第38話 強襲。
たった今、完成した出来立てほやほやのお話です!
どうぞ、お楽しみください!
私とコロロは手をつないで荷台から、ゆっくり手を上げながら出た。
「大丈夫だから~!アタイら抵抗しないからね~!だから撃たないでね~?」
コロロが大きな声で襲撃者達に向かって、降伏を宣言した。
「ぎゃあぎゃあぎゃあ!!!ぎゃうごうがう!!『こっちに来い!抵抗しないんだろ!』」
だが、襲撃者は人の言葉を話していない。
伝わっていないかもしれない。私は不安気にコロロの方に顔を向けた。
「大丈夫だよ。ちゃんと伝わってるみたい~………アタイが合図出したら全力で叫んでね。」
「え…?」
「ぎゃいがう?『何話してる?』」
「あ~すぐ行くから~!乱暴しないでね~!」
私とコロロは手をあげながら近づいた。そこでようやく、襲撃者の姿をはっきりと視認できた。
なんと、襲撃者は人間ではなかった。
暗い緑色の肌、とんがっている耳、ぎらつく濁った目、そして子供のような小さな体で毛皮やボロ布を身に纏っている。私はこのような見た目の化け物をファンタジー小説で見たことがあった。
名前は確か…≪ゴブリン≫だっけ?
手に持っている武器は様々だったが、クロスボウを持ったものが多い。
悍ましい下品な鳴き声をあげながら、ニタニタとこっちを見て笑っている。
「ぎゃあぎゃあ!!!ぎゃぎゃぎゃあぎゃぷぎゃー、ごうがうごうぅ!!『そこに行け!シルヴァーニの豚どもに、売り飛ばしてやるからなぁ!』」
「こっちに行けだって~。もう少し優しく言えばいいのにね~」
「ぎぃや?ぷぎゃぷげぎゃぎゃ、りりぃやぎゃんぼげ?『んだとこのアマ?なめた真似するんなら、その白いアマに俺様の大剣しゃぶらせんぞ?』」
「何でもなーい。ミカたん行くよ~」
「は…はい」
何だろう?言葉がわからないはずなのに、なんか凄い下品なことを言われた気がする。
意味のない鳴き声かと思ったけど、もしかしたらちゃんと言語として機能しているのかもしれない。
まあ、今の私にはどうでもよい事だ。
私とコロロは手をあげながらゆっくりと、ハローとアンリいる所に移動した。
「……ミカ、すまない。なんもできなかった。」
「大丈夫…。急だったから…仕方ない…よ…」
私は落ち込むアンリを励ました。よく見るとアンリは青い顔で右腕を抑えている。
しかも、足元に血の付いたボルトが落ちている。間違いなく、アンリは攻撃を受けてしまっている。
「大丈夫?」と声を掛けようと口を開いたその時、ハローが陰鬱なため息を漏らした。
「何が仕方ないじゃ…なんも役に立っておらんじゃないか…。はぁ…」
「ご…ごめんなさい……。…でも、ちょっと言い過ぎ…だと思います…」
「言い過ぎじゃと?大事な商品はぐちゃぐちゃにされ、儂の愛馬が傷つけられ、さらにお前たちが役に立たなかったせいでコロロちゃんが抵抗できなくなってしまったのじゃ。はっきり言って失望じゃ。」
「う……!ごめんなさい…」
「はぁ…せっかく逃げ延びたというのに…儂はあの地に戻されてしまうのか…転落したのに…まだ落ちるのか…どうあがいても儂は転落する運命なのか…?はぁ………運命が呪わしいのじゃ…」
ハローはグチグチと憂鬱に愚痴をこぼしている。
凄いうざったいし、聞いてるだけで心が腐りそうだから、すぐにでも文句の一つを言おうと思った。
けど、私たちが対処できなかったせいでもあるから何も言い返せない。
それに、今感情的になってもしょうがない。私は苛立ちを抑えて地面に座った。
「おじ様~あんまそう言う事言わないで~じゃないと寝返っちゃうよ~?」
そう言ってコロロが見張りの一人に抱き着いてみせた。
すると、私達の左右にいる見張りがいやらしい目を向けて注目する。
「ぎゃあぎゃあ!!『お…おい!何しやがる!』」
「ぎぃ??『お?これは?』」
「ぐぐぐ…ぎぃ『くそ…羨ましいなぁ』」
「げへげへぎゃぁや~!あごあぎぇへへ?『へへ…貧相な体だが、このアマ従順でいいなぁ!俺にも抱かせろよ?』」
「ろりごぶぎゃあ!ぎゃあぎゃあぎゃあやぁ!!!『アタシはロリコンじゃねえ!あと、なんでメスのアタシに抱き着くんだ!?さっさと離れろ!』
コロロと密着した見張りが憤慨するような奇声を上げると、2人の見張りが指さしながら下品な笑い声をあげた。
なんて言っているのかはわからないけど、とんでもなく下品である事は2人の見張りのふざけた顔と下半身を見ればなんとなくわかる。
「…ミカたん!虫!虫がスカートに入って言ったよ~!」
「え…?」
急にコロロが警告してくれた。けど、今はそれどころではないはずだ。
不意に私はさっき言われた事を思い出した。私ははっと気づいて、コロロの顔に目を向ける。
コロロが口パクで「今だよ。」って私に伝えきた。私は慌てながらも心を落ち着かせて、息を吸った。
「あ…!き…きゃぁあああああ!!!」
「ぎぃ?『なんだ?』」
私が叫んだ瞬間、全ての襲撃者が注目した。
見張りも、荷台を調べようとしていた者達も、動きを止めて私の方に注目した。
そして、その隙に荷台からマリアが飛び出した。
「はっ!」
素早く右手に持ったナイフを投擲し、左手に持っていたナイフを右手に持ち替えて、一呼吸の間に投擲した。
「ぎゃ…!!」
「がぁ…?!」
2本のナイフがほぼ同時に2人の見張りの喉に突き刺さった。
そして2人の見張りは、力なく地面に倒れた。
「ぎゃああああああ!!!『いやああああ!!!』」
コロロと密着した襲撃者が悲鳴を上げた。
非道なことを平気でする襲撃者とは言え、目の前で仲間を殺されたのはショックだったのだろう。
「げき!!ぎゃあぎゃあ!!!『敵だ!一体隠れてやがったんだ!!』」
襲撃者達が武器を構え、マリアに向っていく。
骨で出来た槍を持った襲撃者が鋭い突きを放った。が、マリアは下から槍を蹴り上げて防いで見せた。
「げ…ぎぃへ…。ぎぎ…ぎぃ?『お…おお。薔薇柄…か?』」
持っていた槍を蹴り飛ばされた襲撃者は、一瞬だけ固まっていた。
マリアはその一瞬のスキを逃さない。腰にかけられた鞘から剣を素早く引き抜いて、恐ろしい速さで斬り付けた。
「《一文字斬り》です。」
「がっ…!」
技名を言い終えると同時に、斬られた襲撃者は首筋から血を噴水のように噴き出して地面に倒れた。
「ぎゃあぎゃ!!『このクソ人間が!!』」
激昂した襲撃者が怒りに任せて鉈を振り下ろす。
だけど、マリアは自身に向かってくる襲撃者を思いっきり蹴り飛ばした。
蹴り飛ばされた襲撃者は胃の中の物をぶちまけながら地面に激突した。
そしてマリアは白目をむいた襲撃者の顔を容赦なく踏み潰した。
生々しい潰れる音と同時に、足元に血だまりで広がっていく。さすがにこれには襲撃者達も怯んだようで、マリアから距離を取った。この隙にマリアはナイフをスカートの中から取り出して、慣れた手つきで投擲する。
「「ぎゃ…!」」
「ぐご…!」
「がは…!?」
「げ…!」
一瞬のうちに5人の襲撃者が頭や喉、胸にナイフが突き刺さり、小さな悲鳴を最後に沈黙していく。
「ぐぎゃあ!!!『囲い込め!』」
「「「ぎゃぎ!!『了解!』」」」
黒いローブを着た襲撃者が指をさしてジェスチャーをする。
3人の襲撃者がマリアの周りを取り囲み、武器を構える。
骨の剣、銀のフレイル、鉄のダガーと木の盾、マリアは曲剣を構えて攻撃に備える。
「ぐだぐゃあああ!!『砕け散れええええ!!』」
少し大柄な襲撃者が叫びながらフレイルを振り上げた。マリアはスカートに左手を入れて鞭を取り出した。
「やっ!!」
鋭い鞭の一撃が襲撃者の目玉を叩いた。
炸裂する鞭の鋭い音と目が破裂する小さな音が聞こえた次の瞬間。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああ!!!?!!?!!?」
フレイルを手放し、両手で顔を抑えながら絶叫した。
想像を絶する痛みに悶えている襲撃者の首を、マリアは容赦なく踏みつけてとどめを刺した。
「ぎぎ…!『こいつ…!』」
骨で出来た剣を持った襲撃者が、真っ直ぐ突き出しながらマリアに襲い掛かった。
もう一人の襲撃者は盾を前に構えながら突撃する。
「貰いますね!」
マリアは鞭を放し、落ちてたフレイルを持った。そして、襲撃者の突き出しを舞うように回避し、盾を持った襲撃者を盾ごと蹴り、剣を持った襲撃者の胴を曲剣で斬り付ける。
「ぎゃ…!?」
「《辻斬り》です。そして…!」
マリアはフレイルを襲撃者の頭に目掛けて振り下ろした。
襲撃者はお腹から零れ出るモノを必死にかき集めているから、棍棒の一撃に気づいていない。
「《頭蓋砕き》です!」
まるでハンマーで叩かれたクルミのように、頭を粉砕された襲撃者が断末魔もなく倒れる。
そして、連続して盾を持った襲撃者にフレイルと曲剣の連続攻撃を放つ。
ただ、襲撃者もある程度腕があるのだろう、マリアの攻撃を全て防いで見せた。
「ぎぃ!『食らいやがれ!』」
襲撃者が殺意をむき出しにして、ダガーを突き出して反撃をする。
だけど、やはりマリアは避けた。
そして、守りに隙ができたこの瞬間を逃すことなくフレイルを投げつけた。
「ごが…!」
顔面に命中した襲撃者が後ろに仰け反った。マリアが前進して曲剣による剣撃を放ち、襲撃者の頸動脈を切り裂いた…その瞬間。
「……!」
マリアに6本のボルトが素早く飛んできた。剣を振るい3本を撃ち落とし2本避けたが、1本だけ脚に掠った。
「ぐ…!?」
マリアは掠った部分を抑えて、後ろに下がった。
マリアが睨む先には、黒いローブを着た襲撃者とクロスボウで武装した6人の襲撃者が隊列を作っていた。
「ぎゃあぎゃあ!!『装填しろ!』」
「「「「「「ぎゃ!『はっ!』」」」」」
黒ローブの襲撃者の一声で、6人の襲撃者がクロスボウにボルトを装填する。
「く…!さすがに厳しいですね…」
マリアは後退しながら、小さな瓶を飲んでいる。多分、回復薬だろう。
「はぁ…マリア!下がれ!魔の雷よ…今一度アタシの為に具現化し、敵を貫き通す矢となれ…!(サンダースティンガー)!」
青い顔でアンリが魔法を宣言すると、閃光のような雷の針みたいなモノが放たれた。
「ががが!!?」
クロスボウを持った襲撃者の一人に命中した。
すると、連鎖的に近くにいた襲撃者にも感電しだした。
ただ、痺れていたのはほんの一瞬だった。
すぐに、襲撃者は武器を構え直して標的を捕捉しようと視線を戻す。だが、マリアはこの一瞬で一気に距離を詰めて、クロスボウで武装した襲撃者の懐にもぐりこんだ。
「がぼ…!?」
左手に握ったナイフを襲撃者の腹に突き刺す。そして、ぐりぐりと抉り出し、致命傷を与えた。
近くの襲撃者3人はクロスボウを向けてボルトを発射したが、マリアは襲撃者の体を盾にして防いで見せた。そして、盾になった賊の死体を蹴り飛ばして敵にぶつけた。自身のすぐ後ろにいた襲撃者の首を刎ね飛ばして持っていたクロスボウを奪い取り、死体をようやく退けた賊の脳天にボルトを撃った。
「へが…?!」
ボルトが深く刺さった賊は、白目を剥きながら後ろに倒れた。
残った二人の襲撃者はクロスボウをリロードするが、その隙にマリアは曲剣を素早く何度も斬りつけて襲撃者達の肉をそぎ落とした。
「ぎゃあああああああ!!!ががが…がぅあがぁああ…!!『ああああ!!肉が…俺様の体が…!』」
「ぐぐぐ…ぐううううああ…!!『くそったれ…血が止まらねえ…』」
「《快速削ぎ》です。血が流れる苦しみを味わいながら死になさい。」
マリアはクロスボウを持った襲撃者達を撃退してみせた。そして、黒いローブを着た襲撃者に歩み寄った。剣に付いた血をハンカチで拭きとりながら、少し過呼吸気味に息を吐きだしている。
黒いローブの襲撃者は一歩一歩また一歩と後ろに下がっていく。
「ぎゃあ!ぎゃああごうぎゃあ!!『おい!早くこいつを殺せ!数はまだ有利だろ!?』」
残った襲撃者は11人、うち一人はコロロとキャットファイトしている。数では相手の方が有利だ。だが、相手の顔は全員青ざめている。さっきまで下品な笑い声をあげていたのにみんな静かだ。
「が…がうあうぎゃあぎああぎぎゃあぎゃあ!!『ば…馬鹿野郎共!何惚けているんだ!?殺されたいのか!?さっさとこいつをぶっ殺せ!!ただの小娘に殺されるなんて恥ずかしくねえのか!?!』」
「ち…ちーふ、ぎうぎうぎゃあばぐぎゃあ…!『チ…チーフ、そうは言うけど…こいつ強すぎるっす!明らかに戦闘慣れしてるし、とっさの判断力がバケモンっす!』」
「がやぎゃあぎゃあぎゃああ!!『何ビビってるんだよ!俺らは騎士をも打倒した指定盗賊団、毒牙の獣なんだぞ!小娘ごときにやられてどうする!』」
「神への懺悔は終わりましたか?はぁ…わたくしの眼前で不埒を働いた事を後悔して…はぁ…大地に還りなさい。」
マリアは息を乱しながらも、襲撃者達に向けて刃を向けた。
その目はしっかりと襲撃者達を見据えていた。
「ぐぐぐ…ぎゃあぎゃあぎゃああああ!!!『くそ…もうどうにでもなれ!!』」
「ぎゃあぎゃあああ!!!!『突撃いいいいい!!!』」
雄叫びを上げながら襲撃者達が、無謀にもマリアに襲い掛かる。
マリアは舞うように襲撃者達の猛攻をかわしていき、すれ違うたびに曲剣で斬りつける。
一人、一人、また一人と襲撃者が血まみれになって倒れていく。
残るは、黒ローブの襲撃者ただ一人だ。
黒ローブの襲撃者は鞘に収まった剣を取り出して抜刀した。襲撃者の持つ剣は、サーベルだ。突きも斬りつけもできる軍刀で有名だと、前世で聞いたことがある。黒ローブの襲撃者はさらに何かをする。小さな壺のような容器を開けて、怪しい色の粘性の液体を刃にかけた。
「あれは…!…マリア…!気を付けろ…!そいつは強力な毒だ…!少しでも入ったら…ヤバいぜ…」
アンリが忠告をする。顔色が悪いのに無理して声を出したせいで、アンリは喘息を起こした。
「大丈夫ですか…?」
「げほっ…げほっ…!はぁ…はぁ…ちくしょう…やっぱりアタシは弱いな…。少しはできるようになったと思ったんだが…加護無しだと…まともな戦力にもならないか…」
アンリは深呼吸してゆっくり倒れる。
心配して、顔を覗き込んだ。
息は止まってない。顔色は悪いけど、どうやら気絶してしまっただけのようだ。
「ぎゃあぎゃあぎゃああ!!!『死にさらせ!!』」
黒ローブの襲撃者とマリアが激突する。
マリアが横に剣を振るが、襲撃者は寸前のところで回避した。鋭い剣先による刺突を繰り出すが、マリアは身をひるがえして避けた。すると、襲撃者はそのまま剣を薙いで、小さな胴体に剣撃を放った。
「ぐ…!」
だけど、マリアは曲剣で受け止めて体を斬られるのを防いだ。だが…薄い曲剣の刃では、鋭く丈夫な軍刀の剣撃に耐えれない。曲剣はパキンッと耳を劈く音と共に折れてしまった。
距離を取りながらマリアはナイフと綺麗な枝を取り出して、構えを取った。
「はぁ…ふぅ…。………(マジックスティンガー)!………(マジックスティンガー)!」
マリアは光る針のような細い魔法を2発放った。恐ろしい速度で襲撃者に飛んでいく。
「ふん!」
だが、襲撃者はサーベルを二回払って、魔法を叩き落とした。私の見間違いじゃなければ、あの魔法は銃弾並みの速度だったはずだ。それを剣一本で叩き落とすなんて、ただ者ではない。
「魔の雷よ、今一度わたくしの為に具現化し、」
詠唱中に襲撃者は斬りつけてきたが、マリアは素早い足さばきで避けた。
「敵を一掃する雷となれ!(サンダーアーク)!」
詠唱を終えたマリアは、光る枝を襲撃者に向けて魔法の雷撃を放った。
「ぐおっ!?」
滑り込むような動きで、襲撃者は回避した。だが、避けた先にマリアが俊足で駆けて、一気に距離を詰めた。
「はあっ!!」
「ぎゅぐ…!!」
ナイフの斬り付けを襲撃者はサーベルで受け止めた。そのまま鍔迫り合いをする。
やはり投擲用の投げナイフでは分が悪かった。嫌な金属音を上げながら、ナイフの刃が欠けだした。
このままではマリアがナイフごと斬り殺されてしまう。だけど、マリアは空いている左手に別のナイフを持ち、襲撃者の胸に勢い良く突き出した。
「ぎゃあああああああ!!?!!」
「惜しかったですね。剣の技術は良かったですが、わたくしみたいな万能型には勝てませんよ。」
「ぐぐぎゃ…!ぎゃあぎゃあぎゃああ!!!『おのれ…!俺を苔にしやがって…!』」
襲撃者は口から血を吐き出した。そして、青い顔になりながらも、マリアを睨みつけた。
「お…おぼえたぜ…てめえのこと…まつだいまでのろってやるからな…!おまえたちは…ちかいうちに…このおれをころしたことを…こうかいしながら…りふじんにじゅうりんされるだろう…!はは…はははははははははははは…!!!ぎゃはははははははっははははは!!!!」
最後に襲撃者は、人語で恨みと血を吐き出しながら息絶えた。
「末代まで呪うですか…。わたくしに後世なんてものはありませんよ。だって、わたくし………ですから。…寿命なんて俗物的な物は来ないですから。」
不吉なことを言われたマリアだが、眉一つ動かすことなく言い返した。
マリアはハンカチで顔や体を拭く。
血まみれのメイドの周りには、大量の賊の死体が倒れていた。
のどかな風が吹くが、草の匂いではなく死臭を運んできた。
ほぼたった一人で襲撃者26名を撃退して見せたのだ。
マリアの強さを改めて認識して、ハロー達の方に目を向けた。
ハローは、信じられない物でも見たようなちょっとバカっぽい顔をして固まっていた。
アンリは気絶していて顔色がすごく悪かった。そして…コロロはと言うと…。
「ぎゃあぎゃあ!!『こいつ!離れろよ!』」
「ん~そうそう!頑張って抵抗して~!ん~可愛い~♡」
未だに見張りの襲撃者と揉み合いのキャットファイトを続けていた。
多分、マリアが乱闘をしている間ずっと、コロロはこの見張りを抑えていたのだろう。
襲撃者とコロロの声を聞きながら、私は脱力して地面に寝転がった。




