表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いずれ神に至る物語  作者: eyun
第一章:プロローグ
14/17

異常な10歳と一流の条件

 帝歴346年11月3日


 ケイは10歳になった。

 ある1つの節目を迎えた気分だ。


 今日も変わらず森で修行している。

 もうこの森の魔物では相手にならず、単に覚えた型の試し相手程度にしかならない。

 いつかの地龍の時とような、命をかけて戦うことも最早あり得ず、ケイの冒険心を満足させるものはいなかった。


万里繊月(ばんりせんげつ)


 『葬送流剣術』の型の1つを繰り出し、『トロール』の首をはねた。

 『トロール』は中級の人型の魔物であり、並みの『冒険者』でも苦戦する、強力な魔物だ。

 なぜ苦戦するか。

 それは『トロール』が驚異の再生能力を持ち、魔術と武術を使ってくるからだ。

 そんな『トロール』の首をはねた『万里繊月』はケイの得意な型の1つだった。

 『万里繊月』のテーマは斬撃の拡張にある。

 この型は、魔力を込めるほどに魔力で刀身を作る。

 その反面、魔力を込めるほどに魔力刀身の持続時間は減少していく。

 しかし刀身に伸長に魔力を割かずに、魔力を切れ味の上昇に使うこともできる。

 ケイにとっては実に使い勝手の良い型だ。

 この型はうまく長さと繰り出すタイミングを合わせないと、刀身を伸長させたはよいが、敵に当たる前に刀身が消える可能性すらある。

 ケイも始めはよく失敗したが、森の魔物で練習するごとに上手くなり、今では十八番にすらなった。


「この型って直接的な戦闘だけでなく、暗殺とかにも使えそう。ヤバ、夢が広がるなぁ」


 そんな物騒なことを嬉々として呟き、周りの残った『トロール』たちも片付けていく。


「ブオォォォォッッォォ!」


 『トロール』たちが叫びながら迫ってくる。

 手に持つ棍棒が赤く光っている。

 基本的な武術の1つ、『斬撃強化』だ。

 これは武術の型ではなく、武術士が覚えるべき基本的な技だ。

 もちろんケイも使える。

 常に黒桜(こくおう)に自身の黒い魔力を纏わせて、強化している。

 基本的な技なので、そこまで強力ではないが、『トロール』の強靭な肉体から繰り出されると必殺になる。

 ケイは、そんな強力な一撃を軽々と避けた。


万里繊月(ばんりせんげつ)


 ケイに避けられ、隙の生まれた『トロール』の首をはねる。


「学習能力が乏しいな。さっきの『トロール』と同じじゃないか。はぁ、この森の修行は限界だなぁ」


 そして性懲りもなく向かってくる『トロール』たちに向かい、違う型を使う。


迅雷風烈(じんらいふうれつ)


 ケイの周りに、強烈な風は起こり、体と刀身が雷を纏った。

 ケイに一番近い『トロール』が理解したのはそこまでだった。

 ケイが目に止まらぬ早さで、『トロール』の首を切り落としたのだ。


「さて、残り6体。さっさと済ませるぞ」


 そう言うと、黒桜を構え、息を深くは吐き、魔力は高めた。


「『宇迦御魂(うかのみたま)』神速六斬」


 一瞬で6体の『トロール』の首が宙を舞った。

 すべての『トロール』は自身に何が起こったのかわからずに、一瞬で死んだのだ。

 斬られた首と胴体には、まるで雷に打たれたかの焼き傷だけが残っていた。


 『迅雷風烈』は自身の周りに魔力で風を起こし、高速移動の障害となる風の壁と熱の壁を無効化し、さらに自身の魔力を雷に

変化させ、体と刀身に纏わす。

 それにより、超高速移動を可能にし、一瞬で敵に近づき、雷で強化されたら刀身でなぎ倒す、一撃必殺の技だ。

 そう、この型は一撃なのだ。

 ではなぜ、6匹の『トロール』で一瞬で死んだのか。

 それは型の応用にある。

 本来型とは万人が使えるように規格化されたものなのだ。

 そのため型が使えるといっても、自分用ではないのだ。

 だから型を応用して、自分に適した型にするのだ。

 そうすることでいっそう強力な技になるのだ。

 自身の習った型をいくつか自分の型に応用してこそ、一流を名乗れるのだ。

 そういう意味では、ケイはもう一流の剣士に近づいていた。


 『宇迦御魂』とは、一撃必殺のために発生させた風と雷を数撃のために留める技だ。

 ケイは先ほどの『トロール』を、まず一体斬り捨て、その後、魔力で発生させた足場を蹴り、二体目、続けて三体目と斬っていったのだ。

 それ斬劇は瞬きの間で終わった。

 そのためまるで一瞬で6体が同時に斬られたように見えたのだ。


「あー、やっぱりこの技、体への負担が大きいな。体、重っ」

 

 強力な魔力を纏うため、体に無茶をさしているのだ。

 魔力もかなり使う大技なのだ。

 そう言いつつも、ケイは『トロール』を解体して、魔石を取り出していった。

 本当なら『トロール』の肉も美味しいため、回収したいところだが、一人では量的に無理なので、ここで食べるしかない。

 すべては無理だが、食べれるだけ食べておく。

 もう夕方を過ぎ、夜と言ってもいい時間帯だ。

 ケイはこの森に滞在して三日目になる。

 この頃ケイは家に帰らずに森にこもって修行していた。

 ケイの相手になる歯ごたえのある敵が、森の最奥にしかいないため、移動だけでそれなりの時間をくう。

 いちいち家に帰っていると時間が勿体ない。

 だから森にこもることにした。

 こんな魔物が発生するような場所で、なんの準備もなく寝るのは自殺行為としか言えないが、ケイは嬉々として森に止まった。

 そのような修行を続けているため、ケイはいっそう魔物の気配に敏感になった。

 魔力探知をするまでもなく居場所を特定できるようになったのだ。

 そんなこんなで、ケイはいっそう強くなっていた。


 では問題です。

 ケイの家族は、ケイを心配しているでしょうか?

 答えは簡単です。そんなわけがない。

 なんなら死んだ方が食いぶちが減るとまで思っていそうだ。

 しかし、フェリルは心配してくれる。

 以前一週間ほど戻らなかった時、彼女は自らケイの捜索を行ってくれていたのだ。

 そんな無駄なことに時間を使わせるのは流石に忍びなかったので、フェリルのみに森にこもるときは伝えているのだ。


「明日には帰るか。朝から走れば、夕方ぐらいには家に着きそうだ」


 そう思い、ケイは就寝した。

 




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ