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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第三章 試練と聖戦
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第49話 新しい仲間…と、これまでのあらすじ。

この話は6200字程度あります。

 暗い夢の中を彷徨う一人の白い乙女は今、生死のはざまに立っていて、死の恐怖と生の不安を感じているところだ。

少女は純白の髪をハーフアップにして、灰色の目には暗い感情が封じ込められている気がする。身体の発育はまだまだ幼く、肉体的な年齢は10歳と20歳の間くらいだろうか?

その白い少女は私であり、名前はミカという。私には家名は無くて育ててくれた親はいない。

何故なら私は神の力で異世界から転生してきたからだ。説明すると私は元男子高校生で、危ない薬に溺れたであろう通り魔に刺されて死んだ。そのまま死んだ私を≪生命と救済の神≫ライフによって、この白い少女の体と膨大なHPと武器が扱えないハンデと過酷な運命を与えられた。


私は過酷な運命に傷付き一度心が折れた。

だけど、心が折れた私を一人の狐の少女みぃが救ってくれた。

みぃは稲穂色の長い髪と黄金の目と稲穂色の狐耳と狐のもふもふ尻尾が特徴的の美少女だ。頭に眼の紋章のような髪飾りを付けていて炎の魔法の使い手で凄腕の剣士であり、私はみぃによって命を救われた。そのため私はみぃを強く慕っていてみぃの力になりたいと思っている。


傷ついた私をアンリが寄り添ってくれたおかげで心の負担をやわらげられた。

アンリは元気溌剌の言葉が似あう裏表のない笑顔と青いバンダナが特徴的な人間の少女。本名はアンリ=アマレットと言うらしく、自称よろず屋[旅人の通り道]の店主の娘。

とても優しくて私みたいな根暗にも寄り添ってくれる程に抱擁力のある女の子。

ただ、実はアンリも私と同じ…いやそれ以上のナニカを心に隠しているようだ。そのため、親近感を抱いている。


桃色のメイドであるマリアによって、心に少し余裕ができて少しだけちゃんと話せるようになった。

マリアは桃色の髪を後ろで結っていていつも無表情。礼儀正しくて言葉使いも洗練されている。そして何よりもレベルが高くて色々な武器の扱いと魔法の腕にも長けていて、長く生きているようで知識も豊富のようだ。

正に文武両道パーフェクトでお堅い雰囲気のマリアだけど、実はおしゃれ好きで意外と表情豊かでとてもお人好しで、話してみるとお堅くなく柔らかくてすぐに親しめた。一度背中を預けて戦ったことでお互いに信頼し合えるようになって、今回の遠出で更に信頼関係を築けた気がする。


私は3人にとても感謝している。

だから、私はみぃに掛かった呪いを解除する為【碧の聖水】を求めて、アンリとマリアと共にアルブミル山岳まで遠出をしたのだ。

その道中で、新しい仲間と出会った。正確にはまだ仲間ではないけど、私は仲間だと思っているので紹介する。


ゴブリンロリータと呼ばれる種族…いや魔物だったかな?とにかく変わった種族の褐色幼女、コロロ。

コロロは私たちに協力してくれただけでなく、私に中級魔法を取得させてくれた。とても優しくて寛大な心を持っているようで、コロロは私達を襲った賊にすら手を差し伸べた。

その心の広さは見習いたい程だけど、ちょっと私を執拗にいじってくるところがあってそこだけは苦手かもしれない。


私達を襲撃して返り討ちに合ってすごい無様に命乞いをしてコロロに拾われたゴブリンの少女、シフ。

メスガキゴブリンって造語が似合うシフは、出会い方こそ最悪で第一印象はまさに最低だった。

けど、私達を助けてくれたから…その印象は少し修正しても良いと思えるくらいには少し信頼した。

まだ出会ったばかりだから詳しくは知らないが、彼女から何と無く不憫な雰囲気を感じる。


ああ後、青装束の老人の男ですごい性格の悪いハローって人もいる。

ハローにはあんまり印象はない。振る舞った料理が美味しかったのと愚痴が聞くに堪えない程陰鬱だったくらいしかない。正直言って私は少し嫌悪感を彼に対して抱いている。これは同族嫌悪や同担拒否なのかもしれない。そう思うと気分が陰になるから、あんまり考えない方が良いのかもしれない。


とにかくこの私含めた6人で、生命の信仰者の街アルブに着いたところ…最初こそ歓迎されていたのにどういう訳か奇襲されてしまった。それによってアンリとマリアは怪我をして、私も顔を沢山殴られた後お腹を深く刺されてしまったのだ。それで、私は最後にもがいて意識を失って、今の現状となっている。


私は結局どうなるのだろうか?


私はただ何も無い空間を歩き続けている。記憶に新しい白い聖都の風景よりも殺風景で寂しい。

ふと前の方に誰かがいた。姿は分からない男なのか女なのかも人なのかすらもわからなかった。

ただ、目の前の影は私の前に立ち静かな声で囁いてきた。

「セイジョハ…ドウシタ?ソウ…ハク…ノ…セイジョハ…?」

影は私に奇妙なことを訊いてきた。

今まで聞いてきたように悍ましい声であったが、今回は何十人も重なったような声ではなく一人の人の声だった。そのため、ある程度聞き取れた。

「知らない…」

私は素直に無知であることを伝える。

言葉を聞き取れたからと言って、それに応えられるという訳ではない。

知らないものは知らない。ただそれだけを伝えると、影は再び言葉を発する。

「セイジョハヒツヨウダ。ムリョクナオマエノチカラトナル。ナノニ…ナゼイナイ?」

「意味が分からない…それよりも…アナタは誰…?」

影は少しの間沈黙したかと思うと再び囁いてくる。

「タダノジュジュツシ…トダケアカソウ…イマハマダ…カタレナイ…」

「呪術師…?なんで…語れないの?教えてくれないと納得できない…!」

「ウマクコトバニデキナイ…ジガヲカクリツシナケレバ…クワシクツタエラレナイ…」

「アナタは……私の味方なの…?」

「マダ…チガウ…イズレワカルダロウ…」

影は私の顔を両手で押さえてキスをするかのように近づけた。

そして影は、うわ言のような呪文のような長い言葉を休みなく囁いてくる。

「イノリヒメノムスメヲ…ナカマトシテ…ウケイレロ…。ソシテ…ハカモリノブンシン…ゲスモノノコムスメ…インキナロウニン…コノ3タイモ、ヒキイレルトヨイ。シレンニハ、タイコウデキルダロウ。…ダガ、ワスレルナ。ワレラヒトノコハ、ヨワクカミノアシモトニモオヨバヌ…カトウナルソンザイ。シカシ、カミヨリモフカイヨクボウト…ソコシレヌアクイヲモツコウカツナルソンザイデモアル。ユエニ、ワスレルナ。イチバンオソロシイノハ…マモノドモデハナク…ワレラ、ヒトノコ。」

そう何かを私に伝えて、影は口づけをした。

「んん…」

口づけをしたと文字や言葉だけで受け取るとロマンスを感じるかもしれないが、得体のしれない人型の何かにされるのは不快であり恐怖を強く感じる。

「マタアオウ…ツギコソハ…ツギコソハ………。オマエヲ…」

影は私に口づけをしたまま、私の舌を噛み切った。






ゆっくりと私は目を開けて、生の世界に帰還した。キザっぽい言い回しだけど実際私は本当に死にかけたので、この表現で間違いない。それよりもどうやら、私は今馬車の荷台にいるようだ。隣にはマリアが静かに寝息を立てていて、私の目の前にはコロロと…知らない顔の人がいた。

その人は、白銀の髪を長く伸ばした明るい緑色の目の聖女だった。青い修道服に身を包んでいて、指には白銀の指輪をしている。腰には膨らんだ袋とメイスが下げられていて、太股の上に鞄をのっけて座っている。柔らかな表情で私よりも身長が高いけど…胸の大きさは私に負けているようだ。

「……ぺったんこ…」

私はついうっかり心の声を漏らしてしまった。目覚めたばかりで判断力と思考力が下がっているようだ。

「ム…失礼です…。私はまだ成長途中です!………て、起きたのですね!…良かったです。」

聖女は少し不服そうに頬を軽く膨らませて反論をしたかと思うと、今度は私を見て安堵の言葉を漏らした。初対面なのに他人である私の心配をしている。それと、どうして私は知らない人と同席しているのだろう。

「……あなたは…誰…?」

「私はシルミアです。見ての通り、≪生命と救済の神≫ライフを信仰する生命の信仰者です。皆様の治療をさせてもらいましたです。…敵ではありません…実は少し訳が合って、皆様の仲間にして欲しいのです!」

「…わけ?」

「はいです!実はですね。私はーー」

シルミアと名乗る白銀の髪の聖女は、事情を説明し始めた。

シルミアが語った内容は、とても悲惨な出来事であった。シルミアは数日前に信頼していたゲイルという名の青色信徒ビショップによりあらぬ罪を着せられ地下の牢に幽閉されていたという。そして、数日もの間、軟禁生活を強いられていたところ、神の代行者を名乗る男によって闇堕ちさせられたと言う。

「そ…れは……た…大変だった…ね…。」

余りに悲惨な彼女の出来事を聞いて、私は同情を見せた。私自身もシルミアのように、信じていた人に裏切られ、理不尽な目にあわされて牢屋に投獄されていたから、彼女の境遇に共感した。

唐突にシルミアが私の手を触れてきた。シルミアの指は細くて滑らかで清潔感があった。ひ弱そうな印象を受けるようなか細い指であったにもかかわらず、握る力は強くそして優しい力加減だった。

「お母さんが聖都から逃げていいと言ってくれました。…そして…代行者さんが、貴女様に付いていくと良いって言いました。」

「………。」

「私には居場所がありません。故郷では私はもうただの灰色信徒ヒーラーですから、殺されても誰の気にも止まりません…。一人では簡単に生きてもいけません。」

まるで神に祈るように、シルミアは私に向かって言葉を放った。

「初めまして、元青色信徒ビショップのシルミア=エレフィーレです!あなた方を救済する、神の代行者です!どうか、私を皆様の仲間に入れてください…お願いしますです!」

懇願するシルミアをよそに、私は少しだけ納得がいかなかった。

代行者と呼ばれた男がどうして私に付いて行くと良いと勧めたのか、その理由が気になった。

「えっと…シルミア…さん…。仲間になりたい理由は分かったけど…少しだけ聞いてもいい…ですか?…代行者はどうして…私に付いて行けって言ったの?」

「それは……私もどうしてミカさんなのか、よくわかっていませんです。けど…ミカさんを見ていると何だか、少し親近感を抱きます。あと、私もミカさんと同じく器と呼ばれていました。理由は分かりませんがきっと何かの縁があるのでしょう。」

「つまり…代行者って奴に言われたから…自分の意思じゃない…?」

正直言ってシルミアを引き入れるのは不安だ。

代行者に言われた通りに動いている気がして、何だか利用されている気がしなくもない。

何かトラブルを呼び寄せそう。失礼だが私はシルミアに不安要素を見出してしまったのだ。

「ミカさんを選んだ理由は…私の意思ではないかもしれませんです。ですが!理由なんて…正直どうだっていいのです…私は…平穏に生きていきたいだけですから…!それに…こうすると決めたのは最終的な判断は私の意思です。だから、お願いします!私を入れてください!」

シルミアは仲間に入りたそうに必死になって、自身をアピールする。

「私はこれでも青色信徒ビショップでしたから、高位の祈祷術を使えます!そして【碧の聖水】や【祝福の紙切れ】等の教会の聖道具だって作れますし…聖化の秘儀や教会の祝福だって出来ます!あと、物語や奇跡の御話もできますです!」

【碧の聖水】…私たちがみぃの呪いの解除の為に求めていた物だ。他の特技もシルミアの口ぶりから察するにきっとすごい事ができるのだろう。不安要素リスクもあるけど、仲間にすることで得られる利益リターンが大きい。アピールを聞いていた私はシルミアを迎え入れても良いと思い始めた。

「私は……権限がないから……決められない…マリアなら…決めれるかも…しれないです…」

けど…万が一私の不安が的中でもしたら、責任を問われるかもしれない。

自分勝手だけど、責任は取りたくなかった。だから、私は権限がないと言い訳をして逃げた。

「………入れても問題ないと思います。」

「マリアさん…!目を覚ましたんだ…傷大丈夫…?」

凛とした少女の声に導かれるように、私はマリアの方に目を向ける。

縛った髪を下ろしたシンプルな姿は優雅さを感じる。一瞬だけ言葉を忘れそうになったが、傷を負って苦しんでいたのを思い出して、私はマリアに気遣いの言葉をかけた。

「何とか…お気遣いありがとうございます。シルミア様でしたっけ?回復を施していただきありがとうございます。……仲間の件ですが、わたくしは良いと思います。」

どうやら、マリアも聞いていたようでしかも、仲間にすることに不満がないようだ。

青色信徒ビショップが加入するなんて、滅多にない事です。仲間に入って下さるのでしたら歓迎いたします。それに戦力が増えて、みぃもきっと喜びますよ。」

マリアが賛同の意を唱えると、コロロが続けて口を開いた。

「アタイも~賛成するよ~!青色信徒ビショップが仲間になるなんて~どんなに徳を積んでも難しい奇跡なんだからね~!こんなチャンスを逃すのは愚行だと思うよ~」

どうやら、コロロも賛成の意見だった。

「じゃあ…マリアさん達が言うから…私も賛成します…!」

私は一番責任を感じなくて済むであろうこのタイミングで同調した。

「じゃあ…私を入れてくれるのですか?」

「はい。ただ、わたくし達もそれなりに訳アリの身です。そのため、シルミア様が期待しているような平穏は保証しかねます…それでも…大丈夫でしたら、勧誘を承諾してください。」

「新しい居場所と平穏の可能性があるのですから…私は構いませんです!よろしくお願いしますです!」

シルミアは歓喜し手を組んで祈った。

すると、私の視界に『新たな仲間が加入しました』と報告の文字が表示されたので、私は視界の端を確認してみた。そこには、確かにシルミアの名前が表示されていた。

こうして、生命の信仰者のシルミアが仲間となった。

まだ詳しく彼女のスペックはわからないけど、シルミアは回復魔法が使えるのは確かなようだ。

ゲームでいうと回復役ヒーラーで、ファンタジーモノではヒーラーの存在が仲間の運命を左右する展開も多い。回復手段が乏しかった私たちにとって重要なのは間違いないのだろうと、私は上から目線で考えた。

「あ、そうだ。言い忘れてたけど~…」

唐突にコロロが話を切り出してきた。何だろうと困惑しながらも私は反応を返した。

すると、コロロが屈託のない笑みを見せて、私が予想もしなかった事を平然と告知した。

「実はアタイらも~仲間に入れてもらう事になってるから~これからもよろしくね~ミカたん♡」

一瞬何を言ったのかわからなかったけど、理解が追いついた私は驚愕のあまり言葉を漏らした。

「え……ええ…」

転生したばかりの私であったのなら、きっと大げさに叫んでいたのかもしれないが、今の私は身の程を知っているため大げさな反応はしないようになっている。なので、微妙な反応になってしまった。

こうして、新たな仲間たちが一度に増えることになった。

戦力が一気に増え、これでみぃの負担も減るだろうか。

2022/12月11日13:47誤字修正。

アンリとコロロとのアンリの名前を消しました。

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― 新着の感想 ―
[良い点] シルミアちゃん、推しになりそう(//´Д` //) ミカちゃんは人間味溢れていて、共感出来ます!最初の裏切られたシーンからどう展開が転ぶのかとハラハラしてますが、良いお仲間さんと巡り会え…
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