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嫌われ者の自分が、HP5000の美少女に転生した。  作者: 御狐
第二章 蒼白なる聖女
33/77

第29話 ゴブリン・ロリータ。

投稿にだいぶ空きがあったにもかかわらず未だにブックマークを付けてくれている方に感謝です。

…文字にすると薄っぺらく見えるかもですが、御狐は皆さんに超感謝しています。

投稿が遅れた理由は簡単です。

…他の作品を作っていたからです。

ちなみにその作品はミカの前世の世界が舞台。…という事だけをここに書いておきます。

 ほんの少しだけ揺れている馬車の荷台の中、私とマリアは静かに座っている。荷台は、大小さまざまな木箱と樽によって面積が縮められ、4人もいられるスペースは無かった。そのためアンリは、ハローって言う行商人の隣に座っている。

アンリとハローの話し声が前から聞こえてくるが、あまり興味のそそられる内容ではない。

私が気になっているのは、私の真正面の所に座っているコロロと言う少女だ。

赤や緑そして黄色などの明るい色を基調としたメキシコ風な刺繡がされた厚手のポンチョのような外套を羽織っていて、ポンチョから若干出ている足と腕は褐色でとても小さく見える。多分だけど、身長は私よりも小さいと思う。ちなみに私の身長は123cm程ある。それよりも小さいとしたら…110cmくらい?


……それより…この人…何で顔が見えないの…だろう…?


私はこっそりコロロの顔を凝視した。…フードを深く被っていて見えない。どういう原理か、顔の部分だけ影がかかっているみたい。まるで私の着ているローブにかかっている加護の効果みたいだ。

「ん~?さっきから~熱い視線を感じるけ~ど~…どうしたのかな~?」

「え…!?…あ……なんでも…ない…です……」

私はあわてて視線をずらしてごまかした。するとコロロは、足をばたつかせてクスクスと笑う仕草をして見せた。

「いや~別に良いよ~!アタイは気にしないからね~!…なんだったら~触ってみてもいいよ~!」

「……え!?さ…いいの……??」

「うん。いいよ~!さ~ばっちこい~!」

コロロは、さあ来い!と言わんばかりに手を広げて見せた。座ったまま手を広げるその姿と仕草はとても可愛らしく、年端もいかない幼女って感じだ。

「……じゃ…あ………少しだけ………」

あまりの可愛いさについ乗ってしまい、コロロに近づいてみた。

「がばぁ~ってきて良いからね~がばぁ~って~!」

「が…がばー……!」

私は思い切ってコロロを抱きしめた。コロロの体は小さいが、意外にもしっかりしていた。チラッとポンチョの中の服が少し見えた。…茶色い布製?かな。そして腰のあたりに黒い石で作られたような手斧がぶら下がっている?


…変わっているなあ………そして…やっぱり顔がわからない…。


私はコロロの顔を下から覗き込んでみた。近くで見ても、顔は影で隠れている。


ほんとに…顔はあるのかな…?


一瞬、私はコロロに顔がないのではないかと疑って、顔に当たる部分に触れてみた。私の指先にぷにぷにとした感触のモノが当たった。…次の瞬間。

「ん…はむっ!」

「……!?………?」

突然、私の指が闇に吸い込まれた。そして、ジトッ…としたナニカが私の指を包み、ヌメヌメしたモノが指に絡みついていった。

「ひゃ…!?」

私は驚きのあまり、後ろに下がってしりもちをついてしまった。自身の指を確認すると、透明な液体によって濡れていた。少してかっている指をまじまじと見ていると、コロロが足をバタバタと動かしながらゲラゲラと笑いだした。

「あっはははははぁ~!!ごめんね~なんとなくしゃぶっちゃった~!柔らかくて~とっても美味しかったよ~♡」

「え…あ……うん…あはは…」

私は、はにかみながら濡れた指をエプロンで拭った。

「それにしても~君変わっているよね~?一応~アタイ達って~初対面でしょ~?それなのに抱き合っているんだから~おかしいな~ってね!」

「そ…そう言えば……そう…ですね…。」

「君~詐欺とか~そういうのに、ころって騙されそう~!あっはははぁ~!」

「え…?!…あ……あははは…!…気を付け…ます…」

図星を着かれてしまい、私は軽く動揺してしまった。その様子を見たコロロは、また足をばたつかせてみせた。

「君なかなか面白いね~!優しさとはちょっと違う~甘さ?かな!その可愛らしさと~愛おしさに免じて~特別にアタイの顔を見せてあげるね~!」

「え…?!…か…そんな簡単に…見せても良い…もの…なの……?です。」

「うん!アタイは!気にしない~!…ただし条件があるよ~!」

コロロは自身のフードの縁を持って、私の目を見る。お互いに顔が見えていないはずなのに、どうしてか目と目がしっかりと合っている気がする。

「先に君の顔を見せて欲しいな~。そうしたら~好きなだけ見せて~あ・げ・る~♡」

「………私の…顔…。………。」

私は悩んだ。忘れているわけではないけど、私は逃亡者だ。そして多分、手配書とかに載せられている。だから、他人に顔を安易に見せるべきではない。けど…目の前の幼女の顔も気になっているのも事実。


コロロちゃんの顔か…自分の安全か…。


別に悩むような事では無い事は、自分でもよくわかっている。けど、私はつい悩んでしまうのだ。前世からある悪い癖で、どちらか選ばないといけない時、無駄に考え込んでしまう。今悩んでいる事みたいに、普通なら即答できることですら、悩んでしまう。

そうやって無言で悩み続けていると、コロロが何の前触れもなく私のフードに手をかけた。


パサァッ


「わぁ~!すごく白いね!まるで~…リリィ様みたい~!」

「……へ?………え!?」

私は一瞬、何が起こったのか理解できなかった。それもそうだ。だってコロロが、私のフードを前触れなく外したからだ。私の隠していた顔が…コロロにしっかり見られてしまった。動揺して固まった口を何とか動かして、言葉を紡いだ。

「コ…コロロ…ちゃん…?な…なんで…?」

「いや~ごめんね~!気になりすぎちゃって~待てなかった!あっはははぁ~!」

コロロはそう言って、悪びれることなく笑い飛ばした。

「え…えぇ……?」

「あっははぁ~!困っている顔も~可愛くて良いね~!じゃ~お返しとして~アタイの隠している姿も~見せてあげる~!」

そう言いながらコロロは、おもむろにポンチョのボタンをはずした。そして…


パサァ…


コロロは、なんとポンチョを脱いで全身を見せた。アピールのつもりなのか、コロロはくるくると回って全身を見せる。

金色の髪をボブにしていて、白い羽が付いたヘッドバンドをおでこに着けている。目は黄色くてクリッとしている。口元に犬歯が一本覗いている。身体は健康的で張りのある褐色肌で肉付きが良くみえる。

そして、この印象的な…服装だ。茶色い布で胸と下半身だけを隠しているのだが、なんと前に掛かっているだけだ。横から見たらほぼ裸に見えて、後ろに至っては完全にアウトだ。しかも、布が軽いのか少しの風でもヒラヒラと動くため、もし突風のような強い風が吹けば多分…というか確実にすべて見えちゃう。危うすぎるコロロの格好に、私は両手で顔を隠して、熟れたリンゴのように赤面した。

「な…なななんて…格好をして…い…いるの……ですか…!!か…か隠してくだ…さい……!」

「まあまあ~遠慮せずに~♡ほら~見てみて~♡あっはははははぁ~♡」

「あ……あんまり…動かないで……その…見え…ちゃ…いま……す…」

絞り出すような私の声を聞いたコロロは、手を叩きながら大笑いした。

「な~るほど~!そういうことか~!それなら全然大丈夫だよ~!ほら~♡」

ニヤニヤとしながらコロロは、なんと布を捲り上げて私に見せたのだ。不意を突かれた私は…見てしまった。コロロの大事なところを…

「はわ…!?……!…………?…あれ?」

「ほらね~大丈夫だって言ったでしょ~!」

私は自分の目を疑った。目を何回も擦って、自分を頬をつねった。


なぜなら…布で隠されていたところが…真っ黒だから……!


どんなに近くで見ても、大事なところは黒いモヤで隠されている。まるで、規制のために一部分を黒く塗りつぶして隠したマンガのような感じだ。

「こ…これ…は…?」

「これはね~《アールジュウハチ》て言う加護の効果だよ~!この加護は~成人していない子から~一切見えなくなる~とっても健全な加護なんだよ~♡」

アールジュウハチ…奇妙な名前で、何故か聞き覚えがある…気がする。成人していない者には見えないって…いくらゲームみたいな異世界でも、これはさすがに都合がよすぎるのでは…?


まあ…フードを被っただけで顔が分からなくなる加護もあるし…おかしくは…ないのかな?


そう自分に言い聞かせて納得した私は、もう一度コロロを見た。

さっきは動揺してよく見ていなかった要素がある。首にウシかヤギの角を削って作ったようなネックレスが掛かっている。そして腰にはさっきポンチョの隙間からチラっと見えた黒曜石の石斧がぶら下がっている。なんとなく私は、コロロの姿から大自然の中で生きる民族を連想した。

「ん~…。アタイって~あんまり驚いたりしないんだけど~ちょっと今珍しく驚いているよ~!」

「……?」

「君達~アタイの姿見ても~嫌悪の感情を一つも抱いてないでしょ~?それがちょっと意外~!」

嫌悪の感情を抱いていない?まるで、嫌悪されるのが前提みたいな言い方だ。

「嫌悪…される…てどういう……こと…?」

「え~アタイの姿を見ても~わからないの~?アタイは~≪ゴブリン・ロリータ≫だよ~?」

「ゴブリン……ロリー…タ?」

初めて聞く単語に、私は首を傾げた。その様子を見たのか、ずっと無言で窓の外を見ていたマリアが説明をしてくれた。

「人の形をした魔物、≪ゴブリン≫の稀少種です。通常のゴブリンと違って、肌の色が人間に近く、流暢に人語を話すことができます。精人の娘に近い容姿をしており、奇妙な魔法を使うことができるらしいです。…そのため、一部の精人と人間、そして………妖精から忌み嫌われています。」

「そうだよ~早口の解説をありがとね~!…今言われたように~アタイは~モンスターなんだ~。しかもね~なぜか知らないけど~アタイ達って~幼女好きの変態の代名詞に使われているんだ~。」

「な…なるほ…ど……」

なかなかデリケートな内容に、私はうまく言葉を返せなかった。差別問題……どうやら、この世界にもあるようだ。私の前世にも差別問題があった。


確か…都市の住民を地方の人が…ネズミって馬鹿にする内容だった気がする……。


前世での差別の根本的な理由は、成功した者への嫉妬と生きるのに必死な者への皮肉だった。この世界の差別の原因は知らないけど…なんとなくわかる……気がする。


多分、自分と似ているのに全然違うから…かな…?


人は同じものに同調して…違うものを拒絶する。そんな言葉を前世の時、誰かから聞いた気がする。いや…この言葉は本で見たのかな…?正直なところ、よく覚えていない。

はっきり言って、この手の話は複雑で難しい。

「…私は………その……難しくてなんて…答えたら…いいか……わ…わからないです…」

「そっかぁ~あっはははははぁ~!まあ~ちょっと難しいね~。アタイは~君達が嫌悪していないって~だけで~安心だよ~!」

コロロは私の手を握って、私に顔を近づけた。私の視界はコロロの可愛い顔で遮られてしまった。

「はぅ……ち…近い……」

「ミカって言うんだよね~?アタイ~君のことが~なんとなく気に入ったから~親しみを込めて~ミカたんって呼んでいいかな~♡」

「え…?ミ…ミカたん…??たん…て、どういう意味…?」

「え~と。たんは~アタイ達、ゴブリンロリータが~可愛い女の子を~親しみを込めて呼ぶときに~名前の後ろに付ける言葉だよ~♡」

「な…なるほど…」

たんはこの世界の言葉だと言う。…なのに何でだろう?前世でも聞いたことがある…気がする。ただ、その言葉は200~300年前に消失した気が…

「もしかして~たん付けは嫌いな口~?それなら~ミカ様~…とか~お嬢様~…とかそういう感じがいい~?」

「え…?!……あ…いや…嫌い…では…ないです…コロロちゃんの………好きな…呼び方で…お願い…します。」

実際、ミカたんって呼ばれても悪い気がしない。なぜか、とっても気持ちいい。お姫様にでもなった気分だ。………お姫様で、あのサディが連想されて少し背筋がぞっとした。

「~?恐怖の感情~?やっぱりたん付けはいや~?」

「え…!?いえ…そんなことないです……!たん付け…で……お願いします…!」

「わかった~!じゃあ~ミカたん~よろしくね~!」

コロロは嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねた。服がひらひらとなびいているが、加護によって隠されている。それでも、元男子の私には刺激が強く、頭が真っ白になってしまった。

赤くなった私の顔を見て、コロロはケラケラと笑い転げた。

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