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いずれ神に至る物語  作者: eyun
第一章:プロローグ
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異常な7歳児と遺跡探索

 帝歴343年9月15日


 ケイもう一度森の奥の遺跡に朝早くからやって来た。

 泊まり込みで遺跡にトライするつもりだ。

 家族には何も言ってないが、問題ないだろう。

 

 この遺跡は『ダンジョン』ではない。

 ダンジョンは自ら魔物を生み出し、まるで生き物のようであるが、この遺跡にはそんな様子は見受けられない。

 遺跡はかつての大規模な街の様相をしており、見渡す限りのレンガ造りの住居が並んでいた。

 ラッセル村の近くの街よりも遺跡全体の規模は大きいようだった。

 あの街も数万人が住んでいたのだが、それ以上となると、下手したら数十万人も住んでいたかもしれない。

 これほどの遺跡が今まで見つかっていなかったとは…

 住居に蔦が絡まっており、風化もひどい。

 こういった遺跡には何かお宝がありそうだが、これだけ広いと探索するだけで一苦労だ。

 そして、この遺跡に中央には巨大な城がたっている。

 あの城が結界の起点のようだった。

 ケイは城を最後に探索すると決めた。


「しかし、この遺跡はいつの時代のものなのか、全くわからない。考古学者が見たらヨダレを垂らすかもしれないほど、貴重な遺跡かもな」


 ケイはそんなことを思いながら、そこら辺の住居の中に入ってみる。

 何かあるかなと思い、ワクワクしながら入ってみるが、1つも、全く何も残っていない。

 動物どころか、虫一匹すらもいない。

 まるで誰も生きていなかったように感じるほどの殺風景な部屋があるのみだった。

 遺跡といっても何かしらは残っているものだ。

 例えば、その当時の人が使っていた道具。

 料理器具とかが良い例だ。

 そういったものは案外残りやすいものなのだ。

 それなのに何もない。

 家に入ってても、空の部屋ばかりだ。

 どの家を、どの部屋を探しても何もない。

 ただあるのは、中身のない家ばかりだ。

 

「古びた書籍とかあれば、いっそう盛り上がるのに、ホントなんもないな」


 そうして家を探索している内に昼になった。

 時間をかけただけ、骨折り損だが、ずっと歩き続けていたので、腹は減っている。

 一度森に出て枝を集めてから、魔術で火を着けて、持ってきた肉を焼いて食べた。

 

 さてとどうしたものか。

 無駄に広いため、探す所は非常に多く、時間もかかるが、何もなく、同じ光景ばかりなので面白くない。


「もう、中央の城に向かって見るか」


 そう思ってケイが立ち上がったとき、まさにその時、地面が揺れ、爆発するかのような大きな音が聞こえた。


 「なんだいきなり!」

 

 近くにあった家の屋根に登り回りを見渡すと、ケイがいる位置から遠く離れたところで、土埃が舞っているのがわかった。

 その土埃の中に、巨大な何かがたたずんでいる。

 土埃が止むとそこには巨大で圧倒的な存在感を発するドラゴン、地龍がいた。

 薄暗い蒼の皮膚を持ち、黄金の瞳を燦然と輝かせている。

 体長は中央の巨大な城の三分の一程度もあり、ケイが見たこともないほど大きな魔物だった。

 魔眼で見てもその圧倒的な『色』に眼を痛めてしまう。


「バカな!あれほどの色を発する存在に気づかない訳がない。遠くに離れていたとしても、どうやっても気付くぞ」

 

 その地龍は何かを探すように周りを見渡している。

 咄嗟にケイは自身の魔力を操作し、外に放出されるのを最小限にした。

 地龍はそのままケイがいる方向に徐に歩き出した。


「ヤバい、ヤバい!あんなの今の俺じゃ天地がひっくり返っても勝てる訳がない。くっそ、いきなり現れやがって。逃げるに限るな」


 そんな悪態をつきながらも、ケイは冷静に移動し始めた。

 地龍の歩く速度とケイの移動速度には差が大きすぎてすぐに追いつかれてしまう。

 このまま遺跡を出て、森に戻るのも手だが、非常に嫌な予感がする。

 ケイは時折こういった予感が働く。

 この予感に何度も救われたことがあるので信頼している。

 

「ってことは、遺跡を出るべきではない?じゃあどうするか」


 そう言ってケイは何か良い手はないかと思案してみる。

 こうしている間も地龍はゆっくりとケイに近づいてきている。

 そのプレッシャーに冷や汗をかきながらも、ケイは一つの手を思い付いた。


「そうだ、あの城に入ろう。あの城はどうやら強力な結界が張られているみたいだし、閉じ籠ればなんとか地龍をやり過ごせるのではないか?希望的な想像に過ぎないがやるしかない。そうじゃなきゃ死ぬだけだ」


 そう言ってケイは城に繋がる大通りに出た。

 距離は少なくとも数十キロはあるが城まで一直線になっている

 これを走り抜けて、城の結界内に入ったら良い…はずだ

 その前に地龍がケイに気付いて攻撃をしてくるかもしれない。

 そうしたら死ぬ。

 万が一のために、魔力は最小限に保ち、走り抜けなければならない。

 今までに一番のスリルだ。

 まさにケイは冒険をしている。

 最高の気分だ。

 そう思いケイは走り出した。

 長い長い道のりだ。

 地龍はまだ何かを探しているが、いまだケイに気付いてない。

 そうやって地龍に気を使いながら走っていると、いつも以上に体力を使ってしまう。

 多分城まで一時間はかかる。

 それまでに地龍はケイにより接近する。

 

 ケイは走りながら風を感じていた。

 何故かいつも以上に気持ちよかった。


「そうだ、これが冒険だ。こういうスリルを楽しみたかったんだ。命をかける冒険が最高なんだ。ははは、家族がなんだ、友達がなんだと考えるなんてバカバカしい。こんな冒険の前じゃ塵に等しい!」


 この頃頭を悩ませた家族の問題も、問題のある友達もどうでもよかった。

 命がけの冒険にケイは惚れ込んでいた。


 そうこうしている間に城の結界の入り口が見えてきた。

 その時、地龍がケイに気がついた。


「グオォォッッォォ!!!」


 地龍が獲物を見つけて、圧倒的な力を見せつけるが如く吠えた。

 それだけで周りの建物が崩壊し幾つ空を舞った。

 衝撃波は周りだけでなく、ケイのいる場所にも届いた。

 

 「くっそ、うるせぇな。そんなに叫ばなくても気づいてるよ、バカ野郎!」


 結界まではもう少しだ。あと一キロもない。

 地龍もケイが何をしようとしているのか気づいたのか、走り出すのではなく口に魔力を集中し始めた。


「『龍の咆哮(ドラゴンブレス)』か!なんて魔力してんだよ!あんなのくらったら一瞬で消し飛ぶな」


 そう理解した瞬間にケイは抑えていた魔力使い、身体強化を今までの人生の中で一番強力に行った。

 今までの強化では、間に合わない。

 そう、限界を今越えるのだ。

 そして結界に向かって分け目もふらず、走った。

 地龍が魔力を充填し終えて、ケイに照準を合わせた。

 ケイはまだ走っている。

 地龍はその圧倒的な魔力を解放し『龍の咆哮(ドラゴンブレス)』を放った。

 それは音を置き去りにし、何もかもを破壊しながらケイに向かった。

 その魔力を感じながら、ケイはまた限界を超えた。

 限界を超えた魔力を解放し、足を部分的に、集中的に強化する。

 その負担に耐えられず、脚から血が吹き出すが止まらない。

 『龍の咆哮(ドラゴンブレス)』がケイを飲み込むその瞬間にケイは結界に飛び込んだ。

 『龍の咆哮(ドラゴンブレス)』と城を守る結界が鬩ぎ合い、眩い魔力光がケイの眼に飛び込んでくる。

 そして龍の咆哮が止むと、そこには無傷の結界と何とか生き延びたケイの姿があった。

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