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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第二章 蒼白なる聖女
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第35話 ひとりでお留守番っ!

 書斎の中で、本を手に取りパラパラとページを捲った。

私が読んでいるのは、呪いの治療法について書かれている本だ。この本によると劣傷の呪いを解除するには、【碧の聖水】のような強力な聖水を呪いに侵された所にかけるしかないらしい。

「……やっぱり、みんなに任せるしかないのかな。」

私は椅子に腰かけながら独り言をつぶやいた。

ズキン…と刺されるような痛みが、右肩を襲う。

慌てて見てみると止血用に巻いた包帯が、赤黒く変色していてボロボロに朽ちていた。

どうやらこの包帯はもうダメになったみたいだ。私は穢れた包帯を外し、新しい清潔な包帯を巻いた。

「一応この包帯…すごく良いものなんだけどね。」

私は朽ちた包帯を見つめながら呟いた。この包帯はマリアが用意してくれた物で、≪生命と救済の神≫の祝福が施されている物だ。確か、傷ついた所に巻くとその傷が癒えてHPを回復させてくれるらしい。

ただ、今の私は呪われているせいで、傷が塞がらない。

こういう風に包帯とかで止血を試みても、包帯が朽ち果てて使い物にならなくなる。

少しの間だけ止血をして、出血のよって減少したHPを若干回復させるだけだ。


それでも…何もしないよりはマシ!


私はそう信じながら本を閉じた。別の本を手に取り閲覧した。

この本は古今東西の剣術が書かれた物で、ご主人様から誕生日の時に貰った物だ。

両刃剣を使った戦士流の剣術、曲剣を使う放浪流の剣術、大剣を使う騎士流の剣術、刺突剣を使った貴族流の剣術、殺し屋が使う暗殺流の短剣術、シルヴァーニの剣士達が使う玄人流の刀術、沢山の剣術がこれ一冊に書かれている。

この中で私が得意な流派は、戦士流の剣術と貴族流の剣術の一部だ。後は刀術が少し適性があるってご主人様から褒められた事があった。

そう言えば、この前戦ったペコラは、貴族流の…それもかなり古い剣術を使っていた。

もしかしてだけど、ペコラは上位階級の騎士か貴族生まれの剣豪なのかもしれない。


だとしたら、そんな偉い人がどうしてこんな危険な森にいたのだろう?


そういえば、ペコラは確か、【穢れの書物】なるものを探していた。

【穢れの書物】が何なのかはわからないけど、あんなに必死に探してたって事は、きっとすごいモノなのだろう。


怪我が治って、試練を退けたら…探してみようかな?


もちろん単純な好奇心だけじゃなく、調査が目的だ。もしかしたら、【穢れの書物】がすごい強い武器かもしれない。もしそうなら、次の試練に対抗できる戦力になる。

私はなんとなく窓の外を見た。

外はすっかり日が落ちていて、館の中もろうそくの光が無いと真っ暗だ。

私は椅子から立ち上がり、歩いて書斎を後にした。

………。

………………。

一人台所で、料理をしながら思いふけた。


一人で過ごすのは何年ぶりなのだろう?


フライパンでソーセージとレッドリーフをこんがりと焼きあげて、お皿に盛りつけた。朝に焼いたパンとマリアが淹れたサファイアハーブティーをトレーにのせて、机まで運んだ。

机に料理を置いて椅子にゆっくりと腰を下ろした私は、手を組んでお祈りをした。

このお祈りは、これから頂く料理への感謝と食材となったモノへの謝罪だ。

食べる前にお祈りをすることで、神様から褒められ食材にされたモノから恨まれなくなる。

お祈りを終えた私は、食事を始めた。

カリカリになったソーセージにフォークを突き立てて、思いっきり嚙り付いた。

香ばしい匂いと肉汁が口の中で広がった。ちょっと下品だけどよだれが出ちゃいそうなほど、美味しい。獣人ケモノビトはお肉が大好きな傾向があるって、昔、ご主人様が私に教えてくれた。ご主人様は頭も良くて、朝の行水の時間と夜寝る前にご主人様から色々な事を教えてもらっていた。

昔を思い出しながら、レッドリーフをむしゃむしゃと食べた。

このレッドリーフは食べると体の中の血が増える。

だからよく、傭兵さんがこの葉っぱを持ち歩いているらしい。

ちなみにだけどこの葉っぱ、かなり苦い。舌が少しピリッとする。


食べられない程ではないけど…傭兵さんみたいにそのままでは食べられないかな…。


私は苦い顔でレッドリーフを飲み込んで、口直しでパンを大口で食べた。

モグモグってよく嚙んでから飲み込み、サファイアハーブティーを飲んだ。

「んみゅぅ~!やっぱりマリアの入れるお茶はすごくおいしい!」

美味しさのあまり変な声を出してしまったけど、今は誰もいないからちっとも恥ずかしくない。


でもやっぱり少し寂しいかな。


私は残りの料理をすべて食べて、お皿を台所に持って行った。

軽く水洗いをして、布でしっかり拭いてお皿を棚にしまった。

いつの間にかボロボロに朽ちていた包帯を外して、新しい清潔な包帯に換えた。

睡眠用のゆったりとした服に着替えて、おトイレで用を足してから、私は自室に戻った。

持ち歩いていたロウソクの火を消して、私は自分のベットに入った。

「ふあぁ…っ。……みんなはどうしているのかな…?ちゃんと食事はとれてるかな…?悪い人からひどい目に遭わされてないよね…?」

私は真っ暗な窓の外を見ながら、みんなのことを考えた。

みんな強いから、大丈夫だと思うけど…やっぱり少し心配になる。

特にマリアが心配だ。

マリアは確かに強いけど…痛みにとても弱い。一撃でも受ければ隙だらけになってしまう。


それに…マリアは……。


私はあくびをして、体の力を抜いた。目を閉じてゆっくり深呼吸をした。

「みんな…無事だといいな…。」

みんなの無事を祈って独り言を呟いてから、私はゆっくりと眠りについた。

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