第51話 ひとりでお勉強っ!
この話は2300字程度あります。
強さには順位と言うモノがあって、6段階に分けられている。
下から順に並べると、雑兵クラス、戦士クラス、騎士クラス、勇者クラス、英雄クラス、災害クラスとなっている。
雑兵クラスは戦いが得意ではない人たちが当てはまる等級で、戦士クラスは訓練や経験を積んで戦える人たち。騎士クラスはマリアのように強い人達に与えられ、勇者クラスは自慢になっちゃうけど私のような鍛えられた獣人が多い。
英雄クラスと災害クラスは生まれ持った素質や才能も必要になるから、天の神様に愛された人たちに与えられる等級で、常人ではなることができない。
この本によると、ご主人様が若かった時は一番強い災害クラスに届くくらいの強さだったらしい。
種族的に身体能力の低い精人種でありながら、最上位獣人である純血の狼人と同等の身体能力と達人級の戦闘技術を併せ持って、魔法と魔術の腕も英雄クラスの魔法使いと引けを取らない程で、剣術の腕は世界中の誰よりも強いと語られている。
そして、ご主人様は弱きを助け悪を討つ、その英雄像が世間で評価され全ての冒険者や旅人、騎士や傭兵の憧れとされている。そして私みぃも、そんなご主人様に憧れている者の一人だ。
「ご主人様のように…私も強くなって…そして…そして…!英雄になりたい!」
私は本を閉じて、別の本を手に取って開いた。
この本には種族について公平に詳しく書かれた物だ。
世界で最も数が多くありふれた種族である人間。
妖精の血が混じっているとされる耳が尖がった長寿の種族である精人。
獣の特性を持ち身体能力の出生率も高い種族の獣人には、犬人、猫人、狐人、狼人の4種類がいる。
この3種族が人類だと正式に認められているけど…人は実際にはもっといる。
例えば、エターナルスノゥの地にあるエルフの森に住み不思議な力を持つ不老の存在、妖精はその存在は確認されているが、魂の性質があまりにも違いすぎて世界では人だとは認められていない。
そして、ゴブリンやコボルトそしてトロールといった亜人は、いろいろな価値観や宗教思想そして偏見や政治的な理由で人類ではなく野蛮な魔物だとされていて、何世紀も人類だと認めてもらっていない。
そのせいで、多くの亜人は文明人として受け入れてもらえられていないために、まともな仕事には就けれず国籍も人権すらも保障されていない。
だから、亜人の多くは略奪やら強盗そして売春に手を染めてしまっている。
そしてそういった行動をする者が一人でもいれば、嬉々として誰かが種族全体を邪悪だと決めつけるから、全員が野蛮な魔物だと差別されて社会から孤立させてしまう。
そして孤独になると、自暴自棄になって心無い事に手を染めてそれをまた指摘される、と言った嫌な悪循環が繰り返されてしまっている。
…もし、私が亜人と話すことが出来たら、お友達になりたいな。
残念ながら私は亜人語は明るくないから、彼らの言葉はただの鳴き声にしか聞こえない。
けど、この本には亜人は確かに人であると書かれているから、きっと通じ合う事はできるのだと私は思った。
そのために亜人語を勉強した方がいいのかもしれないけど…やっぱり難しすぎて全く理解できなかった。
一応私は、全か国語をほぼ完ぺきに習得していて、古いルーン文字も読めるくらいには語学は明るい。
ただ亜人語だけはどうしてもわからなかった。
なんて言うか、亜人語は単語とかが決まっていなくて法則性を掴めない。
もし、人語が話せる亜人がいるのなら、その人から教わりたいな。
そんなことを思いながら、私は本を閉じてベットに深く身体を沈めさせた。
私の部屋のベットは実は少し良い物で、低反発なのだ。
ご主人様がすごい偉い人の依頼を達成してその報酬としてたくさん貰った物らしいけど…かなり昔のことだから私はよくわからない。少なくても100年くらい前の貰い物だとは、前にご主人様が言っていた。
ご主人様は精人だからその寿命も長くて、本来なら私よりもずっとずっと長く生きたはずだった。
「ご主人様には天寿を全うして欲しかったな…ご主人様……ごめんなさい…ごめんなさい…」
死体のように干からびて衰弱死したご主人様を思い出してしまって、私は静かに涙を流した。
…ご主人様は黒星の穢れにより、その身を犯されながら静かに息を引き取った。
そうなった原因は…この私だ。
マリアは今でも私のせいじゃないって否定してくれるけど…私はそう思えなかった。
私が無茶をして黒星の眷属と戦ったから、まだ未熟だったのに逃げなかったせいで、あの時ご主人様は私を庇って穢れてしまった。
…あの憎き、黒い翼とハンマーのような形状の頭をした瘦せた飛竜…≪悪夢の従者≫の姿は脳裏に焼き付いている。あの悍ましい金属を引き裂くような声と止まってるはずなのに動き続ける不快な鼓動音が今でも忘れられない。
ミカちゃんを襲った黒星の眷属である≪名前を知らぬ者≫よりも上位の存在である≪悪夢の従者≫は、今の私でも太刀打ちできないだろう。
けど、もし再び相対したのなら…私はあの首を刎ね飛ばしてみせる!
その≪悪夢の従者≫はご主人様の死の原因となった個体ではないけど、それでも黒星の眷属である者は何であろうと私が滅ぼしてみせる。
黒星の眷属にとっても、それが救いになるのだから、私が倒さない理由は無い。
何にしても、今の私にできる事はみんなを信じて待つことだけだ。
だから、今は静かに目を閉じて、そして耳を澄ませて、いつでも来てくれていいように待つだけだ。




