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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第二章 蒼白なる聖女
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第39話 略奪者の命乞い。

 襲撃者を返り討ちにして数分経った。

アンリを荷台に寝かして、マリアが服を着替えている間、私とコロロはただ一人の生き残った略奪者の処遇を考えることになった。

「ぎゃぅ…ぎぅ…『そんな…アタシ以外全滅だなんて…』」

略奪者は自分自身を抱きしめるように縮こまって、震えている。

完全に戦意は無いのは見ただけでわかる。このまま見逃しても良いかもと思うけど…こいつらは馬とアンリにクロスボウを撃ったのだ。しかもたちの悪いことに、ボルトの先端には毒が塗られていたらしく、時間が経った今でも二人の様態が回復していない。

落とし前としてマリアは逃さず殺すと言っている。

「ぎゃぁ…ぎゃぁぎゃぁ…『なあ…逃してくれるよな…?アタシは見ての通り無抵抗だ。』」

略奪者は何かを言っているが残念ながら私には理解できない。

今にも泣きそうな顔と震えた声を察するに命乞いだろう。

「ねえ~人語喋った方がいいよ~?もしかしたら聞いてくれるかもよ~。」

コロロが賊の死体から鹵獲した武器の手入れをしながら、怯える略奪者に助言をした。

「ぎゃ…。………あ。わたし、か弱いメスだから、抵抗もしないから、どうかご慈悲を…お願いデス。」

略奪者は片言ながらも、人語で喋った。やっぱり、命乞いだった。

略奪者は青い顔で怯えながら続けた。

「わたし、悪いオスに騙されただけデス。ホントはこんなひどい事するつもりなかったデス。毒もわたしが作ったものじゃないデス。だから、お願いデス。わたしを逃がしてくださいデス。」

「ん~噓の感情~。マリア~この子噓ついてるよ~。」

「………噓をついて…自分だけ逃れようとする卑劣な者を見逃すほど、わたくしは聖人ではございません。」

マリアはナイフを器用に回しながら近づいた。

「お…おい!無抵抗なメスを殺すのか?!わたしはホントに反省してるデス!なのに酷いじゃないデスか!」

「あなた方のお仲間の蛮行によって、ご友人のアンリ様と護衛対象のお馬が負傷してしまったのですよ。おかげで、予定通りに事が進まなくなってしまいまし……たっ!」

マリアはナイフを力強く投げつけた。丁度、略奪者の座っている足元の地面に深く刺さった。

「ひっ…!お…お願いします!助けてください!わたしが悪かったから…!おねがい…ころさないで!」

略奪者は情けなく泣きながら懇願した。だけど、マリアのごみを見るような目は一切変わることがなかった。

略奪者の首を掴み、ナイフを押し付ける。

「わたくし達を襲ったことを後悔しながら、この草原のシミになってください。」

「やめて…!やめて…!!ホントに!たすけて!!しにたくない!やだ!やだやだやだぁ…!!」

略奪者は身を捩って暴れだした。だが、両手は完全に後ろで縛られていて首はしっかり掴まれているため逃れられない。自分の服と髪の毛がぐしゃぐしゃになるだけだ。

マリアは氷のように冷たい目で、ナイフの刃を略奪者の細い首筋に押し付けた。

「いやあああああああああああああああああ!!!!!!!」

略奪者は恐怖に満ちた悲鳴を上げた。

ああ、この人死んだなって確信した次の瞬間。

「あ~マリア~もう大丈夫だよ~!その子放してあげて~!」

コロロが手をパンパン叩いて、粛清を制止させた。

「…承知しました。」

マリアはゆっくりと離れて開放する。

「ひ…ひぅ…ぐす……ぅご…ごめんなさぃ…は…はんせいするから……なんでも…するから…!いのち……だけは…!…じひを…さいごのじひを…おかけください…!」

小さな子供のように泣きじゃくりながら、謝罪の言葉を必死に言う。

相手が小柄で声もちょっと可愛いせいで、こっちが罪悪感を感じる。

見てられなくなって、コロロが止めるのもなんとなくわかる。

けど、開放してどうするつもりなのだろう。

「ねえ~お嬢ちゃん~死にたくないよね~?」

「はい…うっぐ…しにたくない…」

「今、何でもするって言ったよね~?」

「…いいました…だから…いのちはとらないで…」

「じゃあ…君の身体の無事を~保証してあげるから~、アタイ達のお願いを~聞いてくれる~?」

「ききます…!ききますからころさないで…!おねがい…」

「ん~!ちゃんと本気で言ってるね~♡反省出来て偉いね~♡」

コロロは略奪者の頭を優しく撫でる。

「ひぃ…!」

一挙一動に怯える略奪者を見て、コロロは苦笑いをする。

「あっはは~…大丈夫だよ~。怖がらないで~!じゃあ…まず、君の名前を教えて欲しいな~♡」

「………シフ。シフ…デス。深い意味は…無いデス。」

略奪者は両目を隠しながらコロロに言われた通り、名乗った。

「シフ~可愛い名前だね~♡じゃあ…シフたん~君の仲間が使っていた毒の解毒剤、アタイらに渡してほしいな~?多分、持ってるでしょ~?」

「わ…わかったデス。……あ!………。げ…解毒剤は自分で取り出すから、縄をほどいてください…。」

「ん~ダメ。どこにあるか教えて~アタイが取ってあげるから~。」

「え…それは……どおしてもわたしが自分で取っちゃダメデスか…?」

「うん~」

「………足に巻きつけてある…巻き布の裏側に…あります…。」

「ありがとね~じゃあ失礼するね~」

コロロがシフの足を開かせて、腰布に手を突っ込んだ。

何となく絵面が、妊婦と出産を手伝う助産師みたいだ。もっとも、シフは妊婦ではないし、コロロが取り出そうとしている物は赤ちゃんではなくて包帯に隠された解毒剤だ。

ただ二人の構図がそんな感じだったから、前世で見たドラマのシーンを想起して思い重ねただけだ。

「ひぅ…!」

「…ん~?…あら~なるほどね~♡…慈悲として内緒にしてあげるね~。」

「……。ありがとデス…。」

コロロがシフの太股辺りをゴソゴソと弄りながら包帯を取り出した。

なんか少し汚れていて濡れている気がするが…シフの顔が凄い恥ずかしそうだから、空気を読んで気にしないことにした。

「これは…錠剤かな~?一つは馬だし~そのままでもいいけど…さすがにアンリ君の分は洗った方がいいかな~…。」

「ご…ごめんなさい…」

「気にしなくても大丈夫だよ~。怖がらせちゃったし~まあ仕方ないからね~!」

シフは恥ずかしそうに俯く。…今更だけど、シフが少女であることに気が付いた。


しかも、よく見ると結構可愛い…。


首には赤いマフラーのような長いスカーフを巻いていて、緑色のクロークを羽織っている。毛皮で胸と下半身を巻いて隠していて、手に革の小手を付けている。もう外したけど、足には包帯のような布が巻かれていた。それがまるで、ニーソックスみたいでちょっとおしゃれだった。

ファンタジー小説に登場しそうなザ・女盗賊みたいな服装だ。

そして…容姿は乙女と言っても良い程、美麗で清潔感がある。

緑色の肌は汗で少し艶が出ていて、胸は少しある程度の大きさだ。

けど、太股は少し肉付きが良くて魅惑的だ。

身長はここに居る人たちの中でも一番背が低い。100cm以下なんじゃないかな?

涙で充血し少し腫れた黄色い目。口から覗く歯は人よりも鋭いけど犬等の獣よりも鈍い。

鼻の形は他のゴブリンよも丸くて人に近い。

髪の毛は少し赤みがかった茶髪でポニーテールのようにしている。耳は少し尖がってるみたい。

目がちょっと釣り目で、この顔で笑ってきたらウザいと思える程、メスガキ臭がする顔だ。

何となく、メスガキゴブリンって低俗なワードが頭に浮かんだ。


でも、そのワードがすごくしっくりくる…。


正直言って、コロロよりもこっちの方のルックスがゴブリンロリータっぽい。

そんなどうでもよい事を考えていると、コロロが戻って来た。どうやら、解毒剤を飲ませてきたらしい。

「これ、返してあげる~。後で洗濯してあげるから~今は我慢してね~」

コロロは汚れた巻き布をシフに返却する。さり気なく言った発言が引っかかった。だって、コロロは後で洗濯するから我慢してと言ったけど、私達は準備が整い次第、アルブに向かう。シフはこのまま解放するか、始末するかして別れるはずだ。洗濯する時間なんてないはず…。

「え…?後で洗濯って…あの…わたしは解放されるんじゃなかったデス?」

どうやら、シフも同じ事を思ったらしく、コロロに疑問をぶつけた。

「ん~?シフたんも~一緒に来てもらうよ~?」

コロロは当然のことのように、シフを同行させる趣旨の発言をした。

「な…!なぜデス?解毒剤は渡したはずデスよ?!解放されるはずじゃ…」

「別に~アタイは無事を保証するって言っただけで解放するなんて言ってないよ~?あと、頼み事が一つだけとも言ってないしね~」

コロロはあっさりとした物言いで、シフをあしらった。当然、話を聞いていた私とマリアは困惑する。自分たちを襲った者を仲間にするなんてどういう見解なのだろうか?

「あの…コロロちゃん…この人…私達を襲っていた人ですよ…?どうして…?」

「ん~それはね~…シフたんが可愛いから~♡」

コロロの返答に私達はさらに困惑する。

「シフたんはね~ゴブリンにしては凄い人間的な可愛さがあるし~小動物的な可憐さもあるからね~。だいぶ珍しいわけ~。だからね~シフたんにはアルブで売り子になって欲しいんだ~♡」

「う…売り子デス?」

「うん~♡ヒラヒラした服を着て~お客様の目を~その太股に釘付けにさせて~♡お店に誘い込んでもらうよ~♡」

コロロの説明を聞いてある程度は納得した。確かにシフは可愛い。他のゴブリンと比べると圧倒的に美人だと思う。コロロが行商に利用したいと思うのは分かる。

「ふ…太股デスか…?………っ。わたし…そういう経験したことないデス…。それに…聖職者の街で風俗はダメじゃないデスか?」

シフは照れて目をそらしている。

とんでもないNGなワードを言い、初めてなのをカミングアウトしたシフにコロロが指摘する。

「あ~一応言っておくけど~そー言うのじゃないからね~?ただアタイが用意した可愛い服を着て~呼び込みをするだけだからね~?あと、お客様の話し相手になってくれれば良いだけだよ~。」

シフの勘違いをコロロが訂正すると、シフは恥ずかしそうに顔を赤らめる。

「な…なぜ太股なんて言ったのデス!そんな事言われたら…風俗の方だと思うデス!」

「風俗じゃないけど~シフたん良い体してるでしょ~?ムチムチな太股を活かせる服が丁度あるからさ~それ着て欲しいんだ~♡お客様も来るしアタイの目の保養にもなるしね~♡」

「な…!なんでもするって言ったけど…そんな恥ずかしい事までしたくないデス…!」

「そう~?でも捕虜の君には拒否権なんてないよ~。じゃあ…服は着く前に渡すから~さっさと乗るよ~!」

小悪魔のような笑みを浮かべたコロロは、シフの手を強引に引っ張った。

「いやあああ!!こ…こんなの拉致デス!」

「シフたんには言われたくないかな~?殺されたり~乱暴されるよりかはマシでしょ~?命があるだけ~シフたんは幸せだよ~!」

論破されたシフは観念して、それでも嫌々荷台に乗った。私達もコロロ達の後に続いて乗り込んだ。

荷台は前よりも窮屈だが、乗れない程ではない。

ただ、ちょっと横になったり体を伸ばせない程の狭さだ。

5分ほど馬車を整備して、ようやく出発していった。

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なんだ・・・風俗じゃないのか・・・
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