第45話 奇襲。
かなり急展開ですが…これでソロッと二章を完結できます!
宿に向かって歩き進めていると、桃色のメイドのマリアと合流した。
「マリア!結局聖水は買えなかったのか?」
「…はい。残念ながら…。あれからしばらく待っていたのですが、メリー様は戻ってきませんでした。居座るのも失礼ですので、教会内にいたアコライトの方に伝言を伝え宿に向かうことにしました。」
結局今日は碧の聖水を手に入れれなかったようだ。
まあ、来る前に時間がかかることは聞いていたので、みんなそこまで驚かなかった。
夕日に照らされた白い町が目を刺すように主張してきた。ここは綺麗な街だけど白すぎて目が痛い。
真っ白な私が言うのもなんだけど、どうして全部白にしているのだろう?
気になった私は何となくマリアに訊いてみた。
すると、マリアは丁寧な口調で話し出した。
「…白や銀は生命の信仰者にとって清楚を象徴しているからです。彼らは清楚であることに拘っており、白い装束に銀で身を飾ることで自身が清純であると誇示するのです。……逆に赤や黒と言った血や暗闇を連想する色は不浄を象徴しているようです。そういった不浄を嫌っており、彼らは刃物をあまり使いません。人を斬った時に返り血が付くのを避けるために…。代わりにメイスや鈍器を使い、人を粉砕するようです。」
丁寧に教えてくれたマリアに感謝の言葉を伝えた。そして、せっかくなので会話を続けることにした。
「人を斬る…。聖職者なのに…そんな事……あるの…ですか?」
「残念ながら…。特に最近世の中が不安定になっており、山賊や心無い者で溢れております。わたくし達もここに来るまでに襲撃されましたでしょう?自衛の手段が必要になるわけです。」
「そ…その件は悪かったデス。」
なんて、駄弁っているともう宿の近くまでついた。
道中かなり人が空いていたおかげで、詰まることなく進むことができ思ったよりも早く到着した。
歩き疲れたし…早くベットで横になりたい…
なんて呑気なことを考えていると、誰かがいることに気が付いた。その人達は全身を銀の鎧で守っていて、穂先が三又の水晶のような形状の銀槍を持っていた。歩いているときに見かけた見回りをしている兵士のようだ。ただ、不思議なのは何故かこの場所に沢山いて、どういう訳か私たちを囲い込んでいる。
「パラディン…なんでこんなに…」
「ん~?んん~?変だな~…これは…覚悟の感情~?なになに?これから戦争にでも行くのかな~?」
マリアが不審を抱き、コロロが困惑している。嫌な予感が周りに伝達されていく。
マリアが背負っていた骨の槍を手に持った。その次の瞬間。
「………!!!」
一人のパラディンが私に向かってきた。鎧を着てフルプレート状態にもかかわらず、その速度は俊敏だった。槍を大きく振り上げて殴りかかってきたのだ。私は状況を処理できず反応ができなかった。
けど、マリアが反応して素早く槍を薙ぎ、パラディンを吹き飛ばした。
「がっ…!?」
パラディンは一瞬宙を舞い、地面に打ち付けられた。
「な…何が起こったんだぜ?パラディンが…聖職者が襲ってきた…?」
「な…なんじゃ?!い…いったい何が起こっておるのじゃ?!」
「ひ…ひぃ…!わ…わたし悪い子じゃないデスよ!?だから助けてデス!」
みんなが突然のイレギュラーによって、取り乱す中、マリアが冷静に怒りのこもった声を上げた。
「いったいどういうつもりですか!?急に襲い掛かってきて…何のつもりですか?!」
けれどパラディン達は語らず、代わりにそれぞれ武器を掲げ、大きく勇ましい声を張り上げた。
「「「「生命と救済の神よ!か弱き者の為に、この物に神聖なる力を与えたまえ!(プリーストウェポン)!」」」」
祈りの言葉を言い終えたと同時に、武器に黄金の光が宿る。黄金に輝く武器は冬の時に吐き出された白い息のようなオーラを纏っており、見るからに強化された。にもかかわらず、パラディン達はさらに祈る。
「「「「生命と救済の神よ、敬虔なる信徒の為に、この私に生命の印を与えたまえ。(ライフシール)!」」」」
「「「「生命と救済の神よ、勤勉なる信徒の為に、この私に生命の刻印を与えたまえ!(バイタルシール)!」」」」
祈りによりさらに強化されたであろうパラディン達は、それぞれ武器を構え私たちに向かってきた。
「教会にっ!栄光あれー!!」
三又の槍を持ったパラディンが大きく振りかぶったが、マリアは冷静にパラディンの叩き付けを防いだ。
「くっ!」
「戦いを望むのでしたら仕方がありません。わたくし、容赦しませんよ!」
マリアはパラディンの打撃を受け流し、骨の槍で鳩尾を強く殴打した。その打撃音は空気を震わせるほどで、私はつい小さな悲鳴を漏らした。そして、殴打されたパラディン衝撃により意識を失い沈黙した。
「アンリ様は私の援護をお願いします!コロロ様はハロー様とミカ様をお守りください!」
「わ…わかったぜ!」
「りょ~か~い!」
3人は武器を取り出して戦闘態勢に入る。マリアは略奪者から鹵獲した骨の槍で、アンリは右手に同じく略奪者から奪った木製の盾を装備した。マリアがパラディン達に向かって真っすぐ突撃する。
「はぁっ!」
骨の槍を振り回して、パラディンの胴や足を強打した。鎧を着こんでるとはいえ、衝撃により怯み体勢を崩した。その隙を狙い、マリアはパラディンの頭部を蹴り飛ばし意識を刈り取った。
「がっ…!」
「…殺しはしません。けど、しばらくは動けないように無力化はします。」
くるくると骨の槍を巧みに回して、アクロバティックにアピールをする。パラディン達は次々と向かっていく。その様は勇猛だが愚直で、マリアに圧倒されていく。だが、パラディンも決して弱くなく、機敏な動きと人数差でマリアを追い込もうとする。
「………!!」
マリアの死角に回り込んだパラディンは聖なる力を帯びたメイスを思いっきり振り上げる。
「隙ありだ!」
だが、アンリがどこからか取り出した金槌を左手で投擲して、パラディンの後頭部にぶつけた。ガンと少し高い打撃音と衝撃により、パラディンの注意がアンリに向いた。その隙にマリアが回し蹴りでパラディンを吹き飛ばして撃退した。
「感謝します!」
「どうも!」
マリアが切り込みをして、アンリが遠距離でサポート。かなりいい布陣になっている…と思う。
立っているパラディンの数がどんどん減ってきている。
このまま行ける!そう勝利を確信した次の瞬間。
「ひっ!?」
突然、強い殺気を感じ取り、私は身震いをした。
振り返るとそこには…鎖でつながれた恐ろしい獣がいた。
白い毛をした犬の少女…さっき元気よく迎えてくれたメリーがいた。けど、手には鎖でつながれた鉄球が握られており、じゃりじゃりと音を立てながら引きずっている。
「メリー様…!一体どうして襲撃なんてマネをしたのですか!?何が…目的ですか?」
「ごめんね。きょうこーさまが、しろいおんなのこをつかまえてって。じゃまするやつをころせって。」
聞き間違いかと疑った。メリーは今、白い女の子を捕まえるって言った。
その白い女の子はどう考えても私だ。しかも、邪魔ものは殺すとかなり物騒な言葉も聞こえた。
さっきまで友好的だったのにどうしてこんなにも豹変してしまったのか。
その疑問はマリアも抱いていたようで、メリーに問いただした。
「教皇が…?一体どうして…わたくしとは友好関係にあるはずです…なのに…!」
「ごめんなさい。ワタイ…むずかしいことよくわかんない!よくわからないから、きょーこうさまのいうとーりに、ぜーいん…ころすね!」
メリーのめちゃくちゃな発言に私は絶句した。よくわからないから殺すって、はっきり言って支離滅裂だ。なのに…メリーは自身の言っている言葉のおかしさに気づいていない?…いや違う、分かっていないんだ。メリーは思考を放棄している。疑問を持たず指令を遂行する従順な犬なのだ。
「ふざけないで…!」
私は不条理に憤りつい前に出ようとしたが、マリアに冷静に制止された。
「ミカ様…お下がりください。わたくしはこの目の前の敵を排除しますから…。メイドの役目は主人たちに敵対する者の殺害です…。…メリー様、覚悟してください!」
マリアが冷たく鋭利な目で睨み、槍の矛先を向けてメリーを脅した。
「じひぶかいかみにいのりなさい!へいおんをおびやかす、むほーものよ!いっときのざんげをゆるします。おのれのあくぎょーにきづき、くいあらためよー!ワタイはメリー=イノセントゥ!≪鉄球投げの聖女≫のなまえをさずかった、せーぎのしっこうしゃ!」
稚拙な言葉で名乗りを終えたと同時に、メリーは鉄球を投げつけてきた。
寸前に回避したことによりマリアは攻撃を受けずに済んだ。鉄球はそのまま建物の壁に激突する。
石でできた壁は簡単に砕け散り、耳を劈くような轟音と共に建物に大穴を開けた。
「マリア…さん…!頑張って……!」
私は精一杯応援をすることにした。何故なら、私にできることはそれくらいしかないのだから。
何もできない私は、みんなの後ろでガタガタ震えながら私達の勝利を祈り、そして相手の敗北を願う。
主人公とはかけ離れた卑劣で醜悪で滑稽な嚙ませ犬のような酷い立ち位置だとしても、私は甘んじて受け入れるしかないのだから。




