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いずれ神に至る物語  作者: eyun
第一章:プロローグ
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異常な10歳児と貴重な情報

第14話の技名を変えました。

『纏い迅雷風烈』→『宇迦御魂』

帝歴346年11月4日


 ケイは早朝の目が覚めた。

 昨夜焚いた火もとっくに消え、ひどく冷たい風がケイの体を襲う。


「うぅさぶい。俺の実力じゃ体を魔力で覆っても、さぶさを完璧に防げないな…さぶい…」


 魔力とは万能エネルギーだ。

 体を覆えばどんな所にも対応することができるのだ。

 しかし、その技術レベルは高く、ケイではまだまだ未完成なのだ。


「やっぱり、冬の森にこもるのは失敗だったか。いや、これも修行だ。以前よりは寒さを防げてるんだから、俺も進化してる。でも、寒い、寒すぎる。これだといつ雪が降ってもおかしくないな」


 ケイがそういった瞬間、目の前に雪が落ちてきた。


「マジか…マジで雪降ってきたよ。ヤバいな。積もる前に早く帰ろ…」


 ケイは身体強化をして、急いで家に向かって帰って行った。

 この森は広大さで有名な程なので、帰るのにも一苦労だ。

 そうして、途中出くわす魔物を斬っては、魔石と取り出しながら、何とか夕方に家に帰ってこれた。

 もう夕飯は終わっているだろう。

 この頃はケイの分のご飯はないので、自分で用意しなければならない。

 しかし、ケイの料理の腕前は相当なので、正直カペラが作る料理よりも美味しかったりする。


「ただまー」


 一応帰ったことを示す挨拶はするが、返事は一切期待していない。

 そそくさと2階の自室に入ろうとしたところで、フェリルに会った。


「お帰り。怪我はなかった?」

「ただいまです。別に怪我はないですよ。怪我するようなことはしないので。ただ遊んでいるだけですよ」


 そう言ってケイは嘘と真実を半々に伝える。

 怪我は確かに現在はない。

 しかし怪我をするような戦闘はしている。

 しかし、この頃は敵が弱すぎて半分遊び感覚なのは事実だ。

 そうやって嘗めてかかっていても勝てるほどには強くなったのだ。

 かつて『ハーゲスト』から逃げていた男とは思えないほどの成長率だ。

 ケイの言葉を文字通りに受け取ったフェリルは、ふっと頬を緩ませた。


「ケイ君、疲れていると思うけど、これから魔術の練習しない?」


 フェリルにケイを教える依頼はされていないが、度々そう言って、ケイに魔術を教えたがる。

 完璧にケイに対する善意だ。

 全く良い人過ぎて心配になる。

 どうやら、フェリルはケイのことを何故か手のかかる弟のように思っているのだ。

 彼女は現在21歳で、ケイは10歳だ。

 歳は離れているが、弟としてはあり得る年齢なのだ。

 そんなケイはそんなフェリルを気に入っていた。

 というよりは心配の対象なのだ。

 彼女はいろいろ無防備だ。

 前に彼女が風呂から上がってきたとき、部屋に服を忘れたからと言って、バスタオルを巻いただけで彷徨いていたのだ。

 ご飯を食べており、ちょうどそんなフェリルを見かけたケイは頭が痛くなる思いだった。

 ヴェインが見たら襲うぞ。

 

「すいませんね。今から夕食を作って食べて、寝ようかなと思ってるので、魔術の練習はまた今度と言うことで」

「また?前回もそうだったでしょ。何?一緒にしたくないの?お姉さんが優しく教えてあげるよ」

「あぁいいです。遠慮しときます。俺には魔術の才能がないんで、やるだけ無駄ですよ」

「またそんなこと言って。才能なくたって、覚えるべき魔術は沢山あるんだから、それぐらい覚えないと!」


 フェリルはプンスカ可愛く怒って来るため、全く怖くない。

 しかし、フェリルの言う通り、必要最低限の魔術は覚えた方が良い。

 でも、フェリルが知らないだけで、すでにケイは最低限は覚えていた。

 ならそれを伝えないのは何故か。

 単純にフェリルを信用してないからだ。

 別に教えるぐらい、いいじゃないかと思うかも知れないが、自分の手札はなるべく見せないのがケイなりの生き方だ。

 信頼できる相手にしか教えるつもりはない。

 まぁケイが誰かを信頼することがあるのかは疑問だが。


 適当に誤魔化しながら、部屋に荷物を起き、1階に降りて、夕食を作る。

 そこに何故かフェリルもついてくる。


「あのー、フェリルさん。もう夜遅いので寝たらどうですか?」

「まだまだ寝る時間じゃないよ。それよりも、私の分も作って!」

「何でですか?もう食べたでしょ」

「いや、食べてないよ。今日はケイ君の料理が食べたい気分なの!」


 時たま彼女はケイの料理をねだってくる。

 別に作る分には問題ないが、絡まれるのは面倒なのだ。


「まぁわかりましたけど、こうして一緒に食べるということは、何か俺に伝えたいことがあるんですよね。さっさと教えてください」


 彼女はケイと一緒に食べる時は大抵何か伝えるべきことを伝えてくるのだ。

 本来なら両親が伝えるべきなのだが、そんな気の利いたことを、あの両親がするわけないのだ。


「えー、つまんなーい。もっと話そうよ」

「ほらいいから。料理作りながら聞きます」

「はぁ、しょうがないなぁ」


 そう言ってフェリルは渋々要件を伝えてくる。


「1週間後、『武王』がこの家を訪ねて来るそうだよ」

「…へぇ、かの『武王』がねぇ。何かの間違いでは?『武王』はわざわざこんな家を訪ねるほど暇ではないでしょう」


 実際『武王』ほどの実力者になれば、あまたから引っ張りだこだ。

 毎日忙しいはずだ。


「本来ならね。でもね、なんでもその『武王』はヴェインさんとカペラさんの友人らしいの。その伝を使って、カナリアちゃんとカルナちゃんに本物の『武王』を見せてあげるんだって。向こうの『武王』もそれを了承してくれたらしいよ」

「もの好きな『武王』もいたものですね。しかし、本物の『武王』が来るとなると、俺も一目見たいですね」

「そう思うと思って教えたの。ケイ君、魔術よりも武術に興味があるみたいだし」


 フェリルがそう拗ねるように言った。

 確かに魔術よりも武術の方が圧倒的に興味がある。

 まぁいつもフェリルの誘いは断っているのに、『武王』には興味を示すのだから、フェリルが拗ねるのも無理はない。


「はは、ありがとうございます。1週間後が楽しみですねぇ」


 そういいながら、ケイは出来た料理を自身とフェリルの前に置く。

 その後はケイとフェリルは会話を楽しみながら、一緒に食事を摂ったのだった。


 1週間後のケイと『武王』の出会い。

 それがケイの人生にどう影響するのか、非常に楽しみだ。



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