第31話 白き乙女のせせらぎ…。
今日は御狐の誕生日。
誕生日という事で、特別なお話を書きました。
馬車の荷台に乗ってから、3時間程、経過した。私はボーっと揺られながら景色を見る。のどかな草原が限りなく続いており、ほとんど変わらない。たまに他の人の馬車とすれ違ったり、草に隠れた白骨死体を見つけたりした。こう言うわずかな変化が来ると、楽しくて少しだけドキドキした。こんな気持ちは、小学校の修学旅行以来だ。
中学校の時にも修学旅行はあったけど…あまり楽しくなかった。
中学校の時はグループ制で、クラスメイト達は仲の良い友達同士で集まったりしていた。そのせいで私は一人ぼっちになって、悲しい気持ちと情けなさでいっぱいになった。
それで拗ねちゃって…素直に楽しめなかったな…。
あの時、拗ねた私を何とか楽しませようと、担任の先生が気を使ってくれたっけ?当時の私はそんな先生の努力と厚意に気づけなかったな。今思えば、私はあの時から拗れてたんだ。そう考えると、羞恥心で体がむず痒い。私は気を間際らせるために、自身のステータスと装備を確認する。
【ミカ Lv9】
HP 5170
MP 70
器用値 10
速度 3
攻撃力 1
魔法攻撃力 50
魔法回復力 0
【防御力 55】
【ミカ Lv9】
頭 【見習いメイドのホワイトブリム】
上着 【青色のワンピース】【フリル付きエプロン】【隠者のローブ】
下着 【リボン付きブラジャー】【リボン付きショーツ】
足 【真っ白なニーソックス】【小さな淑女の靴】
装飾品 【MP増加の腕輪】
武器 無し
【見習いメイドのホワイトブリム】(防御力 5)(器用値 5)
【青色のワンピース】(防御力 15)
【フリル付きエプロン】(防御力 4)
【隠者のローブ】(防御力 15)(魔法攻撃力 50)(《認識阻害》…。)
【リボン付きブラジャー】(防御力 2)(HP 5)
【リボン付きショーツ】(防御力 2)(HP 5)
【真っ白なニーソックス】(防御力 2)
【小さな淑女の靴】(防御力 5)(MP 10)
【MP増加の腕輪】(防御力 5)(MP 50)
思っていたよりも装備品の性能が高くて、ちょっと驚いた。防御力が囚人服の時と比べ物にならないくらい上昇している。それに…今気づいた事だけど、この服…肌触りが良くてとっても着心地が良い。こんな素敵な服を貸してくれたマリアには感謝しても感謝しきれない。
…今度、マリアに何かお返ししよう…!
私はマリアへのお返しを考えながら、ステータスウインドウを閉じた。そして、再び外の景色を眺めて時間をつぶした。
………。
………………。
さらに2時間経過した。私は俯きながらボーっとした。特に一点を見つめるわけでもなく、ただただ足元を見て沈黙する。
ソワソワ ソワソワ
ほんの少しだけ体を揺らしながら、私は虚空を見つめる。外の景色は前世と違ってのどかで良いけど、代わり映えが無さ過ぎて…正直、だいぶ飽てしまった。なんとなく、コロロの方を見てみた。コロロは何かの本を開いて、静かに読んでいる。本の表紙には、三つに分かれた水晶のようなシンボルが描かれている。
「~?興味の感情~?…ミカたん~もしかしてこれ気になる~?」
コロロは本を読む手を止めて、私に聞いてきた。
「あ…いえ…その……暇で…なんと…なく……見つめて…いまし…た…」
「ふ~ん。暇なんだね~。なら~これあげるね~!」
そう言ってコロロは、自身のポンチョの中に手を入れて、一冊の本を取り出した。その本の表紙には、真っ赤な三角帽子を被った赤髮の少女が祈るようなポーズをした絵が描かれている。近くにタイトルも書かれている。どうやらタイトルは、【灰の魔女・カーリー】と言うらしい。
「これは…本です…か?…もらって…良いの…です……か…?」
「うん~!いいよ~!アタイからの~贈り物だよ~♡」
コロロは「はい!」と元気の良い声で渡してくれた。私は精一杯のお礼を言って、本を開いた。びっしりと文字が書かれており、一瞬眠くなった。
「な…なるほど…。これは……時間をつぶせそうです…」
私は張り付くように本を読み、時間をつぶした。
………。
………………。
さらに1時間と47分ほど経過した。私は文字を読みながら頭に映像をイメージした。今読んでいるところは、カーリーという名の少女が妹のマギアに、永黙の呪いをかけている場面だ。ちょっと口うるさいという理由で、実の妹に呪いをかけるのは衝撃を受けた。でも、カーリーも本気ではないようで、1日たった後、呪いを解除したようだ。
モジ…モジ…
私は吸い込まれるようにページをめくって、文字を読んで映像を浮かべた。今度は呪いの実験をするカーリーが寝不足によって、呪術式を間違えて作ってしまい悪霊に憑りつかれて暴走してしまうシーンだ。最初は冗談だと思って見ていたマギアが、だんだん焦っていくところはとても面白くて新鮮だ。
モジ…モジ… ソワ ソワ
気になるところで、場面が変わり…マギアの目線の話になった。マギアは、近くの村に住むとある少年に助けを求めに行った。その少年は不思議な力を持っているようで、触れた者の怪我を直し、病気から救い出す力を持っているようだ。その少年はライフと言うらしく。見た目が美少女だと言う。
ソワソワ モジモジ
ライフの名前で、私はある神様を思い出した。確かその神様もライフって名前だったはず。…もしかして、この話に出て来る少年って…
「あ~ミカたん~。さっきから~何かを~必死に我慢しているようだけど~…どしたの~?」
「………!?へぇ?…な……何の事です…?」
私は脚と脚の間を必死に押さえながら、コロロを見た。コロロは少し困惑したような顔をして、私の体を隅々まで見つめた。数秒経って、コロロは何かに気付いたような仕草をした。そして、私に少し近づいて耳元でささやいた。
「……もしかして~……おしっこ我慢している~?」
「ーっ!!!……な…何を言って…!」
私は反論しようとして、つい身を乗り出してしまった。…次の瞬間!
「ーっ!!?!………!!…んっ………あ…!」
波が…波が私を襲い、城門を攻撃した。私は反射的に両手で押さえた。
「あ~……大丈夫~?…もしかして~漏れちゃっ…」
「大丈夫!!大丈夫です…!……ちょっと危なかった…。…あ、なんでもないです!」
私はそう強がりながら、こっそりスカートの中に手を入れて確認をした。…濡れていない。大丈夫だ!
「う~ん…まいったな~…馬車はしばらくは止まらないし~…かといって~このままだと~ミカたんが可哀想だし~…う~ん。」
コロロは足をパタパタさせながら、目を閉じて考え込む。その間に私は両手で押さえながら、ゆっくり立ち上がった。何とか体勢を変えて、少しでも楽になろうとした。しかし、運命とは残酷なものだった。
ガゴンッ
馬車が大きく揺れて、体勢を崩してしまい、勢い良くしりもちをついてしまった。鈍い衝撃が私の下半身を襲った。不意だったために私はビクッと驚いてしまい手を緩めてしまった。
ジワァ…
城門が一瞬だけ開いてしまい、波が少しだけ流れてしまった。私は青ざめた顔で、恐る恐る触れて確認した。…指先が布に触れた。……湿っていた。私は泣きそうになりながら必死に押さえ付けた。
「ま…まだ…!まだ大丈夫…!せ…せーふ…!」
「だ…大丈夫~…?もう今にも死にそうですって~顔だけど…?」
「だいじょお…。ーっ!?!ひっぅ…!あ…ああ……ごめんなさい…ごめんなさい…もうがまんできない…でちゃう…でちゃうよぉ…!」
恥ずかしさのあまり、私はついに泣き出してしまった。あと数秒で私は、みんなの前でお漏らししてしまうのだ。そう考えると羞恥心と不安が一気に膨れ上がってきた。頭が真っ白になろうとした…その時。コロロが大きな声でマリアに向かって言った。
「マリア~!ミカたん持ち上げて~!」
「わかりました!」
マリアが急に私を持ち上げて、コロロが壺のようなものを置いた。そして…コロロはいきなり私のスカートの中に手を突っ込み、何とショーツを思いっきり下げた。
「マリア~!ミカたんをここに下ろして~!」
「…了解しました!」
そして、マリアが私を素早く壺の上に下ろして…コロロが私の体を押さえ付けた。その衝撃で私の城門は完全に開いてしまい…波を大量に放出した。
………。
………………。
しばしの間、せせらぎの音を響かせながら、私は脱力した。堪えていたものが一気に解放されて、体がどんどんと軽くなっていくように錯覚した。きっと、今なら全てを許せるだろう。それほど、今のすっごく気持ちいぃ。
はわぁ…みんなみてて、はずかしいけど…きもちいい…
全てを出し切って、大きく息を吐きだした。せせらぎの音が止まったのを確認したコロロは、ショーツを優しく穿かせてくれた。そして、マリアが無言で私を持ち上げて壺から下ろしてくれた。そしてすぐさまコロロが苦笑いをしながら、壺に蓋をして上に座った。
コロロはマリアを見ながら、親指を立てた。マリアも無言で、親指を立てて返した。
二人の間に、絆のようなものが芽生えた気がする。
…ちなみに、日が落ちるまでの間…私はずっと本を読み続けた。ショーツから、ほのかに香るにおいを必死に無視し続けながら…静かに読み続けた。
誕生日プレゼントとして、皆さんからの5つ星が欲しいかも。