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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第三章 試練と聖戦
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第61話 子犬と狂犬。そして、聖戦の準備。

7000字あります。

 教会の剣として、私は今、上層部による会議に付き添っている。

普段は見かけない奴らも多く、今回の騒動がどれだけ重篤であったのかがうかがえる。


「聖戦にはあの青色信徒を連れていこう。器の回収に失敗したんだ。それくらいの責任は果たさせないといけないね。」


例えばさっきアタシに素敵な洗礼を施してくださったあの背教者は普段は女信徒と遊んでばっかりで不真面目だったが、今回は静かに落ち着いた様子でまともな意見を出している。


「なら!器候補を脱走させた≪嘆きの乙女≫にも追及するべきだ!!」


対してあの怒鳴っているあのハゲは、普段は人当たりの良いおじさんを演じて信徒から尊敬されている。

汚職まみれで間違っても善人では無いが、自分達の安全が掛かっているとなると、どうやら真剣に向き合えるようだな?


「≪鉄球投げの聖女≫もしくじった。こいつも送ろう。」


この陰気な男は常に野心を抱いて何か暗躍をしているが、今回はそう言う策略的な思惑は無さそうだ。

教皇だけは普段と変わらない佇まいであり、こう言う時だけはその無駄に偉そうな立ち振る舞いが役に立った。


「…破城槌を2体と守護天使を14体連れて行くのを許可する。それと≪異端狩り≫と≪冷鉄の夜明け≫を連れて行け。聖戦を経験していないコイツらにとって、良い経験になるであろう。」


教皇は書記官から受け取った書類に印を押し、それをアタシに手渡して命令を下した。


「とにかく確実に成功させたい。≪教会の剣≫よ、お前もいけ。そして、指揮を任せる。ただし、失敗は許されない。…期待しているぞ?ヒューリー、行け。」


「承知しましたっ。…教会に栄光あれ。そして、教会の剣が、愚かなる罪人共に制裁を与えん。では。失礼しますっ。」


その言葉を聞いたアタシは、規則通りに唱和をして後ろへ下がった。

…しかし、アタシに権限を一任するとは思わなかった。

だが、これは有難い。


こんなチャンス…きっともう来ないだろう。


せっかくなので有効に活用しよう。

アタシは書類に目を通しながら、これからのことを綿密に計画した。

………。

………………。

カタコンベに設けられた少し広い場所でラハブと子犬の姿が見えた。


…そして、あの狂犬の姿も目に入った。


狂犬は項垂れる子犬の前に立って何かを話している。

子犬の様子と狂犬のイラついたような声から察するに、説教でもしているのだろうか?


「ラハブ君から聞いたんだけど、子犬君、負けちゃったんだ?」


「ご…ごめんなさい…めありーさま…ワタイゆだんした…。でも、さいぜんはつくしたとおもう!」


子犬の弁明をただ静かに聞いた狂犬は薄ら笑いを浮かべていた。

見ているこっちまで身震いしそうになるような、不快で不気味な笑顔であった。


「へえ。…最善は尽くしたんだ?頑張ったんだね?」


「うん!ワタイがんばった!」


「へえ~。そうなんだ。…ねえ、子犬君。お腹見せて。」


「え?…わ…わかった!」


子犬は修道服を捲りあげ、柔らかそうな腹を見せた。

ガキらしい女児のドロワーズと未熟な女児特有の腹が見えていて、少女性愛者ロリコンが見たら欲情するだろう。

狂犬は右手で子犬の腹を撫で、ニヤリと歪んだ笑みを浮かべた。


「可愛らしいお腹だねぇ。そう言えば子犬君はまだ一桁だったね♡あーしがロリコンドーテイなら、チ〇〇おっ立てちゃうかも♡」


「ろりこんどーてい?ごめんなさい…ワタイわからない」


「キャハ!純粋だね!これはそそっちゃうー♡」


次の瞬間、ズブリと鈍くい肉が弾けるような音が聞こえた。

アタシはようやく何が起こったのかを把握した。なんと狂犬は指一本で子犬の腹に穴を開けたようだ。


「え?」


子犬は一瞬何が起きたのかを理解できていなかった。

だが、確かにある痛みが、間抜けな子犬に何が起こったのかを痛覚で語りかける。


「あ…あああああああああああああああああああああ!!!!!!!!?!!?!」


「キャハ♡イイ声で鳴くね?あーしチ〇〇無いのに〇起しちゃう~♡キャハハハハハ!」


子犬の悲鳴をまるで好みの音楽を鑑賞しているかのように、狂犬は心地よさそうに聴いていた。

悪辣な爆笑をしながら股間を抑える狂犬だが、こんなのでも普段通りの行動であった。

ただ静観していたラハブでも、まさかいきなりこんな事をしでかすとは思ってもいなかったのか、もしくは予想こそしていたが本当に狂犬が実行するとまでは思っていなかったのか、ラハブは狂犬の行き過ぎた行為に声を上げた。


「メリー!!…メアリー!!なんてことを…!!」


「黙れ。これはザコに負けた負け犬ワンちゃんへのお仕置きだよ。ラハブ君は甘いかも知れないけど、あーしはそうじゃないから♡……負け犬君は最善を尽くしたって偉そうに自慢してたけど、負け犬君はどう繕っても負けたんだよ?なんで誇らしそうに自慢するのかな?負けるなんて恥なのに、脳みそちゃんと入ってるの?あーしが確認しようか?あーしがその能天気な頭蓋を握り潰してあげようか?」


だが残念ながら、ラハブの声も癇癪を起していた狂犬を止めるには至らずであった。

狂犬はそのまま沈んだ指を中で動かして子犬に新鮮な苦痛を贈り、スラスラと吐き出される理屈で子犬を容赦なく責め立てている。


「ごめんなさい!ごめんなさい!!」


「反省してるのなら言葉じゃなく行動で示せ。」


血まみれの指先を引き抜いた狂犬は、目にも留まらない速度で子犬を恐ろしい力で蹴飛ばす。

屈強な大男でも意識が刈り取られる程の強烈な衝撃が傷を負った子犬に襲い掛かった。

一切の容赦ない狂犬はメイスを一本、悶絶する子犬の近くに投げ渡した。


「キャハ♡簡単なゲームをしよう!負け犬君はその状態であーしに攻撃して一発でも当てられたら勝ち。負け犬君が途中で死んだらあーしの勝ちね♡あーしはハンデとして一切の攻撃はしないであげるよ♡その代わりに回復はしてはいけない。負け犬君はお腹に穴が開いた状態で戦ってね♡」


「メアリー!貴女いい加減に…!」


「ラハブ君は黙って見ててね?教会の剣ちゃん、ラハブ君が余計なことをしたらお前のお腹を割って腸をはぎ取るから♡ちゃ~んとラハブ君を見張っていてね♡オケ?」


気配を消して隠れて様子見していたが、あの化け物はアタシを感じとったみたいだ。

…前に「肌で感じる空気の流れや地面から伝わる微弱な振動だけで空間を把握出来る」とアタシに自慢していたのを思い出した。

相変わらず化け物としか思えないような奴だ。


「じゃいくよ♡よーい、スタート♡」


「やあ!」


開始の火蓋が切り落とされ、子犬はメイスを大振りで叩き付けた。

その一撃はとても早く、少なくても凡人じゃあ避けられない速度であった。


「ざーこ。遅いし弱い。傷の痛みで動きが鈍くなってるね。」


しかし、狂犬はその一撃を軽く避けた。

まるで、どういった動きで来るのかを始めからわかっているかの如く、ただ一歩横にズレただけだった。

子犬は振り降ろしたメイスをカチ上げ、狂犬の顎を粉砕しようとする。


「やあ!……っ!!」


しかしやはりそれでは捉えるには至らなかった。

狂犬はまるで風になびく極薄の絹のように、掴みどころが無かった。

どんなに子犬がメイスを振り回しても、空を殴るだけではダメージを与えられない。


「ざーこざーこ♡傷にばっかり意識を集中させてるね。それじゃあ三流以下のザコ素人だね♡傷にも意識しながらあーしにも集中。集中力を適切に分散させろ。感覚を研ぎ澄ませろ。」


子犬の連打を流れるようにいなす狂犬は、興が乗ってきたのかニヤニヤと悪笑を浮かべる。

随分と幼稚な罵倒だが、よく聞くとしっかり的を射ている発言も交じっている。

その温度差には随分と深い差があり、傍から見ているこっちの調子も狂いそうだ。


「はぁはぁはぁ…!きゅぁああああああ!!!!」


息を深く吐いた子犬は俊足で狂犬の懐までもぐりこんだ。

並大抵の騎士ら対応が遅れるほどの良く出来た動きだった。


「バーカ♡今度は動きが雑。死を感じて焦ってるね。戦意を失わないだけマシだけど、ほとんど捨て身なのは全くダメだよぉ♡それじゃ勇気と無謀をはき違えた玄人気取りのザコだよ♡思考力は捨てるな。取り乱すな。常に冷静に心を保て。頭を使え。敵がどう動くのか予測して先制攻撃をしろ。」


しかし、それでもなお子犬は狂犬の足元にも及ばない。

この様子を客観的に見ると子犬が弱く見えるかもしれないが、それは大きな間違いだ。


これが奴の強さだ。


コイツは勇者クラスの子犬や、英雄クラスのアタシとラハブでも足元にも及ばない化け物。

狂犬に与えられた二つ名は≪最強の剣姫≫、その強さはあの≪無敗の剣聖≫クレインを軽く超える。

奴の種族は純血の狼人で、まずこの時点で種族的に優位だ。

奴の身体は小柄でありさらにメスで若いため、身体的にも最上位。


獣人はメスの方が身体的に優位であり、奴は獣人の中で最も強い純血の狼人だ。


奴の精神はご覧の通り破綻しており、しかもああ見えて常に冷静であるため、精神も強靭だ。

奴の技術は言わば至高の領域で、この世に存在する武器は手足のように使えると言っても良いくらいに洗練されている。


…その気になれば、奴は鉄板を手刀で貫く事も簡単にやってのけれる。


奴の直感は正確過ぎてもはや未来予知の域で、しかもこれを常時継続しているため不意打ちは不可能。

奴の術者としての腕は災害クラスの魔術師…五星賢者の奴らとためを張れるくらいには常識離れしている。


…奴を形作る全ての要素が最強であり、まさに作られたような天才としか表現できない。


狂犬は最強になる為にこの世で生まれたと自負するくらいには、異次元で規格外の強さを持っている。

奴は本来ならば英雄クラスの実力者が徒党を組んで何日もかけて倒すような化け物相手でも、単機で乗り込み経った数分で無傷で完全勝利するくらいの常識離れした怪物だ。


一番恐ろしいのは、奴は強くなることに一切手を抜かないことだ。


あれだけの実力を既に持っておきながら努力は惜しまず、勝つためなら搦め手やら卑怯な戦法やらも辞さないくらい徹底的だ。

そもそも、狂犬にとっての敗北は死ぬことであり、生きてる限り何度でもやり直せるという思想の元に行動してるから、まあありえないが…死を感じたら躊躇うことなく逃亡もするな。


「キャハハハ!もっと素早く!力強く!一撃に殺意を込めるように!それを掌握するように!!!」


「あた…れ!あたって…!!」


子犬は追い立てられるがままにメイスを振り回す。

途中で蹴りや崩拳を混ぜて、器用に攪乱しようとしているが、狂犬には通じていない。

狂犬はワザと大袈裟に避けて、ワザとギリギリな回避を繰り返している。


「息を深く、浅く、浅く、もっと深く!一定の感覚を掴んで呼吸を制御して、身体を支配しろ!全身全霊!極限まで研ぎ澄ませ!!」


「………っ………!やぁあああ!!!」


瞬間、子犬の動きがまるっきり変わった。

その動きは、アタシやラハブから見てもわかるほどに洗練されていた。

今までの子犬が石ころであったのなら、今は加工された宝石であった。


それでも、狂犬には届かなかった。


だが、微かだがその一撃は狂犬の頬を掠めていた。

それはあまりにも薄く、傷が付かない程に浅く、あと数ミリ届いていなかった。


「キャハ♡悪くない。ようやく、掴んだみたいだね?キャッハハ!!」


狂犬は子犬の足を一瞬で払い、流れるような所作で子犬の腕を膝蹴りで打ち抜き、武器を取り上げながら背に回り込み、子犬の手首を捻りながら後ろ側に押さえつけ、勢い良く地面に叩きつけた。

勇者クラスの…いや、限りなく英雄クラスに届いた子犬を一瞬で制圧したのだ。


「メリー!!!」


ラハブは咄嗟に飛び出して、狂犬を揺さぶった。

顔はベールで隠れていたが、その薄布は涙で濡れていた。


「お願い!もうやめて!こんなのあまりにもやり過ぎだわ!!」


「………。はぁ…。相変わらず、ラハブ君は子犬君にぞっこんなんだね?」


ため息をついた狂犬は子犬をパッと手放した。

ドクドクと出血して真っ赤な水たまりを作っている子犬をラハブが動揺しながらも治癒をする。

その二人を後ろ目で見ながら、狂犬はアタシの方まで歩み寄って来た。


「で、結局どうなったの?聖戦することになったんでしょ?」


もう子犬に興味を亡くしたようで、アタシに聖戦について聞いてきた。

そう、生命の信仰者は逃した器と奪われた器候補の両方を回収するために、大規模な軍事作戦を決行する事になったのだ。

白昼の試練が終わった後…アタシは4人の英雄、一人の青色信徒ビショップ、200人の神聖騎士パラディン、20人の白銀信徒エクスキューショナー、破城槌2体と守護天使14体を率いて暗黒樹海に進軍することになった。

それ以外にも義勇兵として一般信者から募り、100名以上の神聖戦士クルセイダーを編成しないといけないらしい。

本来ならばアタシと無能野郎キュアミュゥの二人か、アタシと勇者クラスの誰か一人と組めば足りる事ではあるんだが…お偉いさん達は本当に成功させたいみたいだ。

こんなにも、過剰な戦力を投入するつもりのようだ。

まあ、アタシには好都合だからそれで良いが…。


「ああ、そうなったよ。」


そこまで具体的には説明していなかったが、このたったの一言だけで狂犬は口角を吊り上げた。


「キャハ♡ま~たあーしが必要だよね?わかったよぉ♡1日で終わらせて来るね♡レッツ蹂躙♡」


「待て、アンタには別の指令がある。…そっちのほうが歯ごたえがあるぞ?」


アタシは早とちりをする狂犬に待ったをかけ制止させた。

興味を引かれた狂犬は、いったんその凶悪な殺意を押さえてくれたようで、いきなり斬りかかってくることはなかった。


「ふ~ん?聖戦よりも楽しい事なんてあるの?」


「ああ、アンタには≪最悪の魔王≫を殺してもらう。そして、魔王率いる魔王軍を完全壊滅させて来いってお達しだ。詳しい記述はこの紙に書いてある。」


アタシは教皇から受け取った伝書を狂犬に渡した。

紙を受け取った狂犬はぺらぺらと資料をゆっくり見定めた。


「ハイ・ヒル大陸にいる≪人形師≫率いる自動殲滅軍の排除に…スローガスト地方に拠点を構える≪鋼鉄親父≫とその息子たち≪鋳鉄兄弟≫の破壊…ブラックソイル大陸に隠れ住む≪宵闇の不死王≫とその傘下のアンデットの浄化…ヒノマルで民衆を扇動している≪革命勇者≫の暗殺とその支持者の公開処刑…エターナルスノゥ地方のシルヴァーニで暗躍する≪千人斬り≫とその弟子たちの処刑…アーゴットのインモラルシス王国のどこかにいるとされている≪偽りの預言者≫の確実な殺害…エンドレスサンド大陸のイブニーグ王国の情勢を混乱させている≪不涙の道化師≫の暗殺…センタオブザワルドの魔導法国の魔王支持派の処分…。ご丁寧に全大陸にいるんだね?魔王軍の工作員って!…しかも、ブルーロック地方のどこかにいるとされている≪永劫の氷雪王≫とその配下の≪氷結魔導士≫の殺害に…メルトロック大陸の火山火口の城に籠城する≪燃える闇の魔女≫の無力化…?……いくらあーしが最強だからって、どこにいるかもわからない敵のために永久凍土の大地を放浪したり、いつ噴火するのかわからない火山で敵を殺して来いって言ってるのかな?」


「そうだ。」


「…せめて標的の情報くらいわかるようにしてくれないかな?この≪偽りの預言者≫にいたっては名前すらわかってないんだけど?あーしは探偵とかじゃなくて殺し屋だって事を理解しているんだよね?」


「ああそうだ。だがまずは試練が先だ。試練を一旦乗り越えてから、これらの任務に当たれとのことだ。期間は第一の試練が終わってから3カ月だ。」


「だいぶ無茶苦茶な面倒ごとをこんな幼気な幼女あーしに押し付けるなんて、教会って結構鬼畜ブラックだね♡」


そう言った狂犬の表情は恍惚としており、ゆらゆらと揺らめいていた。

渡しておいてなんだが、こんな無茶ぶりは≪教会の剣≫であるアタシでも遠慮したい程だ。

しかし、この戦闘愛好家の狂犬は愉悦に満ちた嘲笑を涎と共に零していた。


「キャハ!まあ良いよ?確かに聖戦よりも歯ごたえが有りそうだね?≪最悪の魔王≫…か。それに革命勇者ちゃんもいるんだ♡キャハ!興奮してきた♡キャハハハハ!」


狂犬は笑いながらその正気とは思えないような指令を承諾した。

戦闘の依頼には快く受けてくれる要素は、話がスムーズに進んでこっちとしても助かる。

一人で楽しそうにしている狂犬は相変わらずふざけた笑みで、気絶した子犬に振り向いた。


「負け犬君、今回の感覚を忘れちゃダメだから。次失敗したら、その時はラハブ君の目の前でレ○○するから♡」


最低な捨て台詞を吐き捨てた狂犬は、その煉獄の炎のような視線を遥か先に向けていた。

きっと、これからの殺し合いが楽しみで楽しみで仕方が無いのだろう。

まあ、分からなくもない。


アタシも…これからが楽しみで仕方がないからな。

2023/7/29 メリーのセリフ「当た…れ…!当たって!!」を修正しました。あと軽く修正しました。

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