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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第一章 新しい人生の始まり
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第7話 悪意に満ちた下劣な罠。

 「い…いったい何の冗談ですか?」


私が…犯罪者?それにサディ=インモラルシス殿下って…サディのこと?殿下って確か王族のことだよね?それだけならまだわかる。


だけど…騙して命を奪おうとした?


意味が分からない…。

私の脳内は困惑と疑念で塗りつぶされる。


「おい!何をしている!早くこいつを捕らえろ!」


豪華な鎧を着た騎士が大声で怒鳴る。

周りの騎士たちが私を押さえつけて手錠をかける。


…これは冗談じゃない…彼らは本気だ!本気で私を連行しようとしている!


「や…やめてください!」


私は身をよじり抵抗する。


「抵抗するな!!!」


豪華な騎士が舌打ちをして、私の顔を思いっきりビンタする。

あまりにも強い衝撃で私は倒れた。

ツーーと唇から血が零れる。

豪華な騎士の暴行はそれだけに止まらず、倒れる私に蹴りを入れる。


「がは…。…い…痛い!痛い!や…やめてください!」


私は悲鳴をあげる。

やめて欲しいと懸命に抗議した。

だけど、豪華な騎士は蹴るのをやめない。


「オラァ!!」


豪華な騎士が思いっきり蹴り飛ばす。


「うあ………う…」


吹き飛ばされた私は呻く。


「……痛い…体中が…痛い!」


口の中が血の味がする。

豪華な騎士がズカズカと大きな足取りで近づいてくる。

豪華な騎士の姿と振る舞いが、かつて私に虐待をし続けた父と重なる。


トラウマが…かつての自分が受けた……恐怖がよみがえる。


「やえ…やえて……い…うこ…と聞くから…。」


痛みと苦痛に耐えきれず私は抵抗をやめる。


「ふん。やっとおとなしくなったか。手こずらせやがって……よし…こいつを檻に入れろ!」


豪華な騎士が毒づき、他の騎士たちに命令する。


「「「「はっ!」」」」


騎士たちが私を乱暴に檻まで引き連れる。


「さあ…早く入れ。」


刺々しい鎧を着た騎士達がが檻の扉を開け、私の背中を粗雑に押し込んだ。


「…はい。」


私は素直に檻の中に入った。

……入るしか道は無かった。


「副騎士団長殿!…只今ミカの拘束が完了しました!」


騎士の一人が豪華な騎士に報告をする。


「よし。では次の命令だ!お前も檻に入って奴を見張れ!」


「はっ!」


豪華な騎士の…騎士団長の命令を受けその騎士は檻の中に入った。

……また殴られる!


「ひ…」


私は悲鳴を上げ、距離を取る為に後ろに下がる。


「安心しろ。危害は加えない。」


小柄な騎士はそう言って床に座った。


「只今より、王都へ帰還する!」


騎士団長の声が聞こえると同時に、馬の鳴き声がして景色が横にスクロールする。

………………。

…………………………。

………檻に入れられてから数分後。

私はだいぶ落ち着いて、今の状況を頭の中で整理する。

なんで私が檻に入っているのか?…犯罪を犯したから?

では、どんな犯罪か?…サディとダストを騙して、殺そうとした?

私は…2人にそんなことをした?………いや、そんなことはしていない!断言できる。

じゃあ何で私は捕まった?…わからない。

…もしかして………2人が…私を裏切った?

…………。

……いや…違う。絶対に違う!だって…2人は私の仲間だ!

2人は、1人じゃ何もできない私の仲間になってくれた。

何もわからない私にいろいろと教えてくれた。パーティにもなった。

私達には信頼がある。だから…2人が裏切るなんて…絶対にない!


そう…信じないと…私は…………私は何を信じればいいの?


「……。」


騎士が私のことを見ている。

ジーと見られるのは好きじゃないけど…騎士の眼が違う。

私を陥れるときのあの目とは違う。…まるで私のことを見定めるかのような…。

なんにせよ、見られる理由が知りたい。私は騎士と会話を試みた。


「あの…何で私のことを見るんですか?」


「…すまない。お前の姿が奇抜で少し気になっただけだ。」


「あ、そうだったんですか…」


「…ああ。」


会話ができる事に一瞬の安堵を覚えた。

…私は呼吸を整え、ある質問をする。


「あの…何で私は捕まったんですか?」


「………。…お前は……嵌められた……。俺は命令されたから、従ったまでだ。」


騎士は耳を澄まさなければ聞こえない程小さく、そして…憐みを含ませたような声音で呟いた。


「……嵌められた?私が?…い……いったい誰に…。」


私は考える。

誰がどんな理由で私を嵌めたのか…。

ぐるぐると頭の中にある記憶をかき混ぜるように思い出す。

私と出会った人物。そして…私が嵌められる要因。

……。一つ……候補がある。


ダストとサディが私を嵌めた。


正直なところこれが一番有力で現実的、……辻褄も合う。

だけど…これはあくまで私の予想、決してこうとは限らない。

それに、騎士団長は2人は王族的な人だという内容の言葉を言っていた。

王族がそんなことをして何のメリットがある?…無い。

……そうであって欲しい。だって私は…2人を信頼している。

…こんな目にあった今でも…私は信頼できる程、私は2人に感謝しているから…。


「おい…着いたぞ。」


私を見張っていた騎士が私に声をかける。


「着いたって…いったいどこにですか?」


私は外を見る。

何か建物が見える。石造りの教会のような大きな建物だ。

大きな門の前に鎧を着た騎士達が、きれいに整列している。


「[インモラルシス王国最高裁判所]だ。ついてこい。」


「イ…インモラルシス…王国最高裁判所?」


とても名前が長い場所だ。

裁判所ということは、私は裁判にかけられるのか。

裁判なんて初めて受けるから、不安だ。

でもこれはチャンスだ!…ここで私の無実を証明出来る。

それが出来なければ私は本当に犯罪者になってしまう。

そうなったら私はどうなってしまうのだろうか?処刑されてしまうのだろうか?


………負けて……負けてたまるものか!!


私は決心して檻から出る。

ここで無実を証明できた暁には、私を嵌めた黒幕と騎士団長に罪を償ってもらう。


そして…また3人で冒険の続きをしよう!


2人が王族的な人だったことには驚いたけど、そんなの関係ない!


「……よし!」


私は意気込んで1歩、また1歩と踏み出して進んだ。

ギゴゴゴゴゴゴゴゴと門が重々しく憂鬱な音を立てて開かれる。

法廷は全体的に暗く、恐ろしいまでに静寂に包まれている。


「…!」


私は固唾を呑んだ。

手で小さく拳を作りざわつく心を無理やり抑え込む。

そして…陰鬱とした法廷に足を踏み入れる。


…………これから、私の命運を賭けた戦いが始まる。

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