落ちぶれたヴェインごときが、ケイを見下すことがあっていいのだろうか。

 いや、ダメだ。

 ケイの実力の程を分からせる必要もあるな

 そうだ、後でケイと手合わせしてみるのもありだ。




 

 


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